Dynatraceが機能拡充を発表 監視にとどまらない「可観測性」の新機能とは?AI機能やCSPMなど3つの新機能を追加

Dynatraceは、2025年2月に米国で開催された年次イベントで発表した新機能に関する国内向け説明会を開催した。従来の運用監視の枠を超える新機能群が提供され、ツールのカバレッジが拡大した。

2025年03月31日 07時00分 公開
[渡邉利和]

関連キーワード

人工知能 | ログ管理 | 運用管理


 Dynatraceは2025年3月26日、オブザーバビリティ(可観測性)ツール「Dynatrace」の一連の機能強化を発表した。根本原因分析機能を含むAI(人工知能)エンジン「Davis AI」の大幅な機能強化を図る他、開発者にランタイムインサイトとトラブルシューティング機能を提供する「Observability for Developers」、クラウドセキュリティを強化する「CSPM」(Cloud Security Posture Management:クラウドセキュリティ態勢管理)機能を追加する。

監視にとどまらない「可観測性」の3つの新機能とは

会員登録(無料)が必要です

 今回の機能拡充は、米ネバダ州ラスベガスで2025年2月3~5日に開催されたDynatraceの年次イベント「Dynatrace PERFORM 2025」で発表されたものだ。新機能の詳細は次の通り。

Davis AIの機能強化

 オブザーバビリティ製品と位置付けられるDynatraceは、AI技術を広範に活用してシステムの運用管理を支援する。中核となるDavis AIには、ログデータなどの過去の情報に基づいて将来予測をする「Predictive AI」(予測AI)に加え、同社の独自技術と位置付けられ、トポロジー情報に基づく依存関係から根本原因を自動的に特定する「Causal AI」(因果AI)、さらに自然言語によるやりとりを可能とする「Davis CoPilot Generative AI」(生成AI)の大きく3種のAIが含まれる。

 今回のアップデートで予防的な運用を実現するAIOps(AIを活用したIT運用管理)機能が強化され、「AIによる問題の説明と復旧案の提示」や「AIによる予防的運用」が実現した。AI関連機能としては「AIのオブザーバビリティ」も提供されており、AIアプリケーションを見える化してインフラからAIアプリエーション、フロントエンドまでのエンドツーエンドのオブザーバビリティが提供される。

画像 DynatraceのAI機能の中核を成す「Davis AI」(提供:Dynatrace)《クリックで拡大》

開発者向けのオブザーバビリティの強化

 Observability for Developersでは、従来運用管理担当者向けに提供されてきたオブザーバビリティを開発者向けに拡張するという新たな取り組みが行われた。オブザーバビリティやその前身となった「APM」(Application Performance Monitoring:アプリケーションパフォーマンス監視)はアプリケーションの性能劣化などの際に状況を把握し、どこでどのような障害が発生しているのかを突き止めて解決するためのツールとして活用されるが、AIを活用したトラブルシューティングおよびデバッグ機能を拡張する新アプリケーション「Live Debugger」によって開発者は問題の再現や再デプロイなどを必要とせず、ランタイム環境からリアルタイムのインサイトにアクセスできるようになるという。より迅速に問題が解決されることが期待される。

クラウドセキュリティの強化

 クラウドサービスなどでセキュリティ設定に不備がないかどうかを確認し、セキュリティ強化を支援するためのCSPMである「Dynatrace CSPM」により、セキュリティポートフォリオが拡大された。Dynatrace CSPMは既存の「Kubernetes Security Posture Management」(KSPM)の機能を拡張したもので、単一の統合プラットフォームを通じてクラウド全体のセキュリティ体制を管理できるようにする。

Dynatraceの強み

写真 Dynatrace代表執行役社長の徳永信二氏

 Dynatraceの代表執行役社長、徳永信二氏は同社のこれまでの歩みを紹介した。2005年にAPMベンダーとして創業した同社は、2016年に大きな転換点を迎えた。「ファンドが入り、過去のAPMの製品や技術をいったん置いて、全てを新たに作り直した」という。この刷新は同社の創業者兼CTO(最高技術責任者)のバーンド・グライフネーダー氏が主導し、同氏の戦略に基づいて製品を全て再構築した。その後日本市場には2021年に参入。徳永氏は2023年10月に代表執行役社長に就任し、国内での積極的な事業展開と体制強化を推進している。

 同社の強みは前述の独自開発のCausal AIなどの技術面での独自性にあると言えるが、さらに同社のビジョンとして「ソフトウェアが完璧に動作する世界を実現する」というゴールを目指して製品開発を進めているという点も「監視製品」として開発されている他のオブザーバビリティ製品との違いだという。オブザーバビリティという用語も耳慣れたものとなりつつあり、市場での認知も拡大しつつある中、同社の独自性が市場でどのように評価されるかが興味深い。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

事例 Datadog Japan合同会社

事例に学ぶ、複数のクラウドやアプリ環境を統合的にモニタリングする方法

SOMPO Light Vortexは、アプリケーションごとに使用するクラウド環境が異なり、これらを横断的かつ統合的にモニタリングすることが困難で、大きな課題と感じていた。これを解決すべく、同社が採用したアプローチとは?

事例 Datadog Japan合同会社

クラウドのスケーラビリティに追従、システム全体の高度なモニタリングの実現策

オンプレミス時代からのシステム監視運用工数の大きさが課題となっていたサイバーエージェント。そこで同社が、クラウドコンピューティング移行を進める中で導入した、クラウドやコンテナ環境に対応する、高度な監視ソリューションとは?

製品資料 SCSK株式会社

GUIで見える化を加速、複雑なジョブ管理運用も楽にする注目のアプローチとは?

ITシステム運用の自動化が進む一方、ジョブ管理の複雑化も加速しており、状況把握や障害予測に課題を抱える企業が増えている。そこで注目したいのが、ジョブの見える化と自動化を加速する、あるジョブ管理製品の最新バージョンだ。

製品資料 株式会社野村総合研究所

IT統制のジレンマ、「運用・開発の分離」「品質・効率の改善」をどう両立する?

システム運用と開発の“分離”は、IT統制の観点からも重要だが、その実践にはさまざまな課題が付いて回る。IT運用の品質や業務効率を改善しつつ、IT統制もバランス良く維持するためには、どのようなアプローチが有効だろうか。

製品資料 株式会社野村総合研究所

IT環境がハイブリッド化した現代なのに、なぜ“今こそ運用内製化”なのか

クラウドやオンプレミスに分散し、複雑化しているITシステム。これにより情報システム部門がシステム全体を管理することが難しくなり、アウトソーシングが一般的になった。ただ、こうした状況こそ内製化に取り組んだ方が良いという。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news253.jpg

「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...