英国ロンドンのサットン区は、区民向けの介護サービスにおけるIT活用を推進するために、Medequip Assistive Technologyと契約を締結。同区が「デジタル介護」の強化を目指す理由とは。
英国ロンドンのサットン区は、ITを活用した介護サービスを提供するMedequip Assistive Technology(Medequip Connectの名称で事業展開)と5年契約を締結した。この契約に基づき、サットン区が管理していた介護サービスのITサポートをMedequip Connectが引き継ぐことになる。
サットン区が遠隔介護サービスに採用していた従来のネットワークは、アナログ回線だった。2025年までに英国全土の電話回線がアナログからデジタルに切り替わる計画があり、同区はアナログ回線のままではサービスの信頼性と安全性に重大な影響を及ぼす可能性を懸念していた。
Medequip Connectとの契約を通じて、サットン区は介護利用者の自宅にデジタルデバイスを配備し、介護サービスの仕組みをデジタル化する。利用者がこのデバイスのボタンを押すと、デバイス内蔵のSIMカード経由で警報が受信センターに届く仕組みだ。同区で使われている介護関連のアナログ機器は、全面的にデジタル機器に置き換わることになる。
サットン区がこの事業の入札を開始したのは2022年8月のことだった。当初の入札公告によると、この事業の目標は、革新的かつパーソナライズされた予測型のデジタル介護サービスを実現することと、それを実現するパートナー企業を見つけることだ。デジタル介護サービスを実現する上で、以下の取り組みが前提になっていた。
サットン区民委員会委員長を務めるマリアン・ジェームズ氏は、「サットン区はあらゆる年齢層の住民を支援する“野心的”な目標を掲げている」と話す。Medequip Connectの新しい介護サービスについては、「問題が生じた場合にすぐ警報を受け、最適な支援を迅速に提供することに役立つ」と、ジェームズ氏は評価する。
英国政府は2023年4月、ソーシャルケア(注1)のデジタル化を推進するために約1億ポンドを投じることを発表した。この資金は2025年までに「Digital Social Care Records」(ソーシャルケア記録のデジタル化)をはじめとする施策に費やされる。同じく英国政府が発表した「Better Care Fund」という制度では、ソーシャルケアのサービス向上に168億ポンドを配分することを目指している。
※注1 英国の「ソーシャルケア」は、高齢者や障害者、乳幼児などに対する社会福祉制度のこと。
2022年3月に英国保健・社会ケア大臣のサジド・ジャビド氏(当時)は「2024年までに介護事業者の80%を、紙ベースの記録から脱却させる」という政府目標を設定した。英国政府はこの取り組みによって、介護職員が要介護者を支援するために必要とする情報の全てを、デジタル化することを目指している。
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