IoT化が先行する交通網の最新事例
「次のバスが来るのは何分後」から信じられないほどに進化した交通網のスマート化
街全域でIoTを活用して住民が快適に過ごすことができるようにする「スマートシティー」構想において、最初に始まるのが交通網のIT化だ。なぜ、交通網を優先するのかその理由を説明する。
「さまざまな場所に人々を効率的に移動させたい」という要望に、IoT(モノのインターネット)の機能はまさに適任だ。IoTはスマートシティーの開発に最適なフレームワークとなるだろう。スマート交通機関の構築が、スマートシティー開発の第一歩として着手するケースが多いのはそのためだ。実際、都市に既にある高価な資産(バス、地下鉄車両、駅、停留所など)とセンサーおよびデータ分析を組み合わせるだけで、大きな成果を得る。
さまざまな都市でIoTを利用して住民や訪問者のモビリティ向上を実現している。その手法は都市自体と同様に多種多様だ。しかし、それぞれの手法は、各都市の施政者がIoTの力を理解し、かつ住民に関するデータを活用することで交通機関の使い勝手を向上している。この記事では、IoTを利用して既存の交通システムを短期間で大幅に改善した幾つかの都市の事例を紹介する。
3秒ルール
ワシントンD.C.では、以前からセンサー情報を利用して公共交通機関で推定到着時刻を知らせていた。しかし、2015年になって当局は、バスで採用していた3分間隔の報告サイクルでは不十分だと考えた。報告と報告の間に2分間の運行停止が発生すると追跡システムは検知できず、次の停留所の乗客は、バスがどこまで来ているのか分からなくなってしまうからだ。
そこでワシントン首都圏交通局(WMATA:Washington Metropolitan Area Transit Authority)はソフトウェア開発ベンダーと協力して、3秒ごとにバスの運行状況を報告するスマートフォンアプリを公開した。このアプリは乗客に正確な到着時刻を知らせただけでなく、WMATAが交通問題に対処して遅延を避けるのにも役立った。
交通網の充実
米国運輸省の主導による技術実証プロジェクト「スマートシティーチャレンジ」において、実施地域の選定に向けた提案コンテストで米コロンバス市(オハイオ州)が優勝した。同市は交通問題を重要な課題と位置付けていた。交通は、市民がオフィスに到着して業務を開始することで活性する地域経済に不可欠だからだ。
コロンバス市はIoTセンサーとデータ分析を利用して、3つの取り組みを行う。第1の取り組みは「スマートコリドー」(コリドーとは主要輸送ルートのこと)を開発し、企業が集中している地域への通勤を容易にすることだ。第2に同市は公的および民間ソーシャルサービスと提携し、低所得層が多い地域のモビリティと交通サービスの向上も試みる。そして第3として「スマートグリッドモビリティパターン」をサポートし、交通機関の連係を強化して、交通システム全体の利便性を高める。
自転車都市パリ
ニューヨークやロンドンのような他の主要大都市と同様に、パリは交通渋滞が危機的な状況に陥っていると認識している。その経済的影響は深刻で、年間170億ユーロもの損失をもたらしている。これらの都市は、ネットワーク化した自転車の貸出返却所を利用した自転車シェアリングプログラムを導入し、市民や訪問者が利用できる交通手段の選択肢を広げて、交通渋滞の緩和や交通網の拡充につなげようとしている。
自転車の貸出場所と返却場所に基づく利用状況データをリアルタイムで把握することで、これらの都市は、各地域に対する自転車の配分を調整し、需要の変動に対応する。需要の変動には、イベントに伴う一時的な増加もあれば、人口の増減や通勤パターンの変化に伴う長期的なものもあるが、どちらにも対応できている。
これらの事例は各都市固有のニーズに対する取り組みだが、それらの解決策はいずれも共通の要因に影響を受けている。それは、住民に関するデータの価値に対する理解の向上に加え、過去10年におけるセンサーの性能、ネットワークの帯域幅、処理能力の向上とその利用コストの急激な低下だ。こうした変化によって都市全域をカバーするネットワークの構築が経済的にできるようになっている。
ただし、これらの取り組みが成功しているのは、「多くの人が、いるべきときにいるべき場所にいられるように、市の予算を圧迫することなく、スムーズに移動できるようにする」という、恩恵が広く行き渡るシンプルな前提を貫いているからだ。そのおかげでスマート交通機関は、都市への投資者にとっても、都市サービスを受ける住民および訪問者にとっても、メリットを与えることが可能になったといえるだろう。
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