企業は解雇とどう向き合うべきか【第2回】
業績悪化でも企業が「解雇」を最終手段にすべき理由と、検討すべき代替策
企業が経営不振に陥ったとき、生き残りの手段として従業員の解雇を検討せざるを得ないことがある。だが解雇を選ぶことで企業自体にもネガティブな影響が及ぶと専門家は言う。どのような影響があるのか。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の流行は、失業率の増加にもつながっている。企業が従業員を解雇する際、職場を離れる従業員にも、職場に残る従業員にも配慮が不可欠だ。本連載は4回に分けて、企業が解雇とどう向き合うべきかを解説する。前回記事「その解雇、本当に必要? 踏み切る前に検討したい『再教育』の意義」は、解雇を回避するための手段として「再教育」を紹介した。本稿は解雇の回避手段として重要な「従業員自身からの支援」と、解雇を最終手段にすべき理由を解説する。
解雇を最終手段にすべき理由
事業部門や人事部門のリーダーは差し迫った財政難に対処するため、従業員の雇用に関わる決断を下さなければならないことがある。短期的に見ると、解雇によってコストを削減できる。だが長期的には、従業員の士気や生産性、自社の評判にダメージを与える恐れがある。
「当社は事業が厳しい状況に陥ったときでも、解雇は最初に採るべき選択肢ではなく、最後の手段だと常に心掛けている」と語るのは、アラブ首長国連邦ドバイに拠点を置くAl Manal Developmentで人事および管理マネジャーを務めるムハンマド・シャバー氏だ。同社は不動産開発や、小売店舗、オフィス、住宅の賃貸を専門とする。「他の選択肢を検討し、できる限り解雇は避ける。レイオフは短期的には会社の助けになるもしれないが、長い目で見ると会社に損害を与える恐れがある」(シャバー氏)
長年にわたるさまざまな研究により、コスト削減の手段として解雇を用いる企業に多くの悪影響をもたらすことが判明している。幾つか例を挙げよう。職場に残る従業員が過重労働になったり、士気や忠誠心が低下したりして退職する恐れが高まる。職場を離れた従業員が有していた知識を失い、生産性やイノベーションに損失をもたらし、定着率が下がる恐れがある。
「全員が満足感を得られる」ようになる方法とは
「解雇の代案は、社内の配置転換以外にも数多く存在する」と、グローバルITコンサルティング会社AvanadeでHRトランスフォーメーションディレクターを務めるデイブ・ガルテンベルク氏は話す。米シアトルに本社を置くAvanadeは、AccentureとMicrosoftのジョイントベンチャー(合弁企業)だ。
ガルテンベルク氏が考える、解雇の主な代案を以下に示す。
- 一部または全員のボーナスを完全にカット。もしくは減額、延期
- 業績の低い従業員の生産性が上がるように支援
- 有給休暇の残日数の返却や買い取りのプログラムの作成
- 請負業者への発注を削減
- 昇給の一時停止
- 一時的な減給(例えば一定期間にわたって全社員の給与を5%減給。理想的には減給対象を最上位リーダーに限定)
もう一つ考えられるのは、従業員自身から支援を引き出すことだ。米ロサンゼルスに拠点を置く従業員育成コンサルティング会社Impact Groupでプレジデントを務めるケネス・シーゲル氏は、会社が直面する問題を従業員に説明し、解決方法についてのアイデアを求めることの重要性を指摘する。
「経営陣は、会社や同僚の仕事を守るために自発的に取り組もうとする従業員の行動を知って驚くことが多い」とシーゲルは語る。こうした行動を取った従業員は、他の従業員との結束をより強固にするだけでなく、あらためて業務に力を尽くすようになるという。「従業員は自らの運命を掌握できている感覚が生まれ、全員が満足感を得られるようになる」(同氏)
次回「『思いやりのある解雇』とは何なのか? 何をすればよいのか?」は、解雇に当たって思いやりが重要な理由と、従業員ごとに退職条件を柔軟に決める重要性を解説する。
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