「慢性的人手不足」の原因を探る【後編】
「AI」が数百万種の仕事をなくす? BCG調査から探る人材不足の原因
自動化技術やAI技術の普及は「数百万種の仕事をなくし、特定の仕事は今後も戻らない可能性がある」と、調査会社BCGらは指摘する。それはどういうことなのか。技術は企業の人材獲得にどのような影響を及ぼすのか。
前編「深刻な人材不足を招いた“真犯人”は『手厚い失業手当』だった?」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)下における米国の求人状況と、賃金上昇が労働力市場にもたらすデメリットを紹介した。採用を阻む問題は賃金だけではない。企業は空いているポジションを埋めるために、より迅速に採用活動を実施し、働き方の自由度を高め、福利厚生を充実させる必要がある。具体的には、従業員に自らのスケジュールや勤務地の決定に関する裁量権をより多く持たせるといった方法が考えられる。
この厳しい求人市場には別の問題もある。パンデミックによって業務の自動化が加速していることと、必要な業務スキルの変化により労働者をトレーニングする必要が生じていることだ。人工知能(AI)による業務への影響を共同で調査したコンサルティング会社Boston Consulting Group(BCG)と分析会社Faethmは、幾つもの仕事がデジタル化されることで、主要な労働力市場に混乱が起きると予測する。賃金上昇は、業務の自動化を加速させる可能性がある。
「AIは数百万種の仕事を一掃、なくなった仕事は戻らない」とBCGらは指摘
Faethmで米国担当バイスプレジデントを務めるスティーブン・ファレル氏は、「賃金の引き上げは、貧困問題や格差の解消に役立つと期待できる」と語る。だがファレル氏は、この施策が実際には逆効果になる恐れがあるとも指摘する。賃金の高まりは雇用主に対し、労働者のスキル再習得やスキルアップのための施策を促すのではなく、労働力の代替手段としての高度な自動化への投資を促すことになる可能性があるという。
BCGとFaethmによると、コンピュータや数学関連の業務における人材は、米国において2020年は57万1000人不足していたのが、2030年には610万人不足する。一方で業務の自動化と人工知能技術(AI)が「数百万種の仕事を一掃する」と両社は予想する。事務作業に従事する労働者は、ITによる自動化によって仕事を奪われると両社はみる。「これまでの景気回復期には、一度はなくなった仕事の求人も戻ってきていた。自動化とAI技術が存在する世界においては、特定の仕事の求人が全く戻ってこない恐れがある」(ファレル氏)
ロボットが人間に取って代わるにつれて、雇用自体が減少してしまうのだろうか。BCGとFaethmはそうした主張はしておらず、実際には新しい仕事が生まれると予測する。企業による自動化とAI技術の採用が拡大するのに伴い、労働者に求められるスキルは急速に変化する。人材不足に悩む企業は、人々が変化に適応できるように再教育する努力が必要になる。
既に一部の職業において、雇用の絶対条件から大学の学位を取り下げることによって、変化に適応しようとする企業もある。例えばGoogleやApple、さらには連邦政府でさえ、高度なスキルが必要な仕事の幾つかにおいて、大学の学位を必須条件から外している。
BCGとFaethmは調査レポート「The Future of Jobs in the Era of AI」で企業に対し、労働者のスキルの穴を特定し、それを埋める方法を考えることなど、変化に対処するための推奨事項を紹介している。両社によると労働者市場は、空いているポジションを埋めるのに十分な新しい人材を供給できなくなる可能性がある。「社内でのスキル育成によって、外部からの雇用を補完しなければならない」と両社は主張する。
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