MLBがGoogleと実現する試合データ活用【前編】
メジャーリーグは「データ野球」をどう変えたのか 進化の歴史を振り返る
メジャーリーグベースボール(MLB)は、2000年代初頭からWebサイトを利用し、野球の試合データをファンや報道機関に提供してきた。MLBの試合データの活用方法はどのように変化してきたのか。
野球は統計が重要な役割を果たすスポーツだ。米プロ野球のMLB(メジャーリーグベースボール)は、試合データ分析システムの「Statcast」を構築し、2015年に導入した。2020年にはStatcastのインフラをGoogleのクラウドサービス群「Google Cloud Platform」(GCP)に移行することで、ファンとチームの双方に提供できるデータと情報を大きく変えることに成功してきた。
メジャーリーグの「データ野球」進化の歴史
故ロジャー・マリス氏の1シーズンの本塁打記録である「61本」や、故ハンク・アーロン氏の通算本塁打記録「755本」、故テッド・ウィリアムズ氏が最後の4割打者になった1941年の打率「0.406」などの数字は、何十年にもわたり野球ファンに記憶されてきた。こうした数字は各球団の地元新聞にあるスポーツ欄のボックススコア(試合結果の要約)に掲載されたり、ベースボールカードの裏面に使われたりする。統計と野球との関係は深い。
MLBによる統計の集計方法と利用方法は、約20年前の2000年代初頭に変わり始めた。
2001年、MLBが公式Webサイトの「MLB.com」に試合中継機能を導入すると、ファンはコンピュータで試合の経過を追い、ボックススコアをリアルタイムで見ることができるようになった。その5年後の2006年、MLBは3次元(3D)の投球追跡機能を追加し、球場の観戦者とテレビなどのデバイスで観戦しているファンの双方に、投球のスピードと球種を伝えるようにした。
2015年、MLBはStatcastの利用を始めた。試合中の選手とボールの動きを追跡するStatcastの技術により、MLBはそれまで取得不可能だったデータを取得して分析できるようになった。MLBでStatcastのソフトウェア工学シニアディレクターを務めるロブ・エンゲル氏は、Googleが2021年に開催したオンラインカンファレンス「Google Cloud Next '21」の分科会セッションで登壇。「Statcastを使うことで本塁打の飛距離など、ボールのあらゆる動きを捉えられるようになった」と話した。野球選手の動きを追跡することで、MLBは「足が一番速い選手」「肩が一番強い外野手」「フライが捕球される確率」「ブロッキングが一番うまいキャッチャー」など、新たな情報も得られるようになった。
MLBは2020年、StatcastのインフラにGCPを採用した。GCPへの移行により、分析機能をさらに強化させる考えだ。新機能である3Dのポーズトラッキングは、センサーが各選手の身体の18カ所を追跡し、各センサーから位置情報を取得する。これらの位置情報と、投球と打球の情報を、いったんGCPに取り込む。その後ほぼ瞬時にWebサイトを閲覧する観客やアナウンサー、MLBの30チームに提供する。エンゲル氏は「これにより、試合をビデオゲームのような没入感のある3D映像として描き出せる。この技術でできることはとても多い」と語る。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー