かつてPCに搭載されるプロセッサと言えばIntelが主流だったが、いまやそれは常識ではない。Microsoftによる新発表によって、プロセッサの勢力図が変わりつつあることが鮮明になった。
クライアントOS「Windows」や「macOS」を搭載するPCのプロセッサと言えば、以前はIntel製のCPU(中央演算処理装置)を搭載しているのが当然だった。だがその状況は今、急激に変わりつつある。
Appleは2020年に、半導体設計を手掛けるArmのアーキテクチャを基にした独自のSoC(システムオンチップ)「Apple M1」(以下、M1)を発表。クライアントデバイス「Mac」シリーズへのIntel製プロセッサの搭載をやめた。
Microsoftの新たな発表によって、Windows搭載のPCにもArmプロセッサの波が来ている状況が鮮明になった。Arm時代の到来と同時に、何が起きようとしているのか。
Armのプロセッサと言えば、以前は比較的安価なノート型デバイス「Chromebook」や、シンクライアント端末に搭載されるのが主流だった。だがArmのプロセッサに、「Intel製プロセッサに対する低価格の代替品」といったイメージはもうない。
AppleはM1をはじめとした独自プロセッサを「Appleシリコン」という呼称で提供している。同社は2024年5月に発表した最新版「Apple M4」を、タブレット「iPad Pro」の第7世代に搭載した。
Windows搭載の一部のPCも、Armアーキテクチャのプロセッサを採用してきた。以前はArm版のWindows PCは、IntelのCPU搭載のPCと比べれば少数派の印象が強かったが、その状況は変わりつつある。
2024年5月、Microsoftは「Copilot+ PC」という、AI(人工知能)技術向けに設計されたWindows PCのブランドを発表した。この発表時点でCopilot+ PCは、Armアーキテクチャを採用したQualcommのCPUを搭載している。それに加え、Copilot+ PCはQualcomm製のNPU(Neural Processing Unit)も搭載している。NPU はAI技術の処理を実行することを前提に設計されたプロセッサだ。
AdobeやBlackmagic Designといったさまざまなソフトウェアベンダーが、CoPilot+ PC向けのAI機能を披露している。Adobeの画像編集ソフトウェア「Adobe Photoshop」やBlackmagic Designの動画編集ソフトウェア「Da Vinici Resolve」は、Copilot+ PCのNPUで、画像や動画の編集作業を高速化できる。
Microsoftに加え、AcerやASUSTeK Computer(ASUS)、Dell Technologies、HP、Lenovo、Samsung Electronicsが、Copilot+ PCを2024年6月に発売した。複数のPCベンダーがCopilot+ PCを提供開始することは、業界を挙げてこの新PCブランドの商機を広げようとする姿勢を表している。
PCベンダー各社は、IntelまたはAdvanced Micro Devices(AMD)製の「x86」(命令セットアーキテクチャのこと)系プロセッサを搭載したAIアプリケーション向けPCも提供している。AI技術の処理を前提にしたプロセッサとしては、AMDは「Ryzen Pro」を2024年4月に発表し、Intelは2023年12月に「Core Ultra」を発表した。
AIアプリケーションをPCで利用するニーズが、実際にどれだけあるのかに関しては論争が続いている。論争の焦点となるのは、AIアプリケーションの開発状況だ。プロセッサのアーキテクチャの選択肢が多様化する今、アプリケーション開発者はさまざまなプロセッサで利用可能なアプリケーションを開発しなければならないという課題を抱えている。
Windows PCは、Intelのプロセッサを搭載している製品が実質的な標準だった。アプリケーションも、Intelのプロセッサで動かすことを前提にするのが主流だった。これからAI技術が進化し、Copilot+ PCの利用が広がれば、アプリケーション開発の複雑さやアプリケーションの互換性に関する新たな課題を生じさせる可能性がある。
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