Android Wear搭載スマートウオッチを検証
徹底レビュー:「Samsung Gear Live」の毎日着けたくなる使用感と痛過ぎる欠点
韓国Samsung ElectronicsのAndroid Wear搭載スマートウオッチ「Samsung Gear Live」は、ウェアラブルデバイスの可能性を示すことができるだろうか。Gear Liveは優れた製品だが、大きな欠点もある。果たしてそれは何だろうか。
実績のない市場で実用性とファッション性を兼ね備えたハードウェアを開発する――、そんな使命を担っているウェアラブルメーカーの努力は同情に値する。米Googleのウェアラブルデバイス向けOS「Android Wear」を最初に搭載しようと決断した韓国LG Electronicsや韓国Samsung Electronics、米Motorola Mobilityといったハードウェアパートナー各社には憐れみすら覚える。
こうしたメーカーが販売するスマートウオッチが数百ドルもしなければ、彼らの置かれている状況は違っていただろう。しかし、その高額な価格設定により、多くの人はスマートウオッチを不要なデバイスと見ている。つまり、スマートウオッチは、買っても1年後には“話のネタ”にしかなりかねない、そんな未成熟な市場であるということだ。それはともかくとして、ウェアラブルデバイスはその可能性を示す必要がある。スマートウオッチについては、Samsung、LG、Motorolaの3社がその役目を担わなければならない。
Android Wearを搭載するハードウェアにとって好都合なのは、Android Wear自体が大きな可能性を秘めていることだ。Android Wearのレビュー記事では、次のように述べた(参考:徹底レビュー:「Android Wear」に感じた“未来っぽさ”と厳し過ぎる現実)。「Android Wearには他のウェアラブルメーカーよりも将来性がある。GoogleはAndroid Wearについて明確なビジョンを持っている。そのビジョンとは、ユーザーが必要なときに簡明で役立つ情報をひと目で把握できる状態で提供するというものだ」
肝心なハードウェアについてはどうだろうか。本稿では、注目を集めているSamsungのAndroid Wear搭載デバイス「Samsung Gear Live」(以下、Gear Live)を検証してみたい。
構造とデザイン
Gear Liveは、「Samsung Gear 2」および「Samsung Gear 2 Neo」とほとんど見分けがつかない。ハードウェアの余剰品を流用していると思われる。ディスプレーは四角形で、サイズは1.63インチだ。ベゼルの上面と底面には厚みがあり、つやのあるメタルフレームが採用されている。ゴム製のベルトは取り外し可能。Gear 2/Gear 2 Neoと異なる点もある。Gear Liveの前面にはボタンがなく、Gear 2に搭載されていたカメラもなくなっている。
デバイスの裏面には、充電用の端子と心拍センサーがある。側面には、設定メニューを表示するための小さなボタンが備わっている。このボタンからディスプレーやマイクのオン/オフを切り替えることもできる。充電アダプターを固定するための切り込みもある。
ベルトの先端には固定用の金具が付いており、Gear Liveを快適かつフィットした状態で手首に装着できる。最初はベルトを固定するのに手間取るだろうが、慣れれば簡単に脱着可能だ。本体のサイズは37.9(幅)×56.4(高さ)×8.9(奥行き)ミリ、重量は約59グラム。重さはそれほど気にならない。
Googleの発表によると、Gear LiveはIP67規格対応の防水/防じん性能を備えている。つまり、手を洗ったり、シャワーを浴びたり、庭いじりをするときでも、Gear Liveは装着したままで問題ないということだ。ただし、泳ぐときには外すのが賢明だろう。
Gear Liveのレビュー中に、少なくとも一度は雨が降る中でランニングをしたり、自転車に乗ったりした。その際も、滴る雨や汗を問題なくはじいていた。真夏に走れば、端末は汗まみれになってしまう。だが、さっと1回拭けば、新品同様のきれいな状態に戻った。
Gear Liveを普通の腕時計と見間違えることはないだろう。だが、マニア向けのミニマムな美的感覚を備えている。市場に出回っている他のスマートウオッチよりも魅力的な外観だといえるだろう。ベルトが取り外せることは、小さいながらも評価できるポイントだ。しかし、ベルトの色やデザイン、素材を変更する以外に、何か便利な機能を提供できるかどうかは分からない。本稿執筆時点で用意されているGear Liveのベルトの色は、ブラックかワインレッドだ。
Gear Liveには、充電用クレードルとmicroUSBのトラベルアダプターが同梱されている。
ディスプレー
1.63インチのSuper AMOLEDディスプレーは、物理的にも機能的にもGear Liveの中心部である。解像度は320×320ピクセルで、画素密度は278ppiだ。画面サイズが限られていることを考えると、AMOLEDテクノロジー特有の白黒がはっきりとしたコントラストは、Gear Liveによい結果をもたらしている。Androidスマートフォンでは、5インチの大型ディスプレーが主流となりつつある。それに慣れているユーザーは、このように小さなディスプレーに表示される情報量に驚くだろう。
だが、屋外に出ると状況は一変する。光の反射によってGear Liveは台無しになる。明るさを最大にしても、直射日光の下では、白い背景に表示された濃い色の文字が辛うじて読める程度だ。指紋が付着すると、問題はさらに深刻になる。明るさを最大に設定しなければ、Gear Liveで文字を読むことはできない。
Gear Liveには環境光センサーが搭載されていない。これは致命的な問題だ。2010年以降に販売されたスマートフォンでは、利用環境に応じてディスプレーの明るさが自動調整される。だが、Gear Liveのディスプレーで明るさが自動的に調整されることはない。ディスプレーの明るさは、さまざまな方法を使用して手動で調整することが可能だ。サードパーティー製のアプリを使うと、簡単に明るさを調整できる。だが、その操作は判読困難なディスプレーで行わなければならない。
さらに複雑なことに、設定の画面は暗い上に白い文字が使用されている。そのため、ディスプレーの明るさに関係なく文字を読むことは非常に難しい。Android Wearは音声ナビゲーションに対応するように開発されている。Android Wearが音声による明るさの調整に対応していると考えるのが自然だろう。ただし、本稿執筆時点では、音声による操作には対応していない。これは非常にストレスのたまる仕様だ。
タッチナビゲーションは、ほぼ問題なく機能する。だが、スワイプとタップの操作が反応しなかったことは何度かある。この現象はランニング後に頻繁に見られた。Gear Liveが汗にまみれて、指がぬれていることが原因と推測できる。ただし、全く正常な状態でも、スワイプとタップの操作が反応しなかったこともある。公正を期していうなら、この現象は未成熟なAndroid WearのOSに起因している可能性がある。
前述の音声ナビゲーションも、ほぼ問題なく機能する。ただし、スマートフォンの音声機能と同じ制限がある。例えば、雑音が多い状況や一般的ではない言葉やフレーズなどがナビゲーションの動作に影響する。
パフォーマンス
Gear Liveには、1.2GHzのプロセッサ、4Gバイトの内蔵ストレージ、512MバイトのRAMが搭載されている。また、Bluetooth 4.0 Low Energy経由でAndroidベースのスマートフォンに接続する。Gear Liveに期待すべき機能については、前述のAndroid Wearのレビュー記事を参照されたい。パフォーマンスに関して、Gear Liveに搭載されているプロセッサは、スムーズに処理を実行する上で素晴らしい役割を果たしている。繰り返しになるが、小さなバグとハングアップは発生した。だが、これはソフトウェアに起因する問題だと思われる。
Gear LiveではBluetoothによるテザリングを使用する。そのため、Gear Liveをフル活用するには近くにAndroidベースのスマートフォンを置いておく必要がある。といっても、その対応範囲は申し分ない。Gear Liveは、壁やドア越しでも充電中の「Samsung GALAXY S4」に接続した状態が維持された。また、100メートルほど離れても、接続が維持される場合もあった。
Gear Liveにメディアファイルは格納されない。少なくともAndroid Wearのデフォルトの設定では、メディアファイルを保存することはできない。そのため、4Gバイトのストレージはアプリ用の領域になる。Android Wearアプリの数がそれほど多くない状況を考えると、この容量が十分かどうかは定かではない。現時点で利用可能な数十個のアプリを全てインストールしてみたが、特に問題はなかった。Google Playストアを確認したところ、Android WearをサポートしているAndroidアプリのサイズは、ハンドセット用のもので8~18Mバイトだ。スマートウオッチ用のアプリのサイズは、これより小さくなるだろう。仮に各アプリで必要な容量が20Mバイトだとしても、Gear Liveには100個以上のアプリをインストール後も、まだ十分なOSの領域が残っている。
センサー
Gear Liveには、「コンパス」「加速度計」「ジャイロスコープ」「心拍センサー」が組み込まれている。コンパスでは大まかな方位が示される。だが、個人的に、この機能を船舶走行時に利用することはないだろう。加速度計の能力には限界はあるが、適切に機能する。ディスプレーの向きは変更できないが、手首を上向きに返すと、ディスプレーは暗い状態からすぐオンになる。Gear Liveのディスプレーをオンにするのに必要な作業は、手首を返して画面を見るだけだ。
歩数計はエクササイズが好きな人の期待にも応えられるだろう。Android Wearには、1週間分相当の歩数が記録される。AndroidベースのスマートフォンとGear Live対応のランニングアプリを組み合わせると、市場に出回っているフィットネスガジェットに匹敵する使い勝手を実現することが可能だ。
センサー系の機能の中で最も脆弱なのは、心拍センサーだろう。心拍を検出するには細心の注意を払う必要があり、正常に起動しないこともある。心拍センサーを搭載した複数のエクササイズマシンを使ってテストを行った。中~高程度の負荷を掛けると、Gear Liveで記録された心拍数は1分当たり85~105回だった。これは、筆者の年代を考えると、どんなトレーナーにも心拍数が低すぎるといわれる値だ。一方、エクササイズマシンで記録された心拍数は1分当たり110~125回だった。こちらは、別途手動で計測した結果や多くのエクササイズのガイドラインと一致する値だ。
バッテリー
Gear Liveには300mAhのバッテリーが搭載されている。GoogleとSamsungは、1日1回の充電で1日中、問題なく使えるとうたっている。ディスプレーを常にオンにした状態でテストを行ったが、この文言にうそ偽りはなかった。画面の明るさを60%程度に設定して、数分おきに画面を確認するというようなことをしなければ、バッテリーは1日中持続した。バッテリーの持続時間に有機EL(OLED)ディスプレーのテクノロジーが大きく貢献しているのは間違いない。省電力はOLEDディスプレーの長所の1つだ。
ディスプレーの明るさを最大に設定して、使用頻度を上げてもバッテリーは6時間持続した。
結論
Gear Liveは、ディスプレーに1つの大きな欠点があるものの優秀なハードウェアだ。耐久性があり、使い心地もよい。バッテリー持続時間も十分だ。だが、直射日光の下では、明るさを最大に設定しても文字は辛うじて読める程度だ。また、光センサーも搭載されていない。ガジェットを誰よりも早く使ってみたいという人でない限り、Gear Liveを勧めるのは難しい。
筆者にとって、Gear Liveは毎日身に付けても構わないスマートウオッチである。そのため、ディスプレーの欠点は非常に残念だ。見た目は少しマニアックかもしれない。だが、Google Glassほど身に付けることに恥ずかしさを感じないだろう。Gear Liveはスマートウオッチの利便性を示す役割は十分に果たしている。また、将来性があるAndroid Wearを搭載している点も評価できる。
Samsungは、同社のスマートウオッチにとって幸先の良いスタートを切った。だが正直なところ、Gear Liveに購入を決定付けるほどの魅力はない。同社が本稿で挙げた問題点を修正することができれば、次期スマートウオッチは投資に値する製品となるだろう。
長所
- 耐久性のある構造
- 標準光源であれば申し分ない表示
- 着け心地のよさ
短所
- 直射日光の下では文字がほぼ判読不可能
- ディスプレーの明るさを自動調整する環境光センサー非搭載
- 非実用的な心拍センサー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[フォーティネットジャパン合同会社] AIランサムウェアに勝つ 自律型エンドポイント管理導入で確認すべき条件4つ -
技術文書・技術解説
[フォーティネットジャパン合同会社] LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント -
製品レビュー
[ネットアップ合同会社] 研究分野でAI活用が進まない? 真の成果につなげるデータ管理の在り方とは -
製品レビュー
[ヴィーム・ソフトウェア株式会社] SCS評価制度を導入するだけで十分? 組織の防御力を高める活用方法とは -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 社内データ資産をもとに文章を生成、“専属秘書”のように頼れる生成AIサービス
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
情シス管理職は何を「やらない」のか ラクス情シス課長が語る"仕事を任せる判断軸"
-
2
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
3
なぜ情シスは評価されにくい? 読者調査で見えた「成果が見えない仕事」第1位は
-
4
VMware離れの決め手は“機能”以外だった 情シス109人が選んだ新基準と死角は
-
5
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の機能とスペックを徹底比較
-
6
セキュリティの転機 2026年度開始の新評価制度が求める「復旧能力」の実現法は
-
7
「最大の脆弱性は従業員」が8割 AI活用で深まるCISOの孤立と苦悩
-
8
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
9
「企業におけるAIの運用」に関するアンケート
-
10
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
登録セキスぺが語る「SCS評価制度」の舞台裏 星を取得すべき理由と対応のコツ
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
OSSでは困難 100超のサービスを持つマネーフォワードが実践した統合監視術
-
4
「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略
-
5
月1000枚の紙を削減 9年動けなかった組織が、業務改革のその先に得たもの
-
6
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
7
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
8
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
9
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
10
ソフトウェア開発の属人化と手戻りをどう防ぐ? 速さと品質を両立させる方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー