シチズンデベロッパーを支援
「RMAD」ツールが“モバイルアプリ開発に専門家はいらない”論を加速する
基本業務にモバイルアプリを使いたくても、IT部門や開発者に開発を依頼するとコストと時間がかかってしまう。そこで、「RMAD」ツールを使ってモバイルアプリを自作しようと考える人たちが増えている。
家庭用のカーペットと床材を販売する中小企業Ruggs Benedictの経営者、ロジャー・ベネディクト氏は、自社の業務用にカスタムモバイルアプリを必要としていたが、開発者を雇う時間も予算もなかった。そこで自分で作ることにした。
ベネディクト氏はFileMakerが提供するコーディング不要のアプリ開発プラットフォーム「FileMaker」を使ってApple「iOS」用アプリを複数作成した。従業員が在庫追跡、価格の確認、顧客情報の記録、カレンダーや電子メールとの連係などを行うためのアプリだ。
「1、2日もあれば、単一用途のアプリを1つ作成できる。そうしたアプリを必要な分だけ作成して、後で全部を1つにまとめればいい。それらを全ての業務に使っている」とベネディクト氏は言う。
シチズンデベロッパーを支えるシンプルなツール
ベネディクト氏のように、IT担当者や開発の専門家でないにもかかわらず、簡単に使えるツールでアプリを自作する経営者やエンドユーザーをシチズンデベロッパー(市民開発者)という。IT部門や開発者が業務に必要なモバイルアプリを提供するのに時間がかかり、待ちきれない従業員がシチズンデベロッパーになることがある。その結果、プログラミング経験がない人でもビジネスアプリを開発できる高速モバイルアプリ開発(RMAD)ツールが次々と登場することになった。
RMADツールが提供するテンプレートと組み込みのAPIを使えば、ほとんど、あるいは一切コードを書かずにアプリを作成でき、それを自社のバックエンドサービスに接続することができる。ベネディクト氏がFileMakerを選んだ理由は、必要なアプリを簡単に作成でき、それらを同期してデータを共有できる点だ。また、FileMakerはAppleの子会社なので、ベネディクト氏の会社で使っている「Mac」やiOS端末との相性もよく、常に最新技術に対応できるところも評価した。
そして何より大きいのは、アプリの作成や利用、学習、展開が簡単だったことだ。従業員数約50人のRuggs BenedictにはIT部門がなく、開発専門スタッフもいない。外部の開発者を雇う選択肢はなかった。「ITの専門家に頼むと多大な資金と時間が必要になる」と同氏は言う。
RMADツールはユーザーのニーズに応えるものではあるが、セキュリティの不安と存在の見えにくさがIT関係者の間で問題視されている。カナダのITコンサルタント会社Five Nines IT Solutionsの社長兼CEOのダグラス・グロスフィールド氏は、RMADツールがシャドーIT(IT部門が把握できていないIT利用)を助長することを懸念している。「IT部門以外の者がIT作業を行うと環境を管理しきれなくなる。提供されているコードが実際に何を行うものなのか誰も検証しないまま、そうしたコードを社内に持ち込めば、潜在的なリスクが高まる」(グロスフィールド氏)
シチズンデベロッパーの実態を把握するには、IT部門がコードを検証し、そのアプリが必要以外のことをしていないかどうか、セキュリティの問題がないかどうか確認することが重要だ。「環境を完全に把握していないと、大きな問題が発生したとき、復旧に行き詰まることになる」とグロスフィールド氏は言う。
RMADツール
米国の調査会社VDC Research Groupによると、企業が1つのモバイルアプリを開発して導入するには平均で6カ月以上の期間と約14万ドルの費用が掛かっているという。そのためRMADツールを利用する企業が増えており、その市場規模は2020年までに4倍以上に成長する、と2016年12月発表の同社の報告書は推定する。
「こうした企業は自分たちの手で解決したがっている。IT専門家に頼んで時間がかかるのはもう嫌なのだ」。VDCのモバイルソフトウェアディレクターを務めるエリック・クライン氏はそう話す。
Microsoft、IBM、Google、SAP、Oracleなどの大手ベンダーは皆、一般的なアプリ開発ツールを提供している。RMADプラットフォームを提供しているのはKony、Capriza、Kinveyなどの小規模ベンダーだが、近年は大手も参入しており、Microsoftは「PowerApps」を公開した。
RMADツールが一般的なアプリ開発プラットフォームより魅力的なのは、低いコストで導入でき、簡単に使えるからだとクライン氏は話す。また、SAPやOracleなどの主流バックエンドデータソースとも簡単に連係できるという。
ただし、どのツールを選ぶかは難問だ。「いろいろな意見があり、ベンダー数も多い。既に大手ベンダーのアプリを多く利用している場合は、モバイルアプリにも同じベンダーを選ぶのが得策だろう。ただ、そうしたアプリのモバイル化を得意とする別のベンダーがあれば、そちらを選ぶ理由になる」とクライン氏は語る。
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