【連載コラム】医療ITの現場から
クラウド電子カルテの普及は止まらない――価格を左右する“サービス”の見えざる価値(1/2 ページ)
タブレット対応の問診入力システムをはじめ、病院のさまざまな場面でクラウド技術が活躍している。電子カルテのトレンドもクラウド化だ。しかし、コストダウンだけを理由に選ぶのは注意が必要だ。
医療分野におけるクラウドコンピューティング(以下、クラウド)の技術の利用が2010年に認められてから6年が経過しました。これまでクラウドの技術は、在宅医療や地域連携ネットワークを中心に、離れた場所との連係や外出先での使用で先行的に利用してきました。これは、インターネットさえつながればどこでも利用できるというクラウドの「携帯性」に注目したものでした。
しかし最近は、クラウドによる「コストダウン」に着目した利用も広がっています。ソフトウェアを“購入して所有する”という従来の考え方に替わって、“利用料を支払いシェアする”という考え方が一般化しつつあるのです。
併せて読みたいお薦め記事
電子カルテに関する記事
電子カルテの普及率に関する記事
受付周辺システムのクラウド化
クラウドによる「コストダウン」の発想は、以前から診療予約システムに取り入れられてきました。診療予約システムは医療に直接関わる情報を保持していないため、医療分野でクラウドが解禁される前の早い段階から「ASP型システム」として利用されていました。ASP型システムは、従来のオンプレミス型のシステムと比べてイニシャルコストを大幅に安くできることから、多くの医療機関が導入しています。医療機関におけるクラウド技術の活用はその後も広がり、現在では患者向けのアンケート調査システムや、タブレット対応の問診入力システム、再来受付機、カード決済システムなど、受付業務のさまざまな場面でクラウドの技術を採用しています。
レセプト請求、レセプトチェックのクラウド化
2006年に始まったレセプト(診療報酬明細書)請求のオンライン化は、政府の積極的な推進もあり、今では広く普及するようになりました。インターネットを介して請求手続きをする仕組みは、まさにクラウドの技術の典型的な活用例といえるでしょう。この仕組みにより、診療報酬の審査や支払業務にかかるコストは、請求側と審査側の双方で大幅に削減しました。また最近では、医療機関側で実施するレセプトチェックをクラウドで行うシステムも登場し、安価に利用することが可能になっています。
電子カルテのクラウド化
主に在宅医療向けに開発が進んでいたクラウド型の電子カルテを、外来診療をメインとする診療所で利用する動きも出てきました。クラウド型の電子カルテは低価格化が急激に進んでおり、電子カルテだけであれば月額利用料が1万円を切るものまで出てきています。これは、開発コストのかかるレセプトコンピュータ(以下、レセコン)部分をオープンソースの日医標準レセプトソフトウェア(ORCA)に委ねることで、ベンダーは電子カルテの開発に専念でき、大幅なコストダウンを実現しています。
これまでオンプレミス型の開発が一般的だった電子カルテをクラウド化する動きは、徐々に広がっています。医療分野のシステム開発に対する利用環境が整い、電子カルテ開発のハードルが大幅に下がってきたことで、政府が定める電子カルテのガイドラインをクリアすれば誰でもシステムの開発ができるようになりました。そのため今後は異業種からのさらなる参入が予想されます。またレセコン開発から電子カルテ開発まで、長年、医療IT業界をけん引してきたメーカーもクラウド型の商品を発売しています。このようにシステム開発の実績を持つ電子カルテメーカーがクラウド型の商品を発売することで、業界全体にクラウド化の流れが浸透していくことでしょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
【連載コラム】医療ITの現場から
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは? -
製品資料
[株式会社みらい翻訳] 音声翻訳活用の課題を解決、“本当に使える”ツールの特徴とは? -
製品レビュー
[Wrike Japan 株式会社] 400店舗を支えるWalmart Canada、散在する情報やアナログな管理をどう変えた? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 年間100件超のDXプロジェクトを統合管理、JERAはどのように実現した? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] グローバルなクリエイティブ業務を合理化、エスティーローダーに学ぶ実践のコツ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
3
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
4
APIキー奪取から3時間でクラウド掌握 Anthropicが暴いた「バイブハッキング」の現実的な防御策
-
5
「複数AIの野放し」に歯止め Salesforceが6製品統合で挑むAI統制の覇権
-
6
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
7
“AIコーディング”でどのツールを選ぶ? 「ChatGPT」「Claude」の真価
-
8
「制御用組み込みPC」に関するアンケート
-
9
「身代金を支払う」以外のランサムウェア対策は本当にあるのか?
-
10
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
8
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー