大原雄介の「最新ネットワークキーワード」【第3回】
「SDN」編──“ネットワーク管理に向いていない人類”を助けるはずだった(1/2 ページ)
この連載は「いきなりIT部門に転属したら用語が全然分からん!」という担当者を救済するネットワーク入門企画だ。今回は、この一連の連載で主役となる「SDN」の登場経緯から派生技術までを解説する。
やっと注目のキーワード「SDN」(Software Defined Network)にたどりついた。SDNの解説は、TechTargetジャパンでも土居昭夫氏の「1回で分かる:『SDN』の基本、主要ベンダーの動向をマップで押さえよう」を既に掲載しているが、ここではさらに基本的なところから説明を始めよう。
スイッチ類が、OpenFlowの導入でソフトウェアから自由に構成を変更できるようになったことは、この連載の第2回(『OpenFlow』編──その実力以上に期待されてしまった救世主)で紹介した。
ただし、OpenFlowは「自由に構成を変える」ためのツールであり、「最適な構成にしてくれる」ためのツールではない。ここでいう「最適」というのは、ユーザー企業の環境や用途、目的で異なってくる。そのため、OpenFlowを導入してもなお、人手による「最適なネットワークの設計」は必要なままだった。
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連載:大原雄介の「最新ネットワークキーワード」
SDNについて知りたいならば
もちろん、OpenFlowの実装によって、ネットワーク設定作業は楽になるが、データセンターや企業拠点におけるネットワークでは、以下のような問題に対応しなければならない。
- サーバの仮想化が進んだ結果として、サーバ自体は極めて短期間に構成を変更したり仮想サーバの数を増減させたりできるが、ネットワーク変更が追い付かない
- 複数の拠点がある場合、拠点ごとにシステムを設置して両者を同期する(ディザスタリカバリの観点からすれば、この行為自体は好ましい)か、中央にシステムを置いてVPNで周辺拠点から接続するかといった方法がこれまでは主流だったが、前者は複数の拠点を統合して管理するのが難しく、後者は大規模拠点で効率が悪くなる
これらの問題の根本的な原因は、「人間はネットワーク管理に向いていない」ことだ。これはOpenFlowを開発したマーティン・カサド氏の「Humans suck at state management」(人間は状態管理が苦手:状態とはネットワークのこと)という言葉によく表れている。カサド氏は、ネットワークの状態管理を行うためにOpenFlowを開発したが、ネットワークにはスイッチだけでなくもっと多くの要素を含んでいる。これを包括して管理できる仕組みがあるのがいい、ということがOpenFlowによってあらためて可視化できたというべきだろうか。
こうした考えから登場したのがSDN(Software Defined Network)だ。SDNはOpenFlowより大きな範囲で、ネットワークシステム全体をソフトウェアで制御する。SDNを構成する機器は以下の2層構造になっている。
- コントロールプレーン:個々の機器がどのようにデータを処理するのかを定めるレイヤ
- データプレーン:個々の機器が実際にデータを処理するレイヤ
コントロールプレーンで制御ルールを定めると、定めたルールに沿って機器がネットワークパケットを処理する仕組みになっている。ルールの決定とパケット処理を明確に分離し、両者をつなぐインタフェースを定義したのがSDNの大きな特徴だ。
データセンター内のネットワーク構成を例に、SDNの導入前と導入後でネットワーク構成がどのように変わるのかを確認してみよう。
SDN導入前のネットワーク構成では、ネットワークの最上位階層にあるルーター(コアルーター)がインターネットとの境に入り、その先にはファイアウォールやロードバランサなどそれぞれ目的が異なる幾つかのルーターが入る。最終的に、ここから個々のアプリケーションサーバに接続する。ちなみに最終的に個々のサーバがインターネットに直接接続する他、アクセスルーター経由でサーバそのものがインターネットのティア1プロバイダー(最上位プロバイダー)に直接つながるサーバ、もしくはその直属サーバになっていることも少なくない。
では、これがSDNでどう変わるか。物理的な配線という意味では、大差ない(SDN コントローラーを追加するので複雑になる)。だが、もともとの経路情報はネットワークの管理と制御を担うSDNコントローラーがまとめて取得し、これを基にコントロールプレーンの制御情報という形で個々のSDNルーターに引き渡す。SDNドメインに所属するSDNルーターは、個々のパケットに含む経路情報を参照してパケットを処理するのではなく、SDNコントローラーからコントロールプレーンを経由した制御情報に従いパケットを処理する。このように、個々のルーターから「経路情報の解釈」作業を解放したのが、SDNで最大の変更点だ。SDN コントローラーから渡すコントロールプレーンの制御にOpenFlowを利用している。
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