「HDDオワコン論」対「200TB超え可能説」 HDDベンダーに聞いたHDD進化の限界はどこにあるのか?【前編】

HDDの容量はどこまで増えるのか。100TBや200TB、PBといった規模になるのはいつなのか。それとも「50TB」程度に限界があり、他のストレージ技術が取って代わるのか。

2024年07月07日 08時15分 公開
[Antony AdsheadTechTarget]

 SSDに対するHDDの利点は、“より安価で大容量”であることだ。SSDが大容量化する中では「HDD不要論」さえ聞こえてくる状況だが、HDDは“安価で大容量”という利点を維持できるのか。これはHDD製造の存続を左右する問題だ。

 1990年代前半に20〜30MB程度だったHDDの容量は、2000年代前半に数十GBになり、2020年代前半には20T(テラ)Bの時代になった。問題は50TB程度に一定の限界があるのではないかということだ。

 HDDの容量が数百TBやP(ペタ)Bといった規模まで増える見込みはあるのか。それはいつやって来るのか。それともやはり限界があり、他のストレージ技術にその地位を譲ることになるのか。HDDベンダーに聞いた。

50TBの先はあるのか? HDDはオワコンになるのか?

―― HDDの容量は数百TBになり、その後はPB規模へと増えますか。それはいつやって来る見込みですか。それとも他の新たなストレージ技術が、HDDに取って代わるのでしょうか。

東芝欧州子会社Toshiba Europe、ストレージ製品事業開発担当シニアマネジャーのライナー・W・ケーゼ氏(以下、ケーゼ氏) HDDの容量は10〜20年ごとに20MBから20GB、20GBから20TBへと増えてきた。この事実を前提にすると、2020年代の今から20年後に20PB、40年後には20E(エクサ)BとHDDの容量が増えることは決して不可能ではない。だが、それは現時点では途方もない話だ。1台のHDDで20PBや20EBを実現するには、現時点では考えられていない、新しい方法が必要になる。

 20PBや20EBを達成できる可能性を秘めたストレージ技術はある。例えば、DNA(デオキシリボ核酸)を記録媒体に用いる「DNAストレージ」や、ガラスの一種である「石英ガラス」にデータを記録するストレージ技術だ。こうした技術を使うのであれば、データ保存量の飛躍的な増加を見込めるが、それはもはやHDDではない。

 HDDの技術でどこまで大容量化が可能なのかが気になるのだろう。HDDの容量は既に20TBに達している。一般的なユーザーが購入を検討できる価格帯のHDD製品として今後数年で製造可能になると考えられる容量は、30〜40TBだ。その次には50TBにも達するだろう。

 その程度の容量のHDDが登場することには確信を持てているが、いつ登場するかについては確約できない。そうした容量のHDDを提供するに当たっての課題の一つになるのは、“合理的な価格”にできるかどうかだ。50TB規模を達成する技術は既にできている。だが提供に当たっては、技術の開発だけではなく、価格を考えることも重要だ。

 100〜200TBの容量を実現する可能性のあるHDDの技術も既にある。技術的、物理的な面では実現可能だが、それを合理的な価格で製造できるかどうかについては、まだめどが立っていない。

 5年後に100TBのHDDが登場する可能性はある。それを実現するには非常に高度で複雑な技術が使われることになるため、HDD1台の価格が数万ドルになる可能性がある。24TBのHDDの価格は、2024年現在は数百ドル程度となっている。その状況で、数百万ドルの高額なHDDを製造しても意味はない。HDDは容量と価格が全てだ。

 HDDは容量単価が安価であることが原動力になって売れる。40TBのHDDなら、容量単価の観点で見ても十分に売れる可能性がある。100〜200TBのHDDも技術的には可能だが、HDDベンダーが本当にそうした容量のHDDを製造する日が来るかどうかは分からない。それは技術をどれだけ実用的な段階まで持っていけるのか、その製造コストがどれくらいになるのか次第だ。


 次回は、東芝のHDDがどういった技術を使い、今後5年でどこまで容量が増えるのかをまとめる。

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