IT活用で“ニューノーマル”の人事課題をどう解決するか【中編】
「キャリアの不透明さ」が退職理由の5割 電機大手は「AI」で状況をどう変えたか
電機大手Schneider Electricでは、退職者の約半数が「キャリアの不透明さ」を理由に職場を去っていた。キャリアの不透明さを解決し、人材流動性を高めるために、同社が注目した手段がAI技術だ。どう活用したのか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い、人事部門に求められる従業員支援の内容は変わりつつある。COVID-19がもたらした“ニューノーマル”(新常態)の中で、企業が「従業員エクスペリエンス」(従業員体験価値)を高めるにはどうすればよいのだろうか。「チャットbot」を人材獲得に生かす企業の取り組みを紹介した前編「『チャットbot』でコロナ禍の人材獲得を効率化 アパレル企業はなぜ成功した? 」に続く 中編となる本稿は、ある企業が社内の人材流動性向上に人工知能(AI)技術を活用した取り組みを紹介する。
電機大手が「キャリアアップが見えない」をAI技術で解消
AI技術は、新規採用者の募集だけでなく社内人材の需要と供給のマッチングにも使われている。電機大手のSchneider Electricは、従業員の定着や社内の人材流動性を改善する取り組みが必要だと判明し、その改善を目指してAI技術を導入した。
Schneider Electricは、100カ国以上に13万5000人を超える従業員を抱える。同社でチーフタレントおよびダイバーシティーオフィサーを務めるティナ・カオ・マイロン氏によると、同社は退職時の面接を見直した。その結果、退職した従業員の47%はキャリアアップが目に見えないことを退職理由として挙げていたことが分かった。
こうしたニーズに対処するため、マイロン氏が率いるチームは「Open Talent Market」(OTM)を生み出した。これは、AI技術を利用した社内のタレントモビリティ(人材流動性)サービスだ。Schneider ElectricはOTMを以下のような用途で活用している。
- 従業員と新しい職務のマッチング(パートタイムやフルタイムを含む)
- ストレッチアサインメント(注1)をする 際の従業員と職務とのマッチング
- メンターになる従業員とメンターを求める従業員とのマッチング
※注1:従業員の成長を促すために本人のレベルを超えた職務にアサインすること。
マイロン氏によるとSchneider Electricは、マネジャーや人事部門が対処していた当時は、人材と職務のマッチングに3~4週間の時間を要していた。それが今や、従業員がOTMにプロファイルを作成してからわずか30~60秒で完了するようになったと同氏は説明する。
OTMは「Schneider Electricでのキャリア開発を“民主化”するのに役立っている」とマイロン氏は述べる。機械学習などのAI技術を綿密な分析と組み合わせ、民族的背景や年齢、性別などに対する偏見(バイアス)がアルゴリズムに混入しないようにしているという。
OTMは2020年春から世界規模で稼働し始めており、現時点では4万5000人を超える従業員が積極的にOTMに参加している。マイロン氏によれば、「コロナ禍によってOTMのサービス開始が早まった」。 メンターとして従事する従業員も4000人を超え、そのうちの5分の1近くが遠く離れた地にいるSchneider Electricの従業員とつながり、メンター関係を結んでいる。
目標は、社内の求人掲示板をはるかに超える全社規模の「ギグエコノミー」(Gig Economy:インターネット経由で単発や短期の仕事を請け負う働き方)を社内で実現することだとマイロン氏は述べる。これまでSchneider Electricは 、パンデミック中に約2000人の従業員を社内のギグ、つまりプロジェクト業務にマッチングさせてきた。社内人材の流動性はSchneider Electric全体で引き続き高まっている。それに伴い、需要の少ない分野から需要の多い分野へと従業員を迅速に移動できることがメリットだ。
Schneider ElectricはOTMを使用することで、従業員のキャリアアップを目に見えるようにした。会社自体の俊敏性も高まり、新たな働き方に速やかに適応できるようにもなった。
後編「“コロナ鬱”をITでどう防ぐのか? 会計事務所やRPA企業に聞く」は、従業員の心身の健康を守るためにITを生かす企業の取り組みを紹介する。
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