JPロジスティクスのワークフロー統合事例
月500件超のデータ登録を自動化 「kickflow」移行で直面した属人化の落とし穴
数百本に膨張した申請フォームの統合にSaaS移行は有効だが、設定の自由度が属人化を招くリスクを伴う。JPロジスティクスの事例から、ワークフロー選定の基準と運用を破綻させない設計の勘所を読み解く。
企業のM&Aや事業統合において、情報システム部門を悩ませるのが社内システムの統合だ。特に、各社で運用ルールが異なる稟議(りんぎ)や経費精算などのワークフローは、統合が難航しやすい。日本郵便グループで企業間物流を担うJPロジスティクスも、2023年の事業統合に伴って同様の課題に直面していた。事業統合時点で各社の旧システムが併存し、購買稟議や経費精算などの申請業務が二重運用になっていたのだ。
JPロジスティクスが利用していたオンプレミスのスクラッチ開発システムは、条件分岐や経路の集約が難しく、条件ごとに経路マスターを作成する必要があった。制度変更や組織改正のたびに経路マスターが増加・複雑化し、申請フォームが数百本超に膨張していたという。
全社的なクラウド推進方針の下、JPロジスティクスはオンプレミスシステムからの脱却を図り、SaaS(Software as a Service)への移行を決断する。SaaSのクラウドワークフローへの移行は、オンプレミス特有の保守運用負荷を下げるだけではなく、APIによる基幹システムとの連携も容易にする。
しかし、システム統合において警戒すべき落とし穴がある。JPロジスティクスが選定したSaaSはスクラッチ開発に匹敵する多彩な設計機能を備えていたが、その「設定の自由度の高さ」が逆に運用を複雑化させるリスクを孕んでいた。初期導入が容易な分、ドキュメントを残さずに構築を進めてしまうと、将来的に設定が属人化・ブラックボックス化してしまうからだ。
「SaaSの自由度」が招く属人化のリスク
JPロジスティクスは、社内ワークフローシステムにkickflow社のクラウドワークフロー「kickflow」を採用した。2026年9月1日、kickflow社が発表した。2023年の事業統合に伴い、併存していた旧システムを統一し、数百本超に及んでいた申請フォームを約70本に集約した。基幹システムとのAPI連携によって、月500件を超える定型申請の処理も自動化した。
日本郵便グループで企業間物流を手掛けるJPロジスティクスは、2023年の事業統合・合併を経て新体制に移行した。急速な統合が進む中、規定や運用ルールが個別に残っていたことに加え、旧システムが併存していたため、購買稟議や経費精算、押印申請などの申請業務が二重運用になっていた。
従来利用していたオンプレミスのスクラッチ開発システムは、条件分岐や経路の集約が難しく、条件や承認段階の組み合わせごとに経路マスターを作成する必要があった。制度変更や組織改正のたびに経路マスターが増加・複雑化し、申請フォームが数百本超に膨張していた他、他システムとの連携が難しく手作業が発生していたことが課題となっていた。
全社的なクラウド推進方針の下でSaaS製品を比較検討した結果、JPロジスティクスはkickflowの採用を決めた。スクラッチ開発システムと同等の経路・フォーム設計機能を備えている点や、組織改編の先日付登録ができる点を評価した。APIやWebhook(複数のWebサービスを連携させる仕組み)による連携、シングルサインオン(SSO)を標準提供している点や、直感的で分かりやすいユーザーインタフェース(UI)も選定の決め手となった。
構築に当たっては、人事・総務部が現場の運用設計を担い、情報システム部が技術面や開発標準の策定を担当。自由度の高い設計において属人化を防ぐため、経路の組み方や部門・役職などのコード体系および名称の基準を定めた独自規約を作成し、一貫した品質を維持しながら進めた。
kickflowへの移行によって、支店コードをマスターから呼び出して同一フォームで承認チームを動的に割り当てられるようになり、数百本超あったフォームを約70本に集約した。基幹システムとAPIで連携してチケットを自動生成し、承認ステータスをWebhookで通知する仕組みを構築したことで、決裁後の後続処理を自動化。月500件以上発生する定型申請の作業工数を削減した。「LINE WORKS」との連携によって外出先からの承認作業も可能となり、決裁スピードの向上につながっている。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「JPロジスティクス、ワークフロー統一で申請フォームを70本に集約 月500件を自動化」(2026年9月2日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
肥大化した「SFA」の沼 4カ月でBigQuery×AppSheetの新システムを構築した方法
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
6
「何から始めればいい?」 情報漏えい対策で悲鳴を上げる中小企業のリアル
-
7
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
8
AIの導入効果はどう測る? DMM.comのエンジニア組織に学ぶ効果検証のノウハウ
-
9
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
10
「朝8時にバッチが終わらない」データ爆発の危機をJPX総研はどう乗り越えたか
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー