原告側弁護士も“お手上げ”
「Zoom爆撃」訴訟が93億円で和解へ “大企業は和解金ゼロ円”の深い訳
プライバシー保護の不備が争点になっていた「Zoom」の集団訴訟は、和解金8500万ドルの支払いで仮合意となった。和解金は有料、無料ユーザー両方が対象となるが、大企業向けプランのユーザーは対象外だ。なぜなのか。
Zoom Video Communicationsは2021年7月、同社のWeb会議ツール「Zoom」がユーザーのプライバシーを侵害したとして起こされていた集団訴訟について、和解金8500万ドル(約93億円)を支払うことで合意した。和解金を受け取る対象には、小規模企業向けプランのユーザーが含まれる可能性がある。大企業向けの最上級プランである「Enterprise」(企業)プランのユーザーは対象にならない。
2020年に始まったこの集団訴訟は、Zoom Video CommunicationsがZoomに十分なセキュリティ対策をしていなかったことや、エンドツーエンド通信暗号化を提供しているという虚偽の宣伝をしていたことを訴えていた。Zoomの脆弱(ぜいじゃく)性は、Web会議に招待していないユーザーが乱入して会議を妨害する「Zoombombing」(Zoom爆撃)という迷惑行為を招いていた。同社がユーザーの個人情報を無断でFacebookなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)と共有したことも訴訟の焦点になっていた。
和解案において、Zoom Video Communicationsは過失を否定している。正式な和解成立には、米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所判事の承認を得る必要がある。
大企業向けプランのユーザーが“和解金ゼロ円”を受け入れざるを得ない理由
Zoom Video Communicationsは今回の和解案を受けて声明を発表した。同社は声明で「ユーザーのプライバシーとセキュリティは当社にとって最優先事項であり、ユーザーの信頼を重要視している」と述べ、ユーザーのプライバシーを保護するためにZoomのセキュリティを改善したと表明している。
今回の和解条件に基づき、Zoom Video CommunicationsはEnterpriseプランを除く企業向けプランと個人向けプランの有料ユーザーに、サブスクリプション料金の15%または25ドルのうち多い方の額を、無料プランのユーザーには15ドルを支払う。最上位プランであるEnterpriseプランのユーザーには支払わない。
原告側弁護士のティナ・ウルフソン氏は「Zoom Video Communicationsは大口顧客に提供するサービスをカスタマイズしているため、Enterpriseプランのユーザーを訴訟に含めるのは難しい」と説明する。そうしたカスタマイズを考慮した場合、セキュリティの不備がEnterpriseプランのユーザーを侵害したことを証明することが難しくなるという。「ユーザーに高度な知識を持ったIT担当者がいて、自社の基準を満たすようにZoom Video Communicationsと話し合っていた場合、そのような申し立ては弱くなる」とウルフソン氏は語る。
プライバシーに関する声明において、Zoom Video Communicationsはユーザーの個人情報の使用について透明性を高めると述べている。同社が今後提供するZoomの会議内通知機能は、Web会議中に参加者がサードパーティーアプリケーションを使ってデータを共有する場合、その共有相手が誰かを開示する。
Zoom Video Communicationsは2020年秋に全プランのユーザーを対象に、同社のサーバではなく参加者のデバイスで暗号鍵を生成する「エンドツーエンド暗号化」機能を追加した。この集団訴訟の他に、米国連邦取引委員会もZoomの問題を指摘し、少なくとも2016年から高度な暗号化を提供しているという虚偽の説明をしていたとして申し立てた。この申し立てについては2020年11月に和解している。
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