高速開発ツールが後押し
“ノーコード/ローコード”のソフト開発が浮上、問われるのは開発者の思考に
企業のアプリケーション開発が変化しつつある。「開発者」の定義が変化し、業務部門のメンバーによる市民開発者の存在が主流になりつつある。これを後押しするのがノーコード/ローコードのアプリケーション開発ツールだ。
ソフトウェア開発の仕事は流動的な状況にある。モバイルコンピューティングはアジャイルによってただでさえ数週間に短縮された開発サイクルを、わずか数日に圧縮している。DevOps(DevOpsは、開発・運用の壁をなくすプラクティスを指す)は、アプリケーション開発を運用に絡ませた。ノーコード/ローコードツールはアプリケーション開発をプロのプログラマーの仕事から格下げさせ、いわゆる市民開発者を後押ししている。
2017年はアプリケーション開発者にとってどんな年になるのか。EMC、RSA Security、Adobe Systemsを経て現在はノーコード/ローコードを手掛けるQuickBaseで製品・企業マーケティング責任者を務めるジョン・キャリオン氏に話を聞いた。ソフトウェア開発は変化しつつあり、それは開発者にとっての変化を意味する。1961年のトワイライトゾーンのエピソード「The Obsolete Man」はこのトレンドを正確に予言していたのか。
――マイクロサービスやコンテナ、ノーコード/ローコード開発ツールが台頭する中で、ソフトウェアエンジニアやソフトウェア開発の仕事に何が起きるのか。
ジョン・キャリオン氏 2017年は採用担当者が「開発者」という用語や開発という職種の定義を見直し、組織内の開発ニーズに対応するため型にはまらない考え方をするようになるだろう。スキルを持った開発者の人材不足が続くことや、コードを一切あるいはほとんど書かなくてもソフトウェアが開発できるツールの人気上昇、求職者の間でそうしたツールの認知度が高まったことで、この傾向に拍車が掛かる。
――このトレンドは、アプリケーション開発者であることにおいて、純粋なコーディングのスキルが果たす役割の低下を意味するのか。
キャリオン氏 コーディングスキルは重要であり続けるが、多くの場合、会社のための開発ニーズを満たす人材を求める採用側が最も重視する必須条件ではなくなる。管理職は技術スキルのみに頼るのではなく、プログラマーや開発者としての「思考」を求めている。
――そこで浮上するのが、ITの外にいて、かつてわれわれが「シャドーIT」と呼び、今では市民開発者とも呼ばれる開発者の存在だ。これがソフトウェア開発職の領域を変化させることはないのか。
キャリオン氏 その通り。「開発者」の定義が一夜にして変わることはない。しかし2017年はその始まりの年になりそうだ。Gartnerでさえも、2020年までに高速アプリケーション開発プロジェクトの60%は正式なITチームの外で行われるようになると予想している。この過程で、技術職の採用担当者にとって新たな課題が浮上する。優秀な開発者をどのように見極めるのか。その成績は何を尺度に評価すべきなのか。
――IT部門内で複雑なソフトウェア開発やセキュリティ関連のソフトウェア開発を担うプロの開発者が常に必要とされる環境では、市民開発者は何を開発するのか。
キャリオン氏 市民開発者が主流になり、企業も社内でローコードツールを使うことに抵抗がなくなる中で、外部と接する実験的なアプリケーション開発の頻度は増える。市民開発者は引き続きそうしたアプリケーションを開発しながら、パートナーや顧客のための資産管理や共同プロジェクト管理といったタスクに重点を置くケースが増える。市民開発者についてわれわれが最近実施した調査では、35%が顧客向けのアプリケーションを開発しており、その割合は2015年の27%から増加していた。
――あなたが言及しているのはトランザクションの多いアプリケーションであって、単に読み取りのみのデータを引き出す報告やプレゼンテーション用途のアプリケーションではない。
キャリオン氏 パートナーや顧客にとってこの変化は、自分たちの具体的なニーズに応えてくれるアプリケーションベースのソリューションを通じ、必要とする情報を即座に入手できるアクセス性が高まることを意味する。
――アプリケーション開発が部門ごとの市民開発者へと分散化されれば、必然的にアジャイルにつながるのか。
キャリオン氏 アジャイルの手法は、企業による技術の評価と実装の在り方を変化させた。2017年はアジャイル思考の新たな波が企業に到達するだろう。今回は戦略的決断を下す期間短縮の支援に重点が置かれる。長期にわたる調査プロジェクトや経営コンサルタントのチームがいた日々は過去のものになりつつある。
――具体的には何のアジャイル化が進むのか。
キャリオン氏 IT部門であれ、業務部門であれ、マーケティング部門であれ、従業員は迅速なアプリケーション開発や自動化された調査ツールを使って自分で手早くテストをしたり疑問に答えたりできるようになる。どのプロセスや戦略がうまくいっていて、どれがうまくいっていないかが分かるまでの時間が短縮されることにより、従業員はインテリジェントな意思決定をして、ビジネスアプローチを即座に修正することができる。
――これは全てデジタルトランスフォーメーションと呼ばれる現象の一環にある。ソフトウェア開発職の他に、どんな職種がデジタルトランスフォームされるのか。
キャリオン氏 過去10年の間にデジタルトランスフォーメーションはマーケティングとITの在り方を変革させた。だが今も比較的デジタルによって変革されていない重要なビジネス分野がある。2017年、デジタルトランスフォーメーションはついに、企業内で3番目に重要な部門、すなわち業務部門に到達するだろう。
われわれの調査では、業務部門の非IT担当者のうち23%は既に、自分たちの部門のデジタルトランスフォーメーションの実現に必要なアプリケーションを開発している。主に予算のシフトや顧客サービス向上の取り組みに牽引(けんいん)されて、この数字はさらに伸びる見通しだ。Forresterの最近の報告書によると、従来カスタマーエクスペリエンス変革のために費やしていた額と比較して、Home DepotやUnileverといった企業は4倍の額を自分たちの業務のデジタル化に費やすことを予定している。
――市民開発がさらに一般的になる中で、ソフトウェア開発の仕事は変化している。その傾向は2017年以降も続くのか。
キャリオン氏 2017年は、専門スキルについて正式な教育を受けたことはなくても、ハイテクツールの助けを借りて仕事をこなす「市民従業員」の台頭をもたらすだろう。これまでに市民アプリケーション開発、市民ビデオマーケティング、市民Webサイト構築、さらには市民データサイエンスまで登場してきた。テクノロジーが特別なスキルの民主化を推し進める中で、さらに多くの市民職の機会が浮上する見通しだ。その1つである市民データインテグレーターは、市民データサイエンティストと同様に、企業データの成長と、それをもっと効率的に活用したいと願う企業によって牽引される。
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