ウェザーニューズが気象サービス「WxTech」構築で直面したインフラ面の課題とは「クラウドファースト」を具現化するウェザーニューズ【第1回】

気象データを提供する「WxTech」サービスを構築する上で、ウェザーニューズはインフラに関する“ある課題”に直面した。それは何だったのか。

2021年07月28日 05時00分 公開
[吉村哲樹]

 気象情報大手のウェザーニューズ。インターネット配信の気象情報番組「ウェザーニュースLiVE」や、気象情報を配信するWebサイト「ウェザーニュース」などの一般消費者向けのサービスに加え、航空気象や海上気象、電力気象といった、さまざまな業界に特化した気象情報を提供するB2B(企業間取引)サービスにも力を入れている。

気象データをAI分析することで停電リスクを予測する「停電リスク予測API」

 ウェザーニューズは「停電リスク予測API」の提供を2021年2月に開始した。これは同社が保有する膨大な量の気象データや停電データを人工知能(AI)技術で分析し、自然災害に起因する停電のリスクを予測するクラウドサービスだ。同社は過去に観測した風速などの気象データと地形データ、モバイルアプリケーションを利用するウェザーニュース会員から集めた停電情報を基に予測モデルを開発。これを基に気象予測データからエリア別の停電予測を割り出し、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を通じてユーザー企業に提供する(図1)。

図 停電リスク予測APIのサービス提供の仕組み(出典:ウェザーニューズ資料)《クリックで拡大》

ウェザーニューズが直面したインフラ面の課題とは

 ユーザー企業は停電リスク予測APIを利用することで、台風の到来に備え、あらかじめ店舗の休業や流通の遅延・休止の手配、工場の操業停止といった措置を取れるようになる。停電予測データと連動して動作するスマート家電製品など、新たな付加価値を備えた製品・サービスの開発への応用も可能だ。例えばパナソニックは同社の家庭用燃料電池「エネファーム」と停電リスク予測APIを連携させ、停電に備えてエネファームの準備運転を自動実行するサービスを提供している。

 停電リスク予測APIは、ウェザーニューズが2020年6月に提供を始めた気象データ提供クラウドサービス群「WxTech」(ウェザーテック)サービスの一機能という位置付けだ。同社はそれ以前からユーザー企業に対して気象データ提供サービスを展開していたが、かつてはサービスの提供範囲が限られていたという。

 ウェザーニューズが以前から提供している企業向けの気象サービスは、自社開発したオンプレミスのシステムで実現している。これらの気象サービスを提供する際、同社はユーザー企業の要件に合わせてハードウェアの調達やシステムの構築を実施する。そのため気象サービスの提供開始までに時間がかかるだけでなく、ピークに合わせたインフラ構築が必要なためスモールスタートが難しい。そのため「ユーザー企業は大企業がほとんどで、中小企業やベンチャー企業にご利用いただくのが難しいという課題がありました」と、同社でWxTechサービスの開発を率いる出羽秀章氏は話す。


 こうした課題に対処できるインフラとしてウェザーニューズが選んだのが、Amazon Web Services(AWS)のクラウドサービス群だ。なぜ同社はAWSを選んだのか。第2回では、その理由を明らかにする。

変更履歴(2021年7月28日12時23分)

記事掲載当初、ウェザーニューズが運営するインターネット配信の気象情報番組名を「おは天」と記載していましたが、正しくは「ウェザーニュースLiVE」です(おは天は2012年3月に終了しています)。おわびして訂正します。本文は修正済みです。

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