医薬品流通のサービスを変えるデータ分析【中編】
医薬品流通業界が「BIaaS」で解決した“データ分析のプライバシー問題”
医薬品流通業界は「膨大なデータを、厳格な法規制に基づいて安全に活用できるデータ分析基盤」を必要としていた。このニーズに応えるためにZuellig Pharmaは、どのような技術に注目して解決を目指したのか。
アジア地域の大手医薬品流通会社であるZuellig Pharmaは、同社の顧客である製薬企業がエンドユーザー(医療機関、調剤薬局、患者など)の行動を適切に理解して、顧客ロイヤリティー(忠誠心)を獲得するために、「サービスとしてのビジネスインテリジェンス」(BIaaS:Business Intelligence as a service)を立ち上げた。
同社にとって大きな課題だったのは、データを容易に交換するための信頼できる仕組みが、アジア地域の医薬品流通業界に普及していなかったことだった。医薬品業界におけるデータ分析の難しさは、どの点にあったのか。
医薬品流通のデータ分析に必須だったプライバシー保護
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連載:医薬品流通のサービスを変えるデータ分析
ヘルスケア分野での人工知能(AI)活用
データ分析の切り口は、記述的(Discriptive)、診断的(Diagnostic)、予測的(Predictive)、処方的(Prescriptive)の4つに大別できる。ヘルスケアデータの大半は過去の症状やその症状が発生した状況を記録したもの、つまり記述的データや診断的データだ。そのため、ここから得られる洞察の価値は限定的なものになり、新たな患者の転帰を改善するとは限らない。
医療業界では膨大なデータが生成されている。有用性の高い洞察を生み出すには堅牢(けんろう)なデータ基盤が不可欠だ。金融機関RBC Capital Marketsが資料「The healthcare data explosion」の中で提示している試算によると、医療業界が生み出すデータ量は全世界のデータ量の約30%を占める。医療業界のデータ量は、2025年までの年平均成長率(CAGR)が約36%に到達する見込みだ。この成長率は製造業界より約6%高く、金融サービス業界よりも約10%高いとRBC Capital Marketsは見る。
爆発的に増大するデータ量に対処し、データのプライバシーとセキュリティを確保できる適切なツールを、医療業界は求めていた。この問題に対処するには、データセットを提供してくれる組織との関係を構築しやすくすると同時に、法規制に厳格に準拠した信頼できる仕組みを用意する必要がある――Zuellig Pharmaはそう考えた。
Zuellig PharmaのBIaaSは、プライバシー強化技術とコンフィデンシャルコンピューティング(利用中のデータを暗号化する技術)を搭載しており、「個人を特定できる情報」(PII:Personally Identifiable Information)を必要とせずにデータを抽出できる。機密データを保護するために、処理中に隔離領域「エンクレーブ」に分離してセキュリティを確保することも可能だ。
このためZuellig PharmaのBIaaSは、分析に不要な情報の量を減らしながら、データセットを安全に結び付けることができる。ユーザーは、政府の入札、保険金請求データ、臨床試験管理など、多種多様なデータソースを活用した予測的洞察を得られ、高度な分析ができるようになる、と同社は説明する。
後編は、Zuellig PharmaのBIaaS開発を支えたシンガポール政府の支援事業について説明する。
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