手元に残すべきデータとは
「医療ビッグデータ」でもクラウド移行は“じわり”と進行、その最新事例とは(1/2 ページ)
EBM(根拠に基づく医療)へ移行するほど、医療機関ではクラウドストレージの需要が高まっていく。では何のデータを手元に残すべきか。事例から考察する。
病院や医療機関で働く、最高情報責任者(CIO)や医療情報部門の幹部が、ストレージを再設計するときには、複数の要素について検討する必要がある。
例えば、医療機関のIT担当者は以下のことをしなくてはならない。
- クラウドストレージに保管する候補のデータファイルとアプリケーションを合理的に判断する
- オンプレミスに残すデータを決める
- 法的要件を満たすために保管が必要な患者情報の処理に利用する新しいテクノロジーがあるかどうかを特定する
医療機関は公衆衛生、精密医療(※)、ビッグデータ分析などのデータ駆動型戦略に乗り出している。そのため、多くの医療施設が、コスト削減とパフォーマンス向上のために、データの格納方法の再考に注力し、クラウドコンピューティングなどのテクノロジーの導入を検討するようになっている。
※訳注:精密医療……Precision Medicine。個人の遺伝子情報のような詳細な情報を基に、より精密な対応をする医療を指す。
クラウドの利用を左右するプロジェクトの規模
医療データをクラウドに保管するかどうかの判断には、病院の規模や業務範囲が関係する。例えば、医学研究を行う病院では、ストレージ技術を購入する必要性をより強く感じたり、古い研究プロジェクトを保管したりするためにクラウドサービスを利用する可能性がある。
データが多くの利害関係者の要求と法的要件を満たす方法で保管されなくてはならないことも明らかだ。
「トレンドという観点でストレージを見ると、病院にはIT部門が満足させなければならない顧客が複数存在する」と、Dragon Slayer Consultingの代表取締役を務めるマーク・スタイマー氏はいう。同社は医療機関のIT幹部に助言を行っている。顧客には患者、医師、病院管理者がいる一方で、連邦法に基づいてデータが安全に保管されているかに目を配る規制機関もいる。
ストレージのニーズは病院によって異なるため、病院がデータを保管する方法と、それぞれの病院が取るアプローチに関して一貫した答えはないとスタイマー氏は語る。
分析対象になる患者情報
医療機関のIT担当者181人を対象に実施した調査では、医療機関はより多くのデータをクラウドにアップロードするようになることが見てとれる。また、TechTargetがCollege of Healthcare Information Management Executivesと共同で実施した2016年の調査では、回答者の32%が、所属組織で2016年にクラウドテクノロジーへの投資を増やす予定があると答えている。クラウド技術の採用を検討している上位3つの分野は、障害回復(45%)、ストレージ(37%)、遠隔医療(35%)だ。
EHRを利用した患者データへのアクセスや入力から、患者情報をデータ分析プロジェクトに活用しようとする動きは、医療機関で見られる重要な傾向だ。
「これまでEHRは、医師から確実にデータを集めて、全てのデータを1つのリポジトリに保管することを目的として利用されていた」と語るのは、UC Irvine Healthで情報サービス部門の責任者を務めるスリラン・バラディワジ氏だ。「現在、病院はEHRに保管したデータを、治療計画、医療の質、医療の見直し、医療費の削減に関して効果的な決断を下すのに活用する方法を見つけ出そうとしている」
医療業界がEBM(evidence-based medicine:根拠に基づく医療)へと移行するにつれて、データ分析プロジェクトに対する要件水準は上がるだろう。「全国または地方の患者集団からなるビッグデータ計画や特定の病院の一部患者を対象としたデータ分析を行うために、クラウドにある医療データストレージは、ますます普及するだろう」とHealthcare Information and Management Systems Society's Privacy and Security Committeeの会長も務めているバラディワジ氏は話す。
「例えば、特定の患者集団に適用する治療モデルを再考しているところで、投薬量の変更を検討しているとしよう。医療関係者は、請求データの数値処理のために、コンピュータの処理能力を上げたいと思うかもしれない。クラウドではそれが可能だ。このような迅速さが求められるプロジェクトのために、クラウドの活用を検討するIT幹部は増えている」(バラディワジ氏)
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