「慢性的人手不足」の原因を探る【前編】
深刻な人材不足を招いた“真犯人”は「手厚い失業手当」だった?
McDonald'sやAmazonが、人材採用の促進のために従業員の賃金を上げる取り組みを実施した。人材不足は時給制の仕事だけでなく、専門職の採用にも影響している。慢性的な人材不足の背景にあるものとは。
大手ファストフードチェーンのMcDonald'sは2021年5月、自社所有の飲食店での賃金を1時間当たり平均10%引き上げることを発表した。Amazon.comは同月にフルフィルメントセンターとロジスティクスセンターで働く従業員7万5000人を、平均時給17ドルの初任給で雇用する計画を発表済みだ。住宅リフォーム会社のLowe's Companiesは同月、フルタイムの正社員やパートタイム労働者などを5万人採用する「National Hiring Day」(全国採用デー)を開催した。
人材不足が止まらない理由は「手厚い失業手当」?
時給制の仕事だけが人材不足というわけではない。企業は、さまざまな職種で求人を増やしている。米国労働統計局が2021年5月に発表した調査結果によると、同年3月の求人件数は810万件。中でも専門職を含む「専門家およびビジネスサービス」カテゴリーは、特に求人ニーズが高いカテゴリーだった。このカテゴリーは幅広い業界をカバーしており、金融業界やコンピュータ関連業界などを含む。
調査会社Gartnerの調査によると、求職者の50%以上が、働き方の自由度が高くなければ求人には応じないと答えている。同社で人事調査担当の責任者を務めるブライアン・クロップ氏は、企業は賃金引き上げの準備をしなければならないと指摘する。「多くの企業が、厳しい労働者市場で競争する方法は賃金アップだと確信している」(クロップ氏)
採用難とそれに伴う賃金上昇は、米国政府の政策がその責任の一端を担っているという意見がある。
失業者は州の失業手当に加えて、週300ドルの連邦給付金を受け取ることができる。こうした中、失業手当の削減を推進する州もある。これによって企業はさらに多くの求職者を獲得できると、この政策の支持者は考えている。
米国ウィスコンシン州の商工会議所Wisconsin Manufacturers & Commerce(WMC)は2021年5月、米国救済計画法によって2021年9月まで延長された連邦失業給付を撤回するようトニー・エバーズ知事に要請した。WMCの主張は次の通りだ。
失業者に対し、連邦政府から300ドルの連邦失業給付が支給されます。そのため失業者は2021年9月まで、州からの給付金と合わせて週に670ドルを受け取ることができます。これは時給16.75ドルに相当します。これについてビジネスリーダーは口をそろえて「失業者から働く意欲を奪い、雇用が困難になっている」と訴えています。
Gartnerのクロップ氏は、連邦失業給付が企業の人材獲得に影響を及ぼしていることについて「幾分かの事実ではある」と認めた上で、一部の企業が人材不足に直面している理由は「それだけではない」と話す。クロップ氏は、失業保険よりも安い賃金を設定している企業もあると指摘する。事実、ウィスコンシン州の最低賃金は時給7.25ドルだ。「賃金格差は非常に大きい。時給15ドル以上を払っている企業は問題なく採用活動を実施している」(同氏)
次回は、人材不足を招く賃金以外の原因を紹介する。
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