新型コロナウイルス感染症拡大の影響で「COBOL」への関心が急激に高まっているという。それはなぜなのか。「Java」を使うエンジニアがCOBOLを学ぶ意義とは。有識者に聞いた。
IT部門が基幹システムを開発・運用する際のプログラミング言語として、汎用(はんよう)コンピュータで「Java」を使うようになる前は、メインフレームで「COBOL」を使うことが当たり前だった。今でも数々のメインフレームでCOBOLアプリケーションが動いている。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行をきっかけに、古い技術と現代の技術の分断があらためて浮き彫りになった。失業手当や緊急融資の申請を処理するための官公庁のシステムは、レガシーなCOBOLアプリケーションを使用するものが少なくない。
レガシーなCOBOLアプリケーションを現代のシステムに移行させるには何をすればよいだろうか。アプリケーションの動作を維持したままソースコードを書き直す「リファクタリング」の手法でJavaアプリケーションに変換しただけで、すぐに汎用コンピュータで実行できるようになるわけではない。COBOLアプリケーションを使用しているビジネスプロセス全体を見直し、レガシーシステムと新しい技術の関係を理解する必要がある。
JavaエンジニアがCOBOLの基本を理解することは、レガシーアプリケーションのモダナイゼーション(最新化)を始めるための第一歩だ。アプリケーション開発ツールベンダーSkuidの最高技術責任者(CTO)兼エンジニアリング担当バイスプレジデントのマイク・デュエンシング氏によると、COBOLアプリケーションを保守するスキルを持った人が退職してしまい、COBOLエンジニアの需要が高まっている。「若いエンジニアは新しいプログラミング言語を使おうとし、何十年も前のプログラミング言語を学ぶことには関心がない」(デュエンシング氏)
1959年、COBOLはエンジニア以外にも分かりやすいプログラミング言語を目指して開発された。COBOLはさまざまなベンダーのコンピュータで実行可能な最初期のプログラミング言語だ。データ基盤開発ツールを取り扱うSplice MachineでCEOを務めるモンティ・スウェーベン氏は「COBOLを学ぶことは楽しくはないが、簡単に学べる」と語る。
COBOLの基本構文は一般的な英語と同じような命令文で構成されている。非エンジニアが使用することを想定しているためだ。一方でメインフレームの動作を理解して使いこなすことは、非エンジニアにとって簡単ではない。
英国の私立大学BPP Universityで講師を務めていたグスタボ・ペッツィ氏は、オンライン教育サービス「Pikuma」を開設した。ベッツィ氏は若いプログラマーが就職先で直面する問題を肌で感じてきた。Royal Bank of Scotland(スコットランド王立銀行)などの銀行に就職した同氏の教え子は、銀行が依存しているCOBOLを日常業務で使わざるを得ないという。「メインフレームは現代のシステムのように寛容ではなく、若いJavaエンジニアが当たり前と思っていることができない場合がある」と同氏は説明する。
COBOLの基本が簡単でも、何年あるいは何十年も前からそのままで、かつ仕様書が残っていないソースコードを読み解く作業は骨が折れる。モダナイゼーションがなかなか進まないのはそのためだ。
そんな中、COBOLアプリケーションのモダナイゼーションを支援する自動化ツールが登場している。モダナイゼーションツールベンダーHeirloom Computingのクラウドサービスは、COBOLアプリケーションのソースコードを自動でリファクタリングして、Javaアプリケーションとしてコンパイルする。「Oracle Database」「IBM Db2」といったデータベース管理システム(DBMS)で扱っている古いデータベースや、メインフレーム用OS向けのデータアクセス方式「Virtual Storage Access Method」(VSAM)で記録された古いファイルは、手動で更新する必要がある。
企業は自社の状況に応じて、レガシーアプリケーションのままでこの難局を乗り切るのか、それともこれを機にモダナイゼーションを実施するのかを検討しなければならない。COBOLアプリケーションのモダナイゼーションにはさまざまな障害があるが、克服できないわけではない。COBOLはいずれ過去のものになるだろう。しかし今はまだ、JavaエンジニアがCOBOLを学ぶことにも意義がある。
IT製品選定に関する記事をご執筆いただく「読者ライター」を募集します。記事を通じて皆さまの経験やノウハウを共有してみませんか? 応募はこちらから↓
https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/2009/25/news11.html
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
多くの企業でオフィスDXが進む一方、現場にはアナログ業務が多く残りDXが進んでいない。現場DXを推進し、オフィスと現場のデータを活用するためにはどうしたらよいか。本資料では、ノーコード開発ツールを活用した解決策を紹介する。
工場や倉庫などの現場では、紙中心の業務が今も多く残っている。だが現場DXを進めようにも、人材や予算の不足、システム選定の難しさが障壁となっているケースは多い。この問題を解消する、モバイルアプリ作成ツールの実力とは?
ビジネスに生成AIを利用するのが当たり前になりつつある中、ローコード開発への活用を模索している組織も少なくない。開発者不足の解消や開発コストの削減など、さまざまな問題を解消するために、生成AIをどう活用すればよいのか。
急速に変化する顧客ニーズに応えるような適切な製品を継続的に提供するためには、より多くのアプリを生み出す必要があるが、そのための開発者が不足している。そこで注目されているのが、生成AIやローコード開発プラットフォームだ。
あらゆる組織は、従業員と消費者の双方に良質なエクスペリエンスを提供する義務を負っている。アプリ開発と高度な自動化は、この目的を達成するための有効策の1つだが、それぞれを適切に実装できなければ、むしろリスク要因ともなり得る。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。