「AWS Summit Tokyo 2016」レポート
内製によるAWS全面移行が証明した「レコチョクは技術の会社」(2/3 ページ)
ハイブリッドクラウドは回り道 ~移行で掲げた3つの目標
AWSへの全面移行に当たり、松嶋氏は以下の目標を掲げたという。
- 全システムのAWS利用料がX円(非公表)以内に収まっている状態
- 各システム担当者(社員)がコスト、耐障害性、セキュリティ、運用における最適なAWSアーキテクト設計ができる
- オンプレミスへの投資を一切せず、全てのシステムがAWSで動いている
1つ目のAWS利用料に関しては、必要なシステムをオンプレミスで構築した場合のマシンスペックを全て洗い出し、それをAWSのインスタンスタイプに当てはめながらマッピングし、その算出コストの30%以内に収めるという目標を立てた。残りの70%に関してはリザーブドインスタンス(RI)の適用やリソース最適化によって削減が可能と判断したからだ。ここでのポイントとして松嶋氏は「システム単位でアカウントを作成する。さらに移行したものから順に目標との乖離(かいり)をチェックし改良を図る」(松嶋氏)という点に注意したと振り返る。
2つ目はレコチョク社員のシステム担当者が主体となって作業を進めることにこだわった点だ。「インフラの全面移行はトップダウンでやらなければならないプロジェクトであり、ドラスチックに進める必要がある。AWS共通のインフラは全て社内のインフラチームが設計し、開発チームにはネットワークインフラの設計・構築やAWSの運用を移管した」と松嶋氏は語っており、インフラチームと開発チームのそれぞれに移管する作業を分けたとしている。「レコチョクは技術の会社ということを示す」(松嶋氏)ためにも、可能な限り自前での開発・運用に臨む必要があった。
3つ目の目標として掲げた“全てをAWSに”についてはある意味、レコチョクの決意を如実に表しているといえる。一般的なパブリッククラウドへの移行事例では、オンプレミスから徐々に移行していくというケースが多いが、レコチョクの場合、「ハイブリッドクラウド方式ではレコチョクの“あるべき姿”を実現できない。意識を全てAWSに振り切った方がいい」(松嶋氏)と決断、オンプレミスへの投資を一切止めている。もちろん移行作業自体は「AWS Direct Connect」を使ってオンプレからクラウドへと順次進める方式を取ったが、コストの最適化やリリースの短縮化など最初に掲げた“あるべき姿”を実現するには、ハイブリッドクラウドは無駄な回り道にしかならないと判断したのだ。
オンプレミスとは何だったのか ~3つの目標を振り返る
ここで掲げられたAWS全面移行における3つの目標はどの程度実現することができたのだろうか。
まずAWS利用料に関しては最初に想定した“算出コストの30%”のさらに80%以下のコスト、つまり当初の10~20%程度のところに着地できているという。松嶋氏はこの結果に「あらためてオンプレミスとは何だったんだろうと思う」と語っている。ただしAWSの利用料金はサービスや時期、担当するチームによってばらつきが出やすいという点は考慮しなければならないだろう。「Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)」は一度使い出してしまうと当初の想定より多く使うようになる。予想より2、3割は多く見積もっておいた方がいい」(松嶋氏)
2つ目の“社員によるAWSアーキテクト設計”は、チームによって環境にばらつきが出るものの、当初の想定通りに作業が移管でき、システム担当者の個別スキルも大きく上がったという。「AWS導入前はバージョン管理システムに『Subversion』のような古い技術を使っていた。だがAWS導入後はスタッフがソースコード管理サービス『GitHub』やチャットサービスの『Slack』などの新しい技術に興味を持つようになったことがとてもうれしい」(松嶋氏)
3つ目の“全てをAWSに”は現在も順調に移行が進んでいるという。このままスムーズに運べば「2017年3月には全てのオンプレミス環境から撤退できる」(松嶋氏)とのことだ。
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