企業のバックアップにおいて「3-2-1ルール」の採用が広がる中で、クラウドサービスの重要性が高まりつつある。クラウドサービスが重要になる背景には、何があるのか。
近年、さまざまな企業がバックアップの「3-2-1ルール」を採用するようになった。バックアップツールベンダーCommvault Systemsで東南アジア諸国連合(ASEAN)、日本、韓国、中国本土担当ソリューションエンジニアリング責任者を務めるダニエル・タン氏は、「3-2-1ルールにおいて、クラウドサービスが重要な役割を果たすようになっている」と話す。背景に何があるのか。
一般的に3-2-1ルールは、本番データ以外に2つ以上のコピーを作成し、データの保管には2種類の記録媒体を使い、バックアップのコピーの1つは本番拠点とは異なる拠点に置くことを意味する。「迅速に復旧できるようにしつつ、特定の機能の停止によってシステム全体が止まってしまう『単一障害点』(SPOF)を回避することに役立つ」とタン氏は述べる。
企業が3-2-1ルールを採用するに当たって、近年重要な役割を果たすようになっているのがクラウドサービスだ。企業がクラウドサービスを評価する主な理由は、複数のリージョン(データセンターが存在する地域)やゾーン(リージョンを細分化した単位)を使って冗長性を確保したり、リソースの拡張性を確保したりできるからだ。
例えば企業は、バックアップデータを定期的にクラウドサービスに転送し、ネットワークを切り離すことで、他のシステムから隔絶してデータの安全性を確保する「エアギャップ」を設けることが可能だ。これにより、サイバー攻撃からデータを効果的に保護できる。
「クラウドサービスは、3-2-1ルールを採用する企業にさまざまな選択肢を提供する」と話すのは、ストレージベンダーNetAppでアジア太平洋地域のクラウドアーキテクチャ担当CTO(最高技術責任者)を務めるマット・スインボーン氏だ。例えばイテレーション(短期間で繰り返す開発サイクルの単位)を実施しやすくすることにもクラウドサービスが役立つという。
他にも、バックアップの保存先にクラウドサービスの2つの異なるデータセンターを使用すれば、異なるコントロールプレーン(制御機能)を使用でき、管理方法を分離できる。管理者権限を複数に分けることは、サイバー攻撃からの保護を強化することにつながる。
第3回は、3-2-1ルールが一段と重要になりつつある背景を解説する。
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