MPLSから「SASE」や「SD-WAN」への移行が止まらない理由ネットワークセキュリティの今

世界各国でハイブリッドワークが定着する中、ネットワークセキュリティはどう変わりつつあるのか。セキュリティベンダーの調査で、ネットワークセキュリティの事情が一変している状況が浮き彫りになった。

2024年07月22日 05時00分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 テレワークとオフィス勤務を組み合わせた「ハイブリッドワーク」の定着が、ネットワークセキュリティ技術が普及する追い風になっている――。セキュリティベンダーAryaka Networksはそうみる。

 Aryaka Networksは世界のITリーダーを対象に、SASE(セキュアアクセスサービスエッジ)やSD-WAN(ソフトウェア定義型WAN)、ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)などに関する調査を実施した。同調査から分かったネットワークセキュリティの「今」とは。

SASEやSD-WANへの移行が止まらないのはなぜか

 Aryaka Networksは北米や欧州、アフリカ、アジアなどの組織のIT担当者202人を対象に、ネットワークセキュリティに関する調査を実施。その結果を「The Secure Network Transformation Report 2024 Survey」としてまとめた。同社によると、SASEやSD-WAN、ZTNAのニーズが高まりつつある。

 ネットワークセキュリティに関して、以下5つのトレンドが浮き彫りになっているとAryaka Networksは説明する。

  1. IT担当者はネットワークとセキュリティの機能が融合する利点を認識している
  2. 技術の進化や価格を考慮すると、SASEとSD-WANは“使えるツール”として認識されている
  3. ハイブリッドワークの定着により、クラウドサービスの採用が広がっている
  4. クラウドサービスの普及がSASEとSD-WAN導入の追い風になっている
  5. 安全なハイブリッドワークの枠組みとして、社内外を問わず全ての通信を信頼しない「ゼロトラストセキュリティ」の重要性が高まっている

 Aryaka Networksの調査では、大半の回答者が、ハイブリッドワークがSASEとSD-WANの需要を促進していると答えた。SASEとSD-WANの成熟度も高まっているという認識が広がっていることも分かった。「成熟している」「やや成熟している」との回答は、SASEでは84%、SD-WANでは91%に上った。Aryaka Networksは、「かつてニッチだったSASEやSD-WANは市民権を得て、ネットワークセキュリティの主役になりつつある」と分析する。

 SASEとSD-WANを導入する利点に関して、調査対象者が期待しているのは以下の通りだ。

  • セキュリティの強化(34%)
  • 運用負荷の軽減(24%)
  • 採用するベンダー数の削減(製品の集約)(19%)

 Aryaka Networksの調査では、スイッチング(トラフィックの中継と転送)技術である「MPLS」(マルチプロトコルレベルスイッチング)から、SASEやSD-WANに移行する企業が増えている傾向が明らかになった。調査対象者の86%が、2、3年以内にMPLSを廃止する計画だと回答した。MPLSの運用コストがかさみがちなことが主な理由だという。

 人工知能(AI)技術について、Aryaka Networksは利用が急拡大すると見込んでいる。AIシステムが稼働するインフラや、AIシステムそのものを攻撃から守るために、SASEやSD-WANによるセキュリティの強化が欠かせないと同社は指摘。「クラウドサービスやAI技術の普及がネットワークセキュリティの在り方を大きく変えようとしている」。Aryaka Networks最高レベニュー責任者(CRO)のピート・ハートフェルト氏はそう述べる。

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