ServiceNowが“AIエージェント元年”に提供する最新リリース「Yokohama」を解説AIプラットフォームと次世代CRMに重点

ServiceNow Japanはさまざまな業務を支える「NowPlatform」の共通プラットフォームとしての強みを生かし、AI活用や次世代CRMなど、部門横断的に活用される機能の強化に取り組む。

2025年04月09日 10時15分 公開
[渡邉利和]

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 2025年4月2日に2025年度の事業戦略を説明したServiceNow Japan。同社が提供する「ServiceNow」は、IT運用を中核に企業内のさまざまなプロセスの実行を支援するクラウドサービスだ。「NowPlatform」と呼ばれる単一のプラットフォーム上にIT、運用、カスタマーサービス、HR、シェアードサービス、ファイナンス(バックオフィス)、業種別ソリューションなどのさまざまなアプリケーションが構築されている。

 ServiceNow Japanの鈴木正敏氏(執行役員社長)は、2024年度の業績がグローバルと日本国内で共に好調だったとした上で、2025年度の重点取り組み項目として「AIプラットフォーマーとしての進化」と「“次世代CRM”~お客さま体験の革新」の2点を取り上げた。

「AIを業務に深く浸透させる」ための進化

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写真 ServiceNow Japanの鈴木正敏氏

 鈴木氏はまずAIに対する取り組みに関して、「AIを始めとしたデジタルテクノロジーの活用については、それを課題解決のための守りの施策ではなく、ここを起点としてデジタル変革や日本企業および日本社会のトランスフォーメーションにつなげていく、そういった攻めに転じるチャンスではないかと考えている」と語った。

 加えて同氏は「AIが人の仕事を奪うと言われた時代はもう一昔前」と断じ、「今は人とAIの協働が共通見解である」との認識を示した。その上で同社のAIに対する取り組みの優位性を示すメッセージとして「AI is only as powerful as the platform it's built on.(AIの真価を引き出すのは、基盤となるプラットフォーム。)」を紹介。NowPlatformを基盤とする同社のアーキテクチャがAI導入にも有利に働くとした。

 いかにAIの機能を業務に深く浸透させて使っていくかが重要だと鈴木氏は強調した。AIの機能をサイロに陥った個々の業務に活用するのではなく、さまざまな関係者や関係部門が関わる大きな業務プロセスの各所で使えるかといったところだ。「そのときに重要なのはまさにプラットフォーム。ServiceNowはデジタルワークフローという言葉に代表されるように、そもそも業務やオペレーションプロセスをつないでいくプラットフォームであり、ここに生成AIの機能を載せていくことが、企業活動においてAIの価値や効果、ベネフィットをスケールさせていく大きなポイントであると思っている」(同氏)

 次世代CRM(顧客関係管理)については、従来型のCRMが顧客接点の管理に特化していたのに対し、同社の次世代CRMはミドルオフィスからバックオフィス業務まで含めたエンドツーエンドのプロセス管理と実行によってシームレスな連携と優れた従業員体験が実現でき、その結果、顧客対応に関してもリクエストへの迅速な対応や解決が実現できるとしている。バックオフィス業務も全て同一のプラットフォーム上に構築され、連携できていることを生かした取り組みだと言えるだろう。

 鈴木氏は「今急にこれをやり始めたということではなく、既に約10年に渡ってカスタマーサービスマネジメントやフィールドサービスマネジメントなど、CRMの主たる領域で多くのお客さまをサポートしてきている実績がある」と紹介。競合のCRM専業ベンダーと比べるとさほど長い歴史とは言えないまでも、既にGartnerの調査レポート「Magic Quadrant」の「CRM Customer Engagement Center」では2024年にリーダーの一社に位置付けられているなど、高評価を得ていることを強調した。

最新リリース「Yokohama」

写真 ServiceNow Japanの原 智宏氏

 Now Platformは年に2回、第1四半期と第3四半期にそれぞれメジャーリリースが行われている。2025年第1四半期にリリースされた「Yokohamaリリース」について、ServiceNow Japanの原 智宏氏(常務執行役員 COO<最高執行責任者>)が概要を紹介した。

 現在のリリース名はアルファベット順の頭文字の都市名を付している。2025年第3四半期に予定される「Z」(Zurich:チューリッヒ)リリースで都市名シリーズは終了し、次は「A」(Australia)に戻って国名シリーズが始まる予定だ。原氏は「T」がTokyoリリースと呼ばれたことを踏まえ、「比較的短期間に日本の都市名が複数使われたことも、日本のマーケットへのコミットメントと位置付けの強化の一つの表れ」だとの認識を示した。その上で同氏はYokohamaリリースの主な強化点として「AI Agents」「Workflow Data Fabric」「AI Agent Studio」「セルフサービスポータル」を挙げた(図)。

画像 図 Now Platformの最新リリース「Yokohama」(提供:ServiceNow Japan)《クリックで拡大》

 全体的にAI関連の機能強化が目立つ状況だが、原氏はこの背景として「組織における優先課題をどのように解決していくのか、そしてビジネス成果をできる限り短い時間の中で享受していくために、今AIをどのように人と協働させていくのかという点から来たものだ」と説明した。同氏は2025年を「AIエージェント元年」と位置付け、「人が業務の中でAIを利用していくというステージから、AIが主体的に行なっていく業務を人が管理監督していくというステージへと、われわれのAIの提供形態も変化していく」とした。Yokohamaリリースでは、AI AgentsとしてプリビルドのAIエージェントが提供されるとともに、AIエージェントの構築・設定ツール「AI Agents Studio」も提供され、ユーザー企業が独自のAIエージェントをセットアップできる環境も用意している。

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