2021年08月10日 05時00分 公開
特集/連載

ウェザーニューズが実践 「AWS」を安心して安く使う工夫とは?「クラウドファースト」を具現化するウェザーニューズ【第3回】

ウェザーニューズは「AWS」を利用し、気象データを提供する「WxTech」サービスを運用している。AWSの“ヘビーユーザー”である同社は、AWSの利用コスト抑制のために、どのような工夫を取り入れているのか。

[吉村哲樹,著]

 ウェザーニューズは、気象情報を配信する「WxTech」(ウェザーテック)サービスのシステムに、クラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)を採用した。前回「ウェザーニューズが『WxTech』のインフラに『AWS』を選んだ"あの理由"」に続く本稿では、同社がWxTechサービスの運用に利用するAWSサービスや、AWSのコストを抑制するために実践しているノウハウを紹介する。

WxTechサービスの運用にAWSの各種機能を活用

 WxTechサービスのインフラ構築に当たって、ウェザーニューズは構築・運用の手間やコストをなるべく抑えるために、ユーザー企業側でインフラの運用や監視が不要なマネージドサービスをできるだけ活用する方針を決めた。例えば外部に公開するAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)の管理にはAPI管理サービスの「Amazon API Gateway」を、そのバックグラウンドで稼働する気象データ処理システムにはイベント駆動型コード実行サービスの「AWS Lambda」を、データベースにはユーザー企業側でのデータベース用サーバの管理が不要なマネージドNoSQLサービス「Amazon DynamoDB」を採用し、運用負荷を抑えた。ネットワークにもWAF(Webアプリケーションファイアウォール)サービスの「AWS WAF」や、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)サービスの「Amazon CloudFront」といったマネージドサービスを活用している(図)。

図版 図 WxTechのシステム構成(提供:ウェザーニューズ)《クリックで拡大》

 ウェザーニューズはWxTechサービスの機能として、人工知能(AI)技術を使って自然災害に起因する停電のリスクを予測する「停電リスク予測API」を提供している。同社はこの停電リスク予測APIの要となる予測モデルを自社開発し、仮想マシンサービスの「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)で稼働させている。

ウェザーニューズが実践 AWSコストを抑えた“あの工夫”

 将来的にウェザーニューズは、必要に応じてAIモデル構築のマネージドサービスを導入することを検討している。既にAWSの「Amazon SageMaker」といったAIモデル構築サービスの評価を進めているという。「データ処理の精度や速度、コスト効率などのバランスを考慮しながら、自社開発とマネージドサービスの双方を最適な形で組み合わせたいと考えています」と、同社でWxTechサービスの開発を率いる出羽秀章氏は話す。

 予測モデルが生成した予測データを保存するデータベースとして、ウェザーニューズはAWSのオブジェクトストレージサービス「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)を利用している。データ入出力の速度の点ではAmazon S3よりもAmazon DynamoDBの方が有利だった。なぜ同社はAmazon S3を選んだのか。

 停電リスク予測APIを運用するには、ウェザーニューズは日本の国土を37万個のメッシュ(網目のように配置した区画)に細かく分割し、それぞれの予測データおよび過去データを管理する必要がある。気象データを1レコードずつAmazon DynamoDBに入出力すると、膨大なコストがかかると同社は試算した。そこでこれらのデータを独自のバイナリデータ形式(テキストデータではないデータ形式)に変換した後、大容量データを安価に保存できるAmazon S3で管理することにした。

 データの読み取りと書き込みの速度を維持するために、ウェザーニューズはさらに工夫を重ねた。「コストを抑えることも大事でしたが、顧客に短時間でレスポンスを返して、快適に使っていただくことも重要でした」と出羽氏は話す。コストとレスポンスのバランスをうまく取るために、同社はデータを独自のバイナリデータ形式でAmazon S3に保存するとともに、データを読み取る際は特定の範囲のみを対象にするよう処理を工夫した。

 AWSの利用コストを削減するための工夫は他にもある。例えばウェザーニューズはAmazon EC2の料金モデルとして、1年間もしくは3年間の長期契約を締結する代わりに、利用料金が安くなる「Savings Plans」を採用した。バックエンド処理に利用するAWSのコンテナ管理サービス「AWS Fargate」は、その時点で空いているリソースを利用することでサービス利用料金を安価に抑えられる「AWS Fargate Spot」という料金モデルを一部で採用し、コスト削減を図った。

 ウェザーニューズは、AWSがユーザー企業のビジネス成果創出を支援する「AWSプロフェッショナルサービス」を利用し、AWSの担当者との定例会で毎月の利用コストの詳しい報告を受けている。こうして定期的に利用コストを細かく可視化することで、AWS利用コストの最適化を図っていると出羽氏は説明する。


 AWSを中心に、クラウドサービスを積極的に活用するウェザーニューズは、オンプレミスインフラではなくクラウドサービスを優先して使う「クラウドファースト」をスローガンにしている。その背景には何があるのか。第4回で詳しく説明する。

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