容量増大のペースが停滞していた「HDD」に関して新技術の発表があり、HDDの今後の進化にまた新たな光が差し込んできた。HDDはこれからどう進化しようとしているのか。
「HDD」が再び“進化の勢い”を取り戻そうとしている。「SSD」の容量増大の進化に関心が集まり、HDDのこの先を危ぶむ声が大きくなりつつあった。だが2024年に入ってからのHDDベンダーの発表によって、HDDの“飛躍的な進化”に向けた道筋が見えてきた。HDDはどう変わろうとしているのか。
HDDベンダーSeagate Technology(以下、Seagate)は2024年1月、HDDの記録密度向上につながる技術群「Mozaic 3+」を発表した。これはHDDの新時代を予感させる存在になったと言って過言ではない。Seagateはこの技術群によって、プラッタ(データを記録する磁気ディスク)1枚当たり3TBを実現し、プラッタ10枚を搭載するHDD1台で30TBの容量を実現した。同社によれば、この技術を基にしてHDD1台当たり容量50TBの実現が具体的に見えてきている。
これからHDD容量が飛躍的に伸びる可能性があることは、ストレージを含むインフラの未来にどのような意味を持つのか。
まずは、HDDが果たしてきた役割を振り返ろう。2000年代に容量1TBのHDDが登場して以来、記録密度の向上につながるさまざまな技術が登場したおかげで、HDDの容量は拡大を続けてきた。例えば、プラッタを同心円状に分割した記録領域であるトラックを屋根瓦のように重ねて配置する手法「SMR」(Shingled Magnetic Recording:シングル磁気記録方式)がある。
新たな技術革新が続くことで、企業や個人はデータを生成し続けると同時に、それをよりコスト効率が良いストレージで保管することができるようになったのだ。
HDDの技術開発が続く一方で、世界に存在するデータ量は増加の一途をたどってる。企業が保有するデータは、オンプレミスのストレージにおいてもクラウドストレージにおいても増える傾向にある。米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)によると、ストレージの需要とコストを予測することに難しさを感じている。
企業が大容量かつ低価格のストレージを求める一方で、昨今はHDDの容量が伸び悩む状況が続いていた。HDDの容量は「もう頭打ちだ」という見方が広がっていたのだ。HDDの台数が増えるほど、電力を消費して二酸化炭素排出量が増える可能性があるという課題も広く認識されてきていた。だからこそ、HDDの記録密度を大幅に伸ばせる可能性を秘めたMozaic 3+は、非常に注目に値する技術なのだ。
Seagateが30TBのHDDに導入した技術「HAMR」(Heat Assisted Magnetic Recording:熱アシスト磁気記録)は、プラッタに保存可能なbit数、すなわち記録密度を大きく向上させた。その結果として、プラッタ1枚に3TBを保存できるようになった。
3.5型のHDDに、10枚のプラッタを搭載する技術と組み合わせることで、HDD容量をほぼ倍増させることが可能だとSegateは見込んでいる。Mozaic 3+の基盤となる技術は、将来的にさらなる高密度化が可能なほど拡張性があるとSegateは説明する。プラッタ1枚当たり4TBと5TBの開発が進行中であり、これによりHDDの1台当たりの容量は2024年からの数年で50TBを超える可能性がある。
後編は、Mozaic 3+がデータセンターやクラウドサービスのストレージに与える影響についてより詳細に考察する。
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