「AWS」導入の医療機器メーカー 人工呼吸器を1日6台から750台へ大増産できた訳「AWS」が支えたコロナ禍の人工呼吸器生産【前編】

人工呼吸器メーカーのVyaire Medicalは、自社のデータを一元管理するシステムを「AWS」で構築した。新型コロナウイルス感染症によって人工呼吸器の需要が急増したときに、このシステムはどう役に立ったのか。

2021年02月12日 05時00分 公開
[Eric AvidonTechTarget]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)で、人工呼吸器メーカーのVyaire Medicalは深刻な人工呼吸器不足に直面した。同社が人工呼吸器の増産態勢を整えなければ、患者の命に関わる。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した患者と、これから感染する可能性のある患者の治療に備えている。

Amazon Redshiftで12個のデータソースを一元管理

 米イリノイ州に拠点を置くVyaire Medicalは、2019年初頭にデータ駆動型の文化を構築する作業に着手していた。サイロ化されたデータを一元管理するためのデータベース管理システムとデータ分析システムを構築するために、同社はAmazon Web Services(AWS)の同名クラウドサービス群を活用した。AWSで構築したデータ分析システムは、同社が人工呼吸器の需要の急増に応じるときの重要な指針となった。

 2020年3月以前、Vyaire Medicalが1日に生産する人工呼吸器の標準台数は6台だった。今回のパンデミックによって、1日の生産台数を750台に増やす必要に迫られた。

 Vyaire Medicalで分析とエンタープライズデータプラットフォームのシニアディレクターを務めるゴパール・ラマムルティ氏は、AWSが2020年12月に開催したオンラインユーザーカンファレンス「AWS re:Invent」の分科会セッションに登壇した。セッションでラマムルティ氏は、Vyaire Medicalは「人工呼吸器の増産態勢を迅速に整える必要があった」と強調した。「当社がこのビジネスを引き受けたいかどうかではなく、人命に関わる問題だった。やらないという選択肢はなかった」(同)

 COVID-19の拡大が本格化する約1年前の2019年初頭に、Vyaire MedicalはAWSの協力を得て「Project Insight」というプロジェクトに取り組んでいた。Project Insightの目的は、買収を重ねたVyaire Medicalが保有する12個にも及ぶデータソースを単一のデータ分析システムに統一し、意思決定を場当たり的からデータ駆動型に変えることだった。

 Vyaire Medicalは、データウェアハウス(DWH)に「Amazon Redshift」、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールに「Amazon QuickSight」、データ検索と分析エンジンとして「Amazon Elasticsearch Service」などのAWSサービスを導入した。COVID-19が拡大して人工呼吸器の需要が急増したときも、新しいデータ分析システムによって精度の高い需要予測が効率的にできるようになった。

 AWSでプリンシパルソリューションアーキテクトを務めるジョシュア・カーン氏によると、Vyaire MedicalはProject Insightで収集したデータを活用した。Vyaire MedicalはAWSで構築した分析ツールと機械学習ツールによって意思決定のプロセスを変えて「人工呼吸器の生産能力を迅速に向上させることに成功した」とカーン氏は言う。

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