COBOLを使う「コボラー」が消えていく“深刻過ぎる代償”COBOL人材不足の危機【前編】

プログラミング言語COBOLの技術者が続々と引退していく中で、COBOLに精通した人材を見つけることが困難になっている。この状況が引き起こしている、深刻な問題とは。

2024年07月16日 08時00分 公開
[Kim LoohusTechTarget]

関連キーワード

金融 | 基幹システム | プログラミング


 プログラミング言語「COBOL」は半世紀近くにわたり、金融系や行政系をはじめとしてさまざまな重要システムを支えてきた。そのCOBOLに携わってきた世代の開発者は続々と引退し、COBOLに精通した人材を見つけることは困難になりつつある。そうした中でもCOBOLで構築したシステムが稼働を続け、ある深刻な問題を引き起こしている。

「コボラー」が消えていく“深刻過ぎる代償”

 「COBOLを用いたシステム構築は1960年代に始まった」。こう話すのは、オランダ国立数学情報科学研究機関(CWI:Centrum Wiskunde & Informatica)の研究員と、アイントホーフェン工科大学の教授兼自動ソフトウェア分析の議長を務めるユルゲン・ヴィンジュ氏だ。

 20世紀半ばに、コンピュータを用いた自動化がオランダで始まった。銀行や保険会社などの金融機関は、大量のデータを処理できるシステムを導入した。これらシステムの開発には、当時の主流言語だったCOBOLが使われた。

 「COBOLで開発したシステムは、過去数十年間で巨大化してしまった」とヴィンジュ氏は指摘する。市場のニーズや法規制など外部環境の変化にシステムを適応させるためには、定期的に新機能を追加したり、機能を改良したりすることになる。そうしてシステムを拡張する結果、ソースコードは指数関数的に増大する。

 システムを拡張する中で、「システムを管理しやすい状態に保つ」というプロセスはしばしば後回しにされてしまう。時間の経過とともにシステムは複雑化し、保守がしにくくなる。

“退職したコボラー”を呼び戻す

 「引退したCOBOL技術者たちは、COBOLの知識だけでなく、長年携わってきたシステムの知見も豊富に持っている」。こう話すのは、ヴィンジュ氏のCWIの同僚であるティス・ファン・デル・ストーム氏だ。ストーム氏は、グローニンゲン大学のソフトウェア工学教授を務める。

 COBOL技術者がいなくなることは、COBOLを扱える人が不足するというだけでなく、そのシステムをメンテナンスしたり改修したりするのに関連する知見を有する人材も不足する事態につながる可能性がある。この状況は、システムがCOBOLで稼働している組織にとって重大なリスクとなる。

 オランダ社会保険銀行(SVB)のシステムは、COBOLで動いている。SVBのシステムで問題が発生した際、同行はそのシステムに関する知見を持っている人材がほとんど引退している状況に直面した。

 SVBはこの問題に対処するため、引退したCOBOL技術者たちを呼び戻さなければならなくなった。対象のシステムやCOBOLについて十分に理解していた技術者らが来てくれたことで、問題を迅速に解決することができたという。


 後編は、COBOLで構築したシステムの維持に関わる技術を解説する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

製品資料 株式会社ジャストシステム

ノーコードで基幹システム運用を改善、解決できる課題やツール選びのコツを解説

基幹システム運用の課題を解消すべく、ノーコード開発ツールを導入する動きが加速している。数あるツールの中からどのようにツール選定を進めたらよいのか、またどのような課題を解決できるのか、具体的なツールも含めて解説する。

事例 株式会社ジャストシステム

ベンダーに依存しないシステムを自社で開発、東亜建設工業に学ぶその推進方法

老朽化したシステムの刷新に向けノーコード開発ツールを導入した「東亜建設工業」。その活用により、ベンダーに依存することなく柔軟性と持続可能性の高いシステムの構築を推進できる体制を実現している。同社の取り組みを詳しく紹介する。

事例 株式会社ジャストシステム

ノーコード開発で大幅な業務効率化を実現、「八千代工業」の取り組みとは?

社内業務の徹底的な効率化を目指す「八千代工業」。最初に導入したRPAでは、紙に依存した業務への対応は難しかったが、これらをデジタル化するためにノーコード開発ツールを使ってアプリを開発し、大きな成果を挙げている。

製品資料 株式会社ジャストシステム

IT人材不足を補うノーコード開発、全社DXにつながるツール選定の4つのポイント

IT技術の重要性が高まる一方、IT人材不足が加速している。その不足を埋めるため、自社の業務システムをノーコードで開発する動きが広がっているが、ノーコード開発を導入する際には、将来的な全社DXを考慮してツールを選ぶ必要がある。

製品資料 株式会社ジャストシステム

プロコード/ローコード開発による業務のシステム化、作業の属人化をどうする?

業務効率化に有効なシステム化だが、プロコードやローコードによる開発では場合によって複雑なコーディングが必要となり、かえって新たな課題を生みかねない。そこで登場したのが、スキル不要で使えるノーコード開発ソリューションだ。

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

COBOLを使う「コボラー」が消えていく“深刻過ぎる代償”:COBOL人材不足の危機【前編】 - TechTargetジャパン システム開発 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。