高機能な製品は、現場のトレーニングで苦労する場合も
クラウドERP 10製品を徹底比較 辛口ユーザーが語るメリットとデメリット(1/3 ページ)
ERP市場でしのぎを削るクラウドERPベンダーを調査すれば、自社に最適なソフトウェアを決定する複雑なプロセスがほんの少し楽になるだろう。代表的な10社のクラウドERP製品をレビューする。
ERP市場は規模が大きく、プラットフォームもしっかりしている。つまり、大半の企業にとって理想的な製品はどこかにある。だが、それを見つけるには慎重な調査が必要だ。
ERPシステムには核となるソフトウェアモジュールが含まれる。これはコンポーネントとも呼ばれ、不可欠なビジネス分野に重点を置く。財務、会計、人事、生産、資源管理、顧客関係管理(CRM)、サプライチェーン管理などがその例だ。
本稿は代表的なクラウドERPの情報をまとめた。下記の10製品について、ERP機能を備えた製品の種類について簡単な寸評を加える。
- Epicor ERP
- IFS Applications
- Infor M3
- Microsoft Dynamics 365 for Finance and Operations、Enterprise Edition
- NetSuite ERP
- Oracle ERP Cloud
- Plex Manufacturing Cloud
- QAD Cloud ERP
- SAP Business One
- SAP S/4HANA
Epicor ERP
Epicor Softwareの「Epicor ERP」は、企業規模を問わずあらゆる製造会社を対象にしたシステムだ。オンプレミスまたはクラウドへのインストールが可能だが、Epicor ERPは小規模企業にとってはやや複雑でコストも高くつく可能性がある。
Epicor ERPは統合スイート型ERPとして、プロジェクト管理、在庫、グローバルビジネス管理などに対処する手段を提供する。
Epicor ERPは必要なモジュールのみを購入することも可能だ。全モジュールを購入しなくてもシステムを利用できる。
Epicor ERPは1つの地域で操業する企業に導入できる。2層ERP戦略(注1)を実施している多国籍企業でも利用は可能だ。つまり、財務のような一般的で中核を成すプロセスには1つ目のERPを企業レベルで使用し、部門や子会社といった規模が小さい場所には2つ目のERPで特定のニーズに対処する戦略を採用できる。
※注1:本社で稼働するコアとなるERPの他に、事業部や拠点単位でビジネスニーズに合う別のERPを導入し、コアERPとのデータ連携を図るERPの導入方式。
Epicor ERPは全てのOSとデバイスに対応する。Epicor SoftwareはAppleの「iOS」とGoogleの「Android」のどちらでも使えるモバイルアプリも提供している。これらのアプリは経費やタイムトラッキング機能を備える。
Epicor ERPの機能を利用すると、次のようなことが可能になる。
- 財務運用の管理。経費、リスク、パフォーマンスに対する洞察の獲得。任意の場所やデバイスからの財務情報へのリアルタイムアクセス
- サプライチェーンのあらゆる側面の管理
- ドキュメントやコンテンツに対し、任意のデバイスから任意の時点での記録、保存、管理、取得
- 正確な見積もりの作成、受注から入金までのサイクルの効率化、的確な受注の履行
- 意思決定を改善することを目的とした、ビジネスに対する高い可視性の実現
- 提案から注文までの間の見込み客、取引先担当者、顧客、見積もりの管理
IFS Applications
IFSの「IFS Applications」はコンポーネントベースのERPシステムだ。企業がさまざまな部門や場所の間でプロセスやデータを統合するのに役立つ。IFS Applicationsはクラウドまたはオンプレミスに導入でき、プロジェクト管理、資産管理、サプライチェーン管理などのモジュールを用意している。
IFS Applicationsを使用することで、企業は資産のライフサイクルをエンドツーエンドで管理できる。IFS Applicationsは財務、人事、ドキュメント管理、CRM、ビジネスインテリジェンス(BI)、レポート業務向けの機能も備える。
IFS Applicationsのコンポーネントには以下が含まれる。
- 会計ルール:IFS Applications内での手動・自動転記を全て対象にする一連の共通ルール。ユーザーはIFS ApplicationsやIFS以外のビジネスシステムとの間でやりとりされるトランザクションを、標準インタフェースで処理できる。
- ビジネスレポートと分析:事前に構築された分析モデルを使ってビジネスの把握と調査を後押しする。これには人事、販売、調達をはじめとするあらゆる要素が含まれる。
- エンタープライズオペレーショナルインテリジェンス:統合されたエンドツーエンドでのパフォーマンス管理を実現する。これにより企業はビジネス全体を管理できる。不備のあるビジネスプロセスや複雑なビジネスプロセスの修正や管理も可能だ。さらに、企業は予測分析や規範的な分析を通じてより適切かつ迅速な決断を下せるようになる。
- 品質管理:企業全体の品質管理データを効率化、標準化する完全な統合システムを提供する。
- 組み込みCRM:顧客対応を行うユーザーが得意先の企業データに完全にアクセスできるようにする。アクセスできるデータには請求書、売掛金、顧客プロジェクト、受注データなどがある。こうしたデータを利用して対処法や別の販売機会を提案できる。
IFS Applicationsのシステムは、さまざまな業界の中~大規模の企業に合わせて調整されている。対象となる業界は、航空宇宙、防衛、石油、ガス、工業生産、自動車、先端技術、建築、食品、飲料などがある。利用企業の中には「もっと広範なトレーニングやサポートがなければ、最初は習得するのも使用するのも難しい」という意見もある。
Infor M3
Inforの「Infor M3」は製造、流通、ファッションなど、複数の業界に合わせて調整されたERPシステムだ。加工業や個別の工業生産も対象にしている。
Infor M3は1つまたは複数の組織から成る企業の他に、複数サイトや複数通貨に対応する企業もサポートする。そのため、複数の言語を利用でき、国に応じたさまざまな要件にも対応する。
機能には次のようなものがある。
- カスタマーセールス&サービス:顧客に関する情報を管理できる。単純な製品売り上げから複雑な受注生産製品まで対応する。
- フィナンシャルマネジメント:会計、予算、連結、報告に関する要件を満たす。
- マニュファクチャリングオペレーション:複雑な製品、構成品、機能主導の製品を管理し、原価計算、計画、実行をサポートする。
- サプライチェーンマネジメント:需要計画、サプライチェーン計画、設備スケジュール、調達向けの機能を備えたツールを提供する。企業がサプライチェーン全体の計画を立て、スケジュールを設定し、運用できるようにする。
- 設備機器管理:これらのアプリケーションは、資産や設備のレンタル、販売、保全を行う企業向けに設計されている。
Infor M3は業界固有の機能を提供し、オンプレミスまたはクラウドに導入可能だ。Infor M3の製造向けERP機能を利用することで、変わり続ける業界のトレンドに素早く適合できるようになるだろう。混合モードや、複雑な環境の管理を支援する柔軟性も備える。
Infor M3システムの習得には多数のトレーニングが必要だと考える顧客企業もある。そのため、迅速かつ簡単な実装プロセスを求める企業にとっては、最適なクラウドERPソフトウェアとはいえないかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
5
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
6
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
7
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
8
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
-
9
AI完全自律化はわずか9% 日本は「進化に追い付けない経営陣」が足かせに
-
10
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー