「Copilot+ PC」はなぜ扱いにくい? Windows新デバイスの“2つの欠点”Microsoftの“AI PC”ブランドに待ち受ける現実【前編】

AIワークロードの処理能力を強化したMicrosoft新PCブランド「Copilot+ PC」は成功するのか。専門家は幾つか重要な要素が足りていないと指摘する。何が欠かせないのか。

2024年06月28日 08時00分 公開
[Antone GonsalvesTechTarget]

 AI(人工知能)技術の活用が進む中、Microsoftは2024年5月、AIワークロード(AI技術関連の処理やタスク)の処理能力を向上させるNPU(Neural network Processing Unit)搭載のPCブランド「Copilot+ PC」を発表した。それに伴い、Acer、ASUSTeK Computer、Dell Technologies、HP、Lenovo、Samsung Electronicsといった主要PCメーカーは、2024年6月にCopilot+ PCを発売した。

 企業はMicrosoftのこうした動きに期待を寄せている一方、一部のアナリストは、Copilot+ PCには普及する上で重要な“あるもの”が欠けていると指摘する。何が足りないのか。

続々登場する「Copilot+ PC」の“2つの欠点”とは?

 Copilot PC+は、搭載するSoC(統合型プロセッサ)に要件を設けている。IntelとAMD(Advanced Micro Devices)は、2024年6月時点でその要件を満たすCopilot PC+用のプロセッサを準備中だ。現状のCopilot+ PCには、Qualcomm製のArmアーキテクチャ採用CPU「Snapdragon X Elite」が搭載されている。

 要件を満たすSoCとして、Intelは2024年7~9月期に、同社がコードネーム「Lunar Lake」と呼ぶCopilot+ PC用CPUを出荷すると発表した。Microsoftを含む各PCメーカーは、Armアーキテクチャ採用CPUのCopilot+ PC開発に取り組んでおり、Microsoftの新製品は「Surface」シリーズのラインアップに加わる見込みだ。

 アナリストによると、Copilot+ PCの発表は企業の間で好評を博している。AIワークロードはPC製造業界の関心をかき立てており、PCメーカーと半導体メーカーの協力も企業の目を引いたという。

 AdobeやZoom Video Communicationsなどのアプリケーションベンダーは、Armアーキテクチャ採用CPUで稼働するアプリケーションを提供している。Salesforce傘下のSlack Technologiesも、2024年6月にコラボレーションツール「Slack」のベータ版を公開した。サブスクリプション型オフィススイート「Office 365」に含まれる、「Microsoft Teams」「Microsoft PowerPoint」「Microsoft Outlook」「Microsoft Word」「Microsoft Excel」などのアプリケーションは、Armアーキテクチャ採用CPUでも動作する。

 このような盛り上がりに対して、「Copilot+ PCのスタートは堅調だが、Microsoftが企業向けPC市場で成功するためにはさらなる努力が必要だ」と言うアナリストがいる。具体的には、以下の2つが欠かせないという。

  • Copilot+ PCの価格が下落すること
  • Armアーキテクチャ採用CPUで稼働するOS「Windows」で、ビジネス向けアプリケーションが正しく動作することが保証されること

 コンサルティング会社J. Gold Associatesの主席アナリストであるジャック・ゴールド氏によると、オフィス向けの大口契約を獲得するために重要になる点は、PCの販売価格が1000ドルを切ることだ。2024年6月時点で市場に出回っているCopilot PC+の価格は約1000ドル以上で、ゴールド氏は「かなりの高額であり、安くはない」と話す。現状のCopilot PC+はプロシューマー(先進技術に興味がある消費者)や専門家、長時間持つバッテリーを必要とする外回りの従業員といった層向けの製品だと同氏は考える。

 この価格帯でのライバルは、Appleのノート型デバイス「MacBook」だ。MacBookは、Appleが独自設計したArmアーキテクチャ採用のSoC「M」シリーズを搭載する。MicrosoftはCopilot+ PCについて、1回の充電でローカルストレージ内の動画を連続22時間再生可能なバッテリーを搭載すると主張している。

 MicrosoftはAppleに対してAI戦略の面で一歩先を行っている。Appleは2024年6月開催のイベント「World Wide Developers Conference」(WWDC)で、AIワークロードを扱うデバイスに関する戦略を発表したばかりだ。

 「優れたバッテリー駆動時間と演算能力を理由にMacBookを求める人にとって、Copilot+ PCはその代替になり得る」。市場調査会社TECHnalysis Researchのプレジデント、ボブ・オドネル氏はそう指摘する。


 次回は、Copilot+ PCが普及する上でのさらなる課題を専門家の声と共に紹介する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

技術文書・技術解説 TIS株式会社

APIはじめてガイド:開発から管理までを効率化するためのポイントとは?

次なるビジネスの中核を担う可能性を秘めているAPI。APIを本格利用する組織にとっては、効率的な開発・公開・運用・管理方法を確立することが重要課題となっている。本資料では、効率化に向けて知っておくべきポイントを解説する。

製品資料 Okta Japan株式会社

SaaSの非アクティブユーザーを特定し、アクセス権を適切に管理する方法とは?

組織が導入するSaaSの数は増加する一方だが、全てが有効に使われているとは限らない。IT部門には、各SaaSへの不要なアクセス権を取り消すことが求められているが、個別のSaaSシステムをまたいで非アクティブユーザーを特定するのは難しい。

市場調査・トレンド 横河レンタ・リース株式会社

PC運用管理者1030人に聞いた「PC運用の実態調査」、担当者を悩ます課題と解決策

近年の情報システム部門は多数の業務を抱えており、中でもPCの運用・管理担当者の業務負荷をいかに軽減するかが大きな課題となっている。1030人を対象に行った調査をもとに、PC運用・管理業務のあるべき姿を探った。

事例 Asana Japan株式会社

“208カ国の壁”を突破しスズキが残業35%減を実現、その全貌とは

“100年企業”スズキでは、DX推進のアクションプランに、「仕事のシンプル化」「ムダの削減」「全社的な可視化」を挙げている。同社はあるツールを導入したことで、業務の見える化や標準化、残業時間の35%削減を実現したという。

製品資料 SUSE ソフトウエア ソリューションズ ジャパン株式会社

システム乱立やコスト増の課題も、マルチLinux環境の運用をどう効率化する?

企業では「マルチLinux」環境が有効な取り組みとして浸透しているが、一方で管理の複雑化という課題も浮上している。本資料ではマルチLinux環境が浸透してきた背景やその利点を整理し、新たな課題の解決策について解説する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...