新型コロナウイルス感染症患者を受け入れるために、米国のある医療機関は休止状態だった古い病院を2週間で改装し、陽性患者の受け入れ態勢を確立した。短期間で業務を可能にした秘策とは。
「2020 Physician and CIO Forum」では、最高情報責任者(CIO)および最高医療情報責任者(CMIO)などの医療IT専門家が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連する大量の検査および治療プロセスを処理するシステムをどのように構築したかについて講演した。2020 Physician and CIO Forumは、電子カルテ(EHR:電子健康記録)ベンダーMedical Information Technology(MEDITECH)が2020年9月に開催したオンラインカンファレンス。登壇した医療IT専門家はいずれもMEDITECHの顧客だ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)はまだ続いているが、医療IT専門家は2020年の春から初夏にかけて何が功を奏したかを把握しつつある。前編となる本稿は講演内容を基に、IT部門スタッフの活用が功を奏した事例を紹介する。
米国の医療機関Phoebe Putney Health SystemはCOVID-19パンデミックの初期に、休止状態だった古い病院を改装してCOVID-19陽性患者を収容する75床の病院にした。改装に掛かった期間はわずか2週間だった。同機関はこの地域における患者の急増を予測していたのだ。
Phoebe Putney Health SystemのCMIOで医学博士のウィリアム・シューエル氏は、同機関のIT担当およびEHRの専門家による強力なチームが、このような短期間での業務を達成した成果を強調する。「チームがプロジェクト管理と運用の豊富な経験を持ち、新しい病院を一から設立するために必要なスキルを備えていた他、新しいスタッフが医療機関のシステムを理解して精通しようと努めたことが要因だ」とシューエル氏は語る。同氏によると、場所を移転したり新しい場所に設立したりする場合は、それを実行できる経験豊富な人員が必要で、直ちに実行できるスピード感も重要だ。
新しい病院にITインフラを構築し、在宅でも患者の治療を継続できるようにそのインフラを管理するには「強力なチームが不可欠だ」と、Phoebe Putney Health SystemのCIOであるジェシー・ディアス氏は述べる。ディアス氏によれば、同機関の上級管理職はほとんどの医療機関と同様に、パンデミックの早い段階で医療従事者が在宅勤務に移行することを決定したという。
上級管理職は迅速に意思決定し、即座にパンデミックに対処しなければならなかったとディアス氏は振り返り、「何もかもITに依存していたので、社内に強力なIT部門があったのは幸運だった」と同氏は語る。IT部門の待ち時間があると、患者の治療に影響が出るからだ。
後編は2020 Physician and CIO Forumの講演内容を基に、導入済みのシステムを有効活用したカナダの医療機関の事例を紹介する。
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