応用できそうな分野は実に幅広い
フォルクスワーゲンが目指す、IT分野での量子コンピュータ利用
Volkswagenが量子コンピュータで交通流を最適化するテストプロジェクトを行った。だが、同社CIOが目指しているのは、さらにその先。量子コンピュータをITの主要分野全てに適用することだ。
Volkswagenグループ(以下「Volkswagen」)は量子コンピュータを採用し、同社の「デジタル競争力向上」プログラムに注力。従来のプログラミング技法では実現できなかった革新的なアプリケーションの作成を目指すという。
この施策は、Volkswagenと量子コンピュータ企業D-Wave Systemsが米サンフランシスコとドイツのミュンヘンにあるVolkswagenのラボで進めているもの。Volkswagenで量子コンピューティングの専門家を育成するとともに、量子コンピューティングの使用法を確立することを目指している。
「量子コンピューティング技術は、ITの主要分野全てと将来のデジタル化社会で、当社が飛躍的に進歩する鍵となる可能性がある。応用できそうな分野は実に幅広い。特に自動運転、AI(人工知能)支援によるプロセス制御、スマートファクトリー、機械学習、インテリジェントモビリティーなどの分野は有望だ」と、VolkswagenのCIO(最高情報責任者)、マーティン・ホフマン氏は話す。
スマートモビリティーも、量子コンピューティングを適用できるとホフマン氏が考えている分野の1つだ。同氏は次のように語る。「大都市の交通量シミュレーションを行うとしよう。交通の流れを最適化するには、個々の車両がある瞬間にどの地点を走行しているのか、どこで渋滞が発生するのかをコンピュータで計算する必要がある。この予測に基づいて、個々の車がどう走れば本格的な渋滞にならずに混雑を解消できるかを計算しなければならない。これは、使用するデータ項目が数十億個にも及ぶ、非常に複雑な計算だ」
こうしたタスクの多くは、従来のコンピュータでも処理できる。ホフマン氏は、ここでスーパーコンピュータを投入すると、劇的に進歩する可能性が大きいのではないかと考えている。
ただし、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)ですら、計算時に非常に複雑な問題が発生するという課題に直面する。量子コンピュータは、従来のスーパーコンピュータよりも何倍も速くその問題を解決する可能性を秘めている。
これまで量子コンピューティング技術は、主に科学機関、政府機関、航空宇宙産業で使用されてきた。Volkswagenはこの技術を一般の産業分野に応用する体制の構築を望んでいる。
D-Waveの量子コンピュータをテスト中
量子コンピューティングを道路交通流最適化に応用する最初の研究プロジェクトとして、中国の大都市、北京が選ばれた。「サンフランシスコとミュンヘンのラボから派遣したデータサイエンティストとビッグデータの専門家が、D-Waveの量子コンピュータでアプリケーションとアルゴリズムのプログラミングをテストしている」とホフマン氏は説明する。
「当社の専門家たちは既に、交通流の最適化アルゴリズムを開発し、テストしている。D-Waveとの戦略的な協業は、当社にとって非常に有益だ。当社は現在、専門家たちに専門知識を身に付けてもらうことと、起業家にとって有意義なアプリケーションの開発に重点を置いているからだ」と同氏は付け加える。「D-Waveとの協業の一環として、このプロジェクトの完了後もさらなるプロジェクトを開始する予定だ」
最適化の問題を簡単に言うなら、特定のシナリオにおいて時間、金銭、エネルギーなどの特定のリソースを可能な限り最良の方法で使用するにはどうすればいいのか、ということになる。このタスクは複雑なので、演算能力を指数関数的に向上させなければならない。膨大な数の変数が存在するタスクで最適化アルゴリズムを実行すると、従来のコンピュータでは処理能力の限界を瞬く間に超えてしまうことがある。
複雑な演算が必要な問題を解決する際に、従来のHPCを使用する場合がある。
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