COBOLの技術者不足が深刻化する中、COBOLで開発したシステムが稼働する組織で課題になっているのが、既存システムの維持や移行だ。別のプログラミング言語への移行は、必ずしも最適解にならないという見方がある。
プログラミング言語「COBOL」で構築したシステムが稼働する組織では、COBOLの技術者不足が深刻化している。別のプログラミング言語への移行が選択肢の一つになるものの、移行の妥当性を疑問視する見方もある。それはなぜなのか。COBOLで構築した仕組み(COBOL資産)を維持するには、どのような手法が有効なのか。
「COBOLの廃止は、必ずしも最善の策ではない」。こう話すのは、オランダ国立数学情報科学研究機関(CWI:Centrum Wiskunde & Informatica)の研究員と、アイントホーフェン工科大学の教授兼自動ソフトウェア分析の議長を務めるユルゲン・ビンジュ氏だ。
歴史的に金融業が盛んなオランダでは、20世紀半ばに大量のデータを処理できるシステムの導入が進んだ。システムの開発には、当時の主流言語だったCOBOLが使われた。COBOLは金融取引など安定した処理が求められるシステムに使われており、そのメリットを別のプログラミング言語への移行で実現できるとは限らない。「COBOLを廃止するよりも、既存システムの維持と最適化に重点的に投資すべきだ」とビンジュ氏は主張する。
CWIは、COBOL資産の維持とシステム最適化に役立つ技術開発に取り組んでいる。具体的には、2つの取り組みがある。
ドメイン固有言語(DSL)とは、特定のタスク向けに設計されたコンピュータ言語だ。DSLの例として、金融領域で使われる「RISLA」がある。RISLAは、金融商品を効率的に記述、実装するために開発されたDSLだ。プログラミングの深い知識がないユーザーでも、理解と操作がしやすい設計になっている。
金融専門家は、RISLAの専門的な記法や構文を使って、金融製品の契約条件や商品仕様を指定する。指定された内容を基に、RISLAのコードジェネレーターは自動でCOBOLのソースコードを生成する。ユーザーは、手作業で膨大量のCOBOLソースコードを書く必要がなくなるため、エラーの減少や一貫性の向上につなげられる。
DSLが生成するソースコードは、統一された形式で、厳格な標準に従って記載される。そのため、システム全体の品質が向上し、バグやシステム障害のリスクの低減が期待できる。「DSLを活用してシステムの管理性と保守性を強化すれば、システムの寿命は延びる」とヴィンジュ氏は話す。
リバースエンジニアリングとは、既存のソフトウェアの構造を分析し、動作の原理や設計を明らかにする手法だ。「リバースエンジニアリングを使えば、システムの開発者が引退してしまった場合でも、システムを詳細に理解できる」とヴィンジュ氏は言う。
リバースエンジニアリングで得た洞察は、システム構造の簡素化や、不要なコンポーネントの特定に役立ち、システム全体の効率化に貢献する。ソースコード内のパターンや関係性を明らかにすることで、システムのボトルネックや脆弱(ぜいじゃく)性を見えやすくすることも可能だ。
「レガシーシステムから、近代的なシステムへの移行は簡単ではない」とヴィンジュ氏は指摘する。特に、モダナイゼーションに伴う作業を外部委託する場合、完成したシステムは移行前よりも複雑で理解しづらいものになる、と同氏は考えている。
問題の本質は、システムに対する知識の不足にある。「われわれはCOBOL技術者が退職するまでに、その知識とスキルを次世代に継承する機会を十分に設けなかった」とヴィンジュ氏は指摘する。
ヴィンジュ氏によると、1980年代ごろから、教育機関における指導言語としてのCOBOLの使用率が減少している。当時、COBOLが時代遅れになるという認識があったからだ。これは結果的に、近年のCOBOL人材不足につながったと同氏は考える。この状況を改善するため、転職希望者を対象にCOBOL人材育成プログラムを提供する組織も存在する。
問題は、予算が適切に割り当てられていないことだ。「大規模なレガシーシステムの近代化は、短期的なスパンでは実現しない。10~15年スパンの長期的なビジョンが必要だ」とヴィンジュ氏はコメントする。「オランダにおけるCOBOLの未来は、政府や金融機関の投資意欲に大きく依存する」(同氏)
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