「自動車アナリティクス」の今【後編】
「自動車アナリティクス」は何を可能にするのか? CASE時代のデータ活用術
自動車に関するさまざまなデータを分析する「自動車アナリティクス」は、自動車業界に何をもたらすのか。実例を基に、自動車アナリティクスの可能性を探る。
前編「『自動車アナリティクス』なぜ活況? 不況下の顧客第一主義シフトが契機に」は、自動車の製造や販売、使用の各プロセスで得られるデータを収集・分析する「自動車アナリティクス」(Automotive Analytics)が、自動車業界で重宝されるようになった背景を解説した。
今、自動車業界ではいわゆる「CASE」(注1)と呼ばれる新潮流が加速している。半自律走行車が路上を走るようになり、車内のコネクテッドデバイスも充実してきた。外部データソースやWebサイトのデータのスクレイピング(抽出)が利用可能になって、自動車業界には利用可能なデータがあふれている。自動車の複雑化が進むにつれて、こうしたデータ量は増加の一途をたどることになる。
※注1:「Connected」(インターネットでつながる自動車)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared」(カーシェア)、「Electric」(電動化)という自動車技術の4大トレンドの頭文字を基にした造語。
「自動車アナリティクス」の応用例
「大量のデータを掘り下げ、そこからインテリジェンスを引き出す技術は着実に向上している。そして、その範囲も広がり続けている」。Deloitte Analyticsでマネージングディレクターを務めるアシュウィン・パティル氏はこう語る。Deloitte Analyticsは国際会計事務所・コンサルティング企業Deloitte Touche Tohmatsuのデータ分析専門部門だ。
利用できるデータが豊富になるにつれて、意思決定の基礎となる情報も豊富になり、自動車メーカーは大不況後の変化に対処しやすくなった。消費者の行動を適切に追跡し、市場の変化をうまく分析できるようになったのだ。「今日の消費者が入手できる情報量やアクセス可能な情報源の数、競合他社に関する情報の量は著しく増大している」(パティル氏)
車載システムの「OnStar」や自動車保険会社Progressive Casualty Insuranceが開発したドライバー追跡デバイス「Snapshot」などから取得するセンサーデータは、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の改善にも役立つ。例えばデータを活用して運転の安全性を評価し、優良ドライバーに金銭的なインセンティブを与えることができる。
これらのデータは地方公共団体が交通量を把握して交通政策やインフラを改善するのにも役立つ。道路の陥没をいち早く見つけて修復するといった用途はその一例だ。メンテナンス時期の予測にもこうしたデータを使える。自動車に関して何か不具合が生じれば、それが深刻化する前にドライバーにいち早く警告することで、修繕コストを抑え、カスタマーエクスペリエンスを高めることができる。欠陥製品の流出防止にもつながる。
視点の変化がもたらす効果
自動車アナリティクスは製品ライフサイクルの各段階に及ぶ。消費者の購入によって得られる情報を活用することで、市場のニーズや希望に応じた製品の変更が可能になる。これにより自動車メーカーは自社のプロセス全体を流動的な市場に合わせて形成できる。消費者の購買傾向とその変化に関する分析に基づいて製造体制を最適化したり、より高度な分析によってサプライチェーン途絶を未然に防いだりすることも可能だ。
製品ライフサイクルの最終段階の分析は自動車メーカーの設計部門の意思決定や、製品ラインの形成方法に影響する。ドライバーが車載インフォテインメントシステム(注2)に依存しているか、全く使用していないかは、自動車メーカーが次期モデルをどうするか考慮する上で重要な判断材料になるだろう。
※注2:インフォメーション(情報)とエンターテインメント(娯楽)の機能を幅広く提供するシステム。具体的にはカーナビゲーションや音声通信、インターネット接続、音楽・動画の再生機能などを提供する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用 -
技術文書・技術解説
[NTTインテグレーション株式会社] 「耐量子計算機暗号」(PQC)に今、取り組むべき理由とは? 実現の道筋も解説 -
製品資料
[株式会社リンプレス] どうしたら非デジタル人材を「自走するDX推進者」に変えられるのか? -
製品資料
[アステリア株式会社] 既存システムをAIレディに変える「連携型モダナイゼーション」の手法とは? -
製品資料
[アステリア株式会社] 「データ連携」徹底解説 要件整理から連携手法、ツール選択まで
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
2
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
3
Copilot導入で陥る“目的化”の落とし穴 定着の鍵は「作り込まない」こと
-
4
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
5
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
6
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
7
Microsoft 365移行で露呈した標準機能の限界 地方銀行は上長承認や「脱PPAP」をどう実現?
-
8
【基本情報技術者試験】膨大なデータをどう整理する? 「ディレクトリ」構造の基本
-
9
AmazonがMetaのAIエージェントの購入を拒否 情シスが問われる「AIの権限設計」
-
10
RAGで「データをAIに送る」運用が限界を迎えている理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
3
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
4
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
5
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
6
SASE選定は「見極め力」で大きな差――本当に必要な製品を選ぶための6つの視点
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
9
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー