「SAP S/4HANA」移行のメリットと検討すべきポイント【後編】
S/4HANA移行の2大手法「グリーンフィールド」「ブラウンフィールド」の違い
「SAP ECC」から「S/4HANA」への移行を成功させるためには、何をすべきなのか。検討したい2つの手法「グリーンフィールド」「ブラウンフィールド」と、移行先インフラを検討する際の勘所を説明する。
SAPの統合業務(ERP)パッケージ「SAP ERP Central Component」(ECC)のサポートが2025年に終了する。企業は後継製品である「SAP S/4HANA」への意向を迫られている。前編「SAPが語る『SAP ECC』と『SAP S/4HANA』の違いとは?」では、SAP担当者の話を基に、S/4HANA独自のメリットについて説明した。後編に当たる本稿は、移行計画を立てる際に検討したい移行手法と、S/4HANAを運用するインフラの選定について説明する。
S/4HANAへの移行手法「グリーンフィールド」「ブラウンフィールド」とは
SAPはS/4HANAへの移行手法として「グリーンフィールド」を想定している。これは既存のデータ処理のプロセスや単純化モデルをそのまま利用し、既存環境の変換はしない移行手法だ。
グリーンフィールドでは、大幅に変更したアドオンはそのままでは移行できないが、データクレンジングを支援するビジネスプロセスやツールは移行できる。そのためグリーンフィールドは「経済的に好ましい移行手法の選択肢になる」と、SAPでS/4HANA移行の責任者を務めるビョルン・ブレーマー氏は語る。
ブラウンフィールドが有力な選択肢になる場合も
移行事例の増加に伴い、ECC環境の全てを撤去して新規にS/4HANAのインフラを構築するグリーンフィールドが、どのような状況でも必要になるとは限らないことが分かってきたとブレーマー氏は説明する。
中小規模の企業にとっては、全てのカスタマイズや設定をそのままS/4HANAに移行する「ブラウンフィールド」という移行手法が明確な選択肢になる。ただしヘルスケア業界や自動車業界の大規模企業は、ECCのカスタムオブジェクトを大量に抱えており、ブラウンフィールドの難易度が高い。そのためグリーンフィールドによる移行を選ぶことになるとブレーマー氏は言う。
インフラの準備も重要に
組織にとってはビジネスケースが最も重要だ。S/4HANAを価値あるものにするには、インフラの選定も必要になる。例えばS/4HANAをクラウドに導入するのであれば、「Microsoft Azure」「Amazon Web Services」(AWS)、「Google Cloud Platform」といった主要クラウドサービス群のいずれかから選ぶことになるのが一般的だ。「これらの主要クラウドサービス群のいずれかを選ぶのなら、それらの評価のためにする作業はたくさんある」と、ITコンサルティング会社のUpperEdgeで顧客担当顧問プラクティスリーダーを務めるレン・ライリー氏は言う。
例えばインフラをクラウドに移行する企業は、S/4HANAを社内で運用することも、サポート対象のマネージドサービスを利用することもできる。S/4HANAの運用プロセスや戦略では、クラウドベンダーが提供するサービスの利用についても検討が必要だとライリー氏は指摘する。
重要なのは、ECCのサポート終了期限の2025年が延期されることはなく、S/4HANAへの移行に残された時間は、2019年現在で6年しかないことだ。ライリー氏によると、企業はこの期限を踏まえて、システムインテグレーターや社内の関係者を巻き込んで現実的な手段を考えるべきだという。
S/4HANAへの移行の成功を願う企業は、買収・合併やデジタル変革などの移行を余儀なくされる状況が起きるのを待っていてはいけない。SAPがサポート終了期限を延長することを期待してもいけない。移行に伴うコストや事業への影響に備えて調整し、移行プロジェクトを推進する必要がある。
移行方法は自社で使用しているカスタムオブジェクトやカスタムコードに左右される。ただし6年あれば、既存の環境を評価し、ビジネスモデルを構築して、プロジェクトの成功に必要なサービスやパートナーを決めるのには十分だ。
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「SAP S/4HANA」移行のメリットと検討すべきポイント
「SAP ECC」のサポート期限である2025年が迫っている。まだ「SAP S/4HANA」への移行を迷っている企業が、移行計画を立てるときに検討しておきたいポイントを説明する。
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