「競争力を高める」をどう評価するか
iPhone導入の投資対効果は? 従来手法では測れないEUCの導入メリット(1/2 ページ)
サーバやストレージのようなインフラとは異なり、EMMやVDIのようなEUC(エンドユーザーコンピューティング)の投資は、ROIの評価が単純ではない。コスト削減以外の効果にも目を向ける必要がある。
金は天から降ってくるものではない。それは企業のIT部門でも同じだが、限られた予算で最大限の投資対効果(ROI)が求められる。エンドユーザーコンピューティング(EUC)では高いROIを期待できるが、それも勝手に天から降ってくるわけではない。
サーバやストレージなどのハードウェアやインフラのROIは分かりやすく、リソースが生み出す効果とコストを比較すればいい。これらのリソースは刷新することで運用費、電気代、冷却費、設置スペースコストなどの支出を削減でき、企業に利益をもたらす。これに対し、EUCはそうした直接的な金額につながらない。IT業務の費用対効果より、従業員の業務を向上させるのが目的だからだ。
Oral Roberts UniversityのCIO、マイケル・マシューズ氏は次のように話す。「ROIという用語はもはや金銭的効果に限定されない。どんなものもROIとなり得るから、競争力につなげる必要がある」
EUCは従業員の業務を向上させることによって企業の競争力を高める。その効果は数値化しにくく、ROIの測定は難しい。EUCの投資対効果は、生産性や従業員の満足度、IT要員の負担軽減、データセキュリティなどに現れる。EUCツール導入前と比べてIT関連支出が縮小すれば、たとえ直接の利益が発生しなくても金銭的ROIと見なすことができる、とマシューズ氏は話す。
また、導入する機能ごとにROIは異なり、エンタープライズモビリティ管理(EMM)のROIと仮想デスクトップインフラ(VDI)のROIはそれぞれ違う。
併せて読みたいお薦めの記事
EUCの定義、ベンダー動向
いまさら聞けないEMM
- 今更聞けない「MDM」「MAM」「MIM」の違いとは? EMMの3大要素を比較
- iPhone、Android管理に使いたい「EMM製品」を機能別に整理した
- iPhoneとAndroidしか管理できない「EMM製品」は時代遅れなのか?
VDIの必要性
EMMのROI
モバイルアプリを開発して提供すると、従業員の業務効率は大きく向上する。カスタマイズしたシンプルで分かりやすいインタフェースを備えた機能的なモバイルアプリやWebアプリを導入してビジネスプロセスを改良すれば、仕事がはかどり、楽になる。ただし、そのようなアプリを従来のソフトウェア開発環境で作成することはできないため、ほとんどの場合は新しいツールを購入しなければならない。また、モバイルアプリ開発に精通した人材はまだ少なく、そのための新たな人件費もROIに影響する。
これに対し、EMMは多くの企業が既に利用しているベンダーから入手可能であり、Citrix Systems、VMware、Microsoft、IBMなどが提供している。中には他の製品と併せてEMMライセンスを提供するベンダーもある。そうした要因からもEMMなら高いROIを得やすい。
EMMを利用すると、企業で使用するモバイル用デバイスとオペレーティングシステムの種類や、誰がどのデータにどのようにアクセスするかをIT部門が把握できる。そうした情報を簡単に入手できれば、問題発生時にも管理者がトラブルシューティングしやすくなる。
United Bankのメッセージング/コラボレーションスペシャリストであるウィレム・バッカス氏は「ITスタッフの負担が大幅に軽減する。そこから投資効果を得られる」という。
EMMではデバイスを追跡して紛失を防ぐこともでき、その点でも経費の節約につながる。
United BankはVMwareの「VMware AirWatch」を導入し、従業員のデバイスをApple「iOS」端末に限定したという。同行のIT部門はまず、AirWatchのビジネスプロファイルを使って行内用電子メールアプリを配布した。この機能では、特定のユーザーにどのアプリを配布するかを管理者がカスタマイズできる。これを手動でやろうとすれば膨大な時間がかかる、とバッカス氏は話す。
同氏によると、デバイスの所有元もモバイル技術のROIに影響するという。例えば、United Bankでは同行所有のデバイスを支給しているため、デバイスに入れるものは全てIT部門が管理でき、データ流出コストの心配がない。
これに対し、私物デバイスの業務利用(BYOD)の場合、「節約できるのはスマートフォン本体価格とデータの実費だけで、生産性やセキュリティリスクのコストは非常に大きい」とバッカス氏は語った。
VDIのROI
デスクトップの場合、仮想化を採用するかどうかが重要な決断となる。ITサービス会社Envision Technology AdvisorsのCEO、トッド・クナップ氏によると、VDIを導入する主な目的は生産性の向上、セキュリティの強化、人員削減などであり、金銭的効果ではないという。
「仮想化のROIは金額では測れない。単に物理PCとVDIのコストを比較するだけではなく、さまざまな間接的効果を視野に入れる必要がある」(クナップ氏)
実際、クナップ氏の顧客のケースでは、現行の物理デスクトップを管理するコストより、仮想デスクトップを導入するコストの方が高くなるという。運用コストはVDIの方が物理デスクトップより低くなるとしても、IT部門がVDI導入を経営陣に提案するとき、金銭的効果はあまり理由にならない。もっとも、Desktop as a Service(DaaS)なら従量制なので新しいインフラを購入する必要がなく、初期費用を抑えることができる。
一方、Oral Roberts UniversityはVDIによって金銭的なROIを獲得することができた。同校の学生と職員は図書館の情報端末や学習室(これは一般的な企業の用途とは異なる)、自宅から仮想デスクトップを利用する。共有ソフトウェアを使うので(これは企業でも一般的だ)CADのような高額アプリケーションのライセンス購入を節約できる。
マシューズ氏によると、同校が獲得したROIは1年間で約20万ドルの経費削減および手動で物理デスクトップに個別のアプリを配布しなくて済むことによる時間の節約だという。さらに、校内の全1700クライアントのVDI展開を1人のスタッフで管理できるため、IT部門を縮小できた。
「今は、アップグレード、パッチの適用、最新状況やテスト状況の確認など全てを1人の職員が管理している。もしも仮想デスクトップを導入していなかったら、変更や修正、インストールやアンインストールの対応に技術者が3人は必要だっただろう」(マシューズ氏)
厳しい規制を受ける企業にとって、VDIを使う最大のメリットはセキュリティだ。デスクトップOSやアプリケーションの実行とデータの保管をデータセンターで行うので、エンドポイントのローカルセキュリティツールが不要になる。また、データが流出すると、クリーンアップ、罰金、信用低下などの高い代償を払うことになるため、そのリスクを軽減できることはコストに見合う、とクナップ氏は語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
“攻撃者優位”なサイバーセキュリティ、全ての「穴」をふさぐ方法とは? -
製品資料
実際に悪用される脆弱性は4%前後 優先的に対処すべき脆弱性を把握するには? -
製品資料
HubSpotの機能を拡張する法人データ活用法 -
製品資料
面倒で非生産的な「名寄せ」作業 高精度&高効率に実施するには? -
製品資料
名刺管理には「その先」がある 成果のでない営業活動から脱却する秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
2
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
3
AWS障害でも補償ゼロの衝撃 サイバー保険で情シスが見落とす「細則の壁」
-
4
マンガで解説:採択率は3割台? デジタル化・AI導入補助金申請の落とし穴
-
5
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
6
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
7
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
8
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「WSUS」終了の時限爆弾 “本命”移行先ツールとMicrosoft提唱の新管理手法
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
財務・会計はAI活用でどう変わる? 調査で見えた変革の道筋
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
7
コスト分析で見る「デバイス復旧」の代償 損失額から導きだされた投資戦略とは
-
8
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
9
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
-
10
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー