HDDの大容量化には限界があるとの見方がありつつも、HDDの大容量化はまだ止まりそうにない。実際のところどこまで大容量になるのか。これからどのような技術が使われるのか。HDDベンダーに聞いた。
HDDの大容量化には限界があるとささやかれながらも、HDDベンダーは「エネルギーアシスト磁気記録」など限界を突破するための技術開発を続けている。HDDの最大容量が20TBや30TBではなく、“3桁TB”台へと増えることはあるのか。どのような技術がこれから使われるのか。老舗のHDDベンダーに聞いた。
―― HDDの大容量化の限界はどこにありますか。容量100TBや200TBの実現は可能なのでしょうか。
東芝欧州子会社Toshiba Europe、ストレージ製品事業開発担当シニアマネジャーのライナー・W・ケーゼ氏(以下、ケーゼ氏) HDDを同じフォームファクター(形状や大きさなどの仕様)のまま容量を増やし続ける場合の主な課題は、データの記録や保管に関するさまざまな要素をより縮小する必要があることだ。データの記録密度を高めるためには、より微小な領域にデータを記録する必要がある。より微小な領域にデータを書き込もうとするほど、より大きな磁気エネルギーが必要になる。
記録密度を向上させるために「エネルギーアシスト磁気記録」の技術が必要になるのはそのためだ。エネルギーアシスト磁気記録は、記録媒体に対してエネルギーを付加することでデータ記録の処理の安定性を高めることができる。
HDD1台の容量を30TB以上に引き上げるための技術の一つが、「マイクロ波アシスト磁気記録」(MAMR)だ。この技術があるおかげで、より微細な磁気パターンを記録可能になり、30TB以上の容量帯に到達することができる。MAMRによる大容量化には、記録媒体に照射するマイクロ波を発振する「マイクロ波発振素子」が欠かせない。とはいえ、このマイクロ波発振素子を無限に小さくすることはできない。容量が30〜40TBレベルに達した時点で、それ以上の小型化はほぼ不可能になると考えられる。
時間をかけて研究開発を続けてきた技術がもう一つある。半導体に電流を流してレーザー発振をする半導体レーザー(レーザーダイオード)を利用した「熱アシスト磁気記録」(HAMR)だ。半導体レーザーは半導体素子(半導体材料を使った構成要素)であるため、より小型化することが可能だ。HAMRは、容量100〜200TBのHDDを実現する可能性を秘めている。
だがHDDの容量をどこまで増やせるかはまだ分からない。今回話した内容が、近い将来にすぐに製品化されたり、議論が活発になったりするものではないと考えた方がよい。基本的には2030年代後半から2040年代に本格的に使われることを想定している。
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