「HDD」は結局、“5年後”にどうなる? あの老舗ベンダーに聞くHDD進化の限界はどこにあるのか?【中編】

HDDの容量は、今後5年程度でどこまで増えるのか。HDDの容量増大を促すと見込まれる技術とは何かを踏まえて、今後の見通しをHDDベンダーに聞いた。

2024年07月14日 08時30分 公開
[Antony AdsheadTechTarget]

 HDDベンダーは、さらなる大容量化に向けた開発を継続している。SSDの最大容量増加も進む中で、HDDがこれからも使われ続けるために、HDDベンダーは容量増大のペースを緩めることはできない。今後5年程度で、HDDはどうなるのか。どこまで容量が増えるのか。老舗の“あのHDDベンダー”に聞いた。

HDDの今後5年の見通し――老舗ベンダーに聞く

―― 今後5年で期待できる容量はどの程度でしょうか。それはどのような手法によって実現するのでしょうか。

東芝欧州子会社Toshiba Europe、ストレージ製品事業開発担当シニアマネジャーのライナー・W・ケーゼ氏(以下、ケーゼ氏) 当社が追求するHDD開発には、記録方式で見ると2つの方向性がある。1つ目は、既によく知られている伝統的な技術を使ったHDDだ。これは「CMR」(従来型磁気記録方式:Conventional Magnetic Recording)という手法を用いる。

 CMRは、円盤状の記録媒体である「プラッタ」に、適度な間隔を入れて「トラック」(同心円状に分割した記録領域)を配置する手法だ。その利点は、トラック同士が離れているためにデータ読み書き時の干渉が発生しにくいことだ。このCMRによる手法でも容量は徐々に増え、4〜5年後には30TB超になると考えられる。

 一方で、容量を増やす技術に集中することも大切だ。HDDには大容量ストレージとしての役割がますます求められるようになっている。もちろんデータ読み書き速度のパフォーマンスについてもある程度は考慮しなければならないが、それよりも容量が重要だ。データ読み書き速度は多少犠牲にしてでも容量を増やすための手法として、当社はSMR(シングル磁気記録方式:Shingled Magnetic Recording)にも力を入れている。

 SMRは、1本1本のトラックを屋根の瓦のように重ね合わせて配置する手法だ。データ読み書き速度が低下する可能性があることがデメリットだが、その分、プラッタ1枚当たりの容量を増やすことができる。

 CMRで容量30TBを実現できるのであれば、SMRを利用すれば40TB以上にすることが可能だ。従来型のHDDと、容量を大幅に向上する可能性のある技術を採用するという2つの方向性で、HDDの容量拡大は進んでいくことになる。


 次回は、100TBや200TBといった大容量を見据えたHDDの開発について深堀りする。

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