「うちのバックアップは完璧です」という企業がはまるワナ【第3回】
戻せないバックアップ 問題ないはずの「リストア」で起きた悲劇(1/2 ページ)
バックアップを取得する目的は「何かあったときに元の状態に戻せる」ことだ。だが実際にリストアを試したことがあるIT担当者はどれくらいいるだろうか?
前回(今すぐ始められる? 「取っているだけのバックアップ」からの脱出方法)は、バックアップの課題を解決するためのヒントをストレージベンダーに聞いた。「システムとデータのバックアップは、第三者が安易に変更できないリードオンリーの仕組みを用意して万が一に備える」「複数のシステムで個別最適化されてしまうバックアップについては適切な基準を設定する」といったものだ。
本稿では少し視点を変え、取得したバックアップの復元、つまりリストアに関する課題と解決策について紹介する。
めったにないリストアの機会
リストアに関する課題の中でも、運用担当者にとって深刻なのは端的に、リストアの機会が少ないことだ。バックアップは運用担当者の日常業務として常に意識されるが、リストアについては「試したことがない」「経験がない」といった状況に陥りやすい。
そんな中でいざリストアしなくてはいけない状況が発生したら、それはまさに当事者にとって「未曾有の危機的状況」だ。ただでさえ平常心を保つのが困難な状況下で、ほぼ未経験かつ失敗が許されない作業を迅速かつ正確に実施しなくてはならない。
そもそもリストアが必要な事態は、ストレージが広範に破壊されるような相当深刻な状況だ。こうした状況は、これまでは頻繁に起こるものではなかった。実は現在、その常識が変わりつつある。例えば前回(今すぐ始められる? 「取っているだけのバックアップ」からの脱出方法)でも述べた、身代金要求型マルウェアの「ランサムウェア」などのサイバー攻撃に対する「対抗手段」としてのリストアだ。
自然災害的に発生するストレージ破壊と、いつどんな手段で企業内に入り込むか分からないサイバー攻撃を比べて、どちらの発生頻度が高いかは言うまでもないだろう。しかも緊急度はストレージが破壊された場合と同じかそれ以上の状況で、特定のデータだけを任意の日付に戻すといった繊細な作業が要求される。経験がない運用担当者ではスムーズなリストアは難しいだろう。
見落としがちなリストア時間
バックアップには、取れば取るほどデータ量が増えてしまうという「当然だが厄介」な課題がある。この課題解決に有効な仕組みが「重複排除」だ。バックアップ対象のデータの中で、既に取得したものと同じデータがあった場合、バックアップデータに重複が発生する。重複排除はこの重複したデータを排除する。このため、実際に必要なデータ容量を大幅に削減できる。ユーザー企業からは、毎回フルバックアップを取っても、ストレージ容量的には差分バックアップ程度の使用量で済んでいるように見える。ストレージへ送る前に重複排除する製品であれば、データ転送量も減らせる。ネットワークのデータ転送速度を低下させることなく、バックアップに要する作業時間を劇的に短縮できる。
このように重複排除は、バックアップの効率化に目覚ましい効果を発揮する。一方で見落としがちな盲点が「リストアの時間が長くなる」という点だ。
重複排除の有無にかかわらず、一般的にリストアの方が、バックアップよりも時間がかかる。日々のバックアップ作業があまりに迅速に完了してしまうことから、警戒心が薄れてしまう傾向があるが、リストアはそもそも「バックアップしたデータを戻す(コピーする)作業」だ。それ相応の時間がかかる。
重複排除したバックアップのリストアは「重複を排除して、無駄なく記録した断片的なデータ」をつなぎ合わせて元通りのデータにする複雑な処理が必要になる。バックアップ機器のパフォーマンスに影響を与え、通常のバックアップよりもリストアに時間がかかってしまう。
米国で実際にあった事例として、あるSaaS(Software as a Service)事業者のシステムトラブルで、契約者のシステムをまとめて復旧する必要に迫られたことがあった。この事業者では重複排除機能を持つ少数のストレージに、さまざまなシステムのバックアップを集約していた。さらに複数のシステムを一気にまとめてリストアする状況を想定していなかったこともあって、復旧にどのくらいの時間がかかるのか、把握できていなかった。
結果的にはSLA(サービス品質保証契約)で約束した復旧時間を大幅に超過し、数十時間を要する大事故に発展してしまった。ここに至って、実はリストアの速度が極めて重要だと認識できたという。
担当者の経験不足と復旧時間という、これらの課題に対する解決策は何だろうか。
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