「クラウドファースト」を具現化するウェザーニューズ【第4回】
ウェザーニューズが「脱クラウド」「オンプレミス回帰」を選ばない明確な理由
クラウドファーストの方針に基づき、クラウドサービスを積極的に活用するウェザーニューズ。先駆的なクラウドユーザーの間で進む「脱クラウド」「オンプレミス回帰」の波には乗らないと同社は言い切る。その理由は。
気象情報大手のウェザーニューズは、インフラの選定においてクラウドサービスを最優先とする「クラウドファースト」をスローガンとして、社内のインフラへのクラウドサービスの採用を推し進めている。同社が気象データ提供クラウドサービス群「WxTech」(ウェザーテック)サービスのインフラとしてAmazon Web Services(AWS)の同名クラウドサービス群を利用していることは、第1回「ウェザーニューズが気象サービス『WxTech』構築で直面したインフラ面の課題とは」と第2回「ウェザーニューズが『WxTech』のインフラに『AWS』を選んだ“あの理由”」、第3回「ウェザーニューズが実践 『AWS』を安心して安く使う工夫とは?」で紹介した通りだ。ただし「Google Cloud Platform」(GCP)のクラウドデータウェアハウス「BigQuery」など、一部の用途ではAWS以外のクラウドサービスも利用している。
欧米企業を中心に、一度クラウドサービスに移行させたシステムを再びオンプレミスインフラに戻す「脱クラウド」「オンプレミス回帰」の動きがある。ウェザーニューズでWxTechサービスの開発責任者を務める出羽秀章氏は、こうした動きがあることを認識しつつも、「脱クラウドに取り組むことは考えておらず、クラウドファーストの方針に変わりはない」と話す。それはなぜなのか。
ウェザーニューズが「脱クラウド」を選ばない“あの理由”
クラウドベンダーはIoT(モノのインターネット)や機械学習といった新技術をクラウドサービスとして積極的に提供している。「クラウドサービスを利用することで、新技術をいち早く取り入れながらシステム開発にかかる時間を短縮し、新サービスの企画に専念できるようにする狙いがあります」と出羽氏は説明する。
ウェザーニューズが提供する気象サービスは、雨や台風など悪天候の日ほどアクセス数が増加する傾向がある。こうしたサービスのインフラとしてクラウドサービスを利用することで、気象サービスのユーザーの利用状況や天気に合わせてインフラの拡張と縮小が可能な点も、同社がクラウドサービスの採用を推し進める理由の一つだ。
防災情報に関するサービスを手掛けていることから、ウェザーニューズはインフラの選定において対災害性も重視している。地理的に離れた複数のデータセンターを利用できるクラウドサービスであれば、災害によるハードウェアの停止リスクを低く抑えられる点も評価している。
既存のオンプレミスシステムもクラウド移行が既定路線 ただし課題も
ウェザーニューズはクラウドサービスで一から新規開発したWxTechサービスのシステムだけでなく、オンプレミスインフラで構築したシステムも、クラウドサービスに移行させることを基本方針としている。インフラの運用コストやシステムのスケーラビリティの面でクラウドサービスが適している場合はもちろん、特殊な要件のシステム以外は原則としてクラウドサービスを選択する。
オンプレミスインフラに構築した仮想マシンをそのままAWSに移行させようとすると、場合によってはデータの通信量や仮想マシンの台数が増大し、「移行が現実的ではないレベルでコストが増大することがある」と出羽氏は言う。そのようなシステムでクラウドサービスのコストメリットを享受するには、データ転送やリソースの使用量を効率化させた『クラウドネイティブ』なアーキテクチャに作り替える必要がある。「そのためにかかるコストや時間と、クラウドインフラに移行することで得られるメリットをどう評価するかが今後の課題です」(出羽氏)
ウェザーニューズは提供開始当初から、クラウドネイティブなサービスとしてWxTechサービスを開発している。新技術の導入やインフラの拡張が容易なクラウドサービスの特性を生かし、今後は機能面の強化や新サービスの開発に注力する方針だ。
WxTechサービスの機能であり、人工知能(AI)技術を使って自然災害に起因する停電のリスクを予測する「停電リスク予測API」に関して、ウェザーニューズは予測精度の改善を進めている。現状では5キロ四方のメッシュでデータを取得しているが、「データ処理アルゴリズムの改善を進めることで、将来的には1キロ四方のメッシュでのデータ取得を可能にしたいと考えています」と出羽氏は説明する。「こうした施策を通して、WxTechサービスをより多くの企業のニーズにお応えできるサービスへと育てていきたいと考えています」(同氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー