傾向と対策を解説
バックアップも破壊する「DeOS型攻撃」(サービス破壊型攻撃)とは?
攻撃者の目的は機密情報の取得だけでない。最近はデータの破壊やビジネス停止を目的とする「DeOS型攻撃」の脅威が深刻化しつつある。
Cisco Systemsの「Cisco 2017 Midyear Cybersecurity Report」(Cisco 2017年中期サイバーセキュリティレポート)によると、バックアップを含めたデータを完全に破壊し、標的とした企業のビジネスを停止に追い込むサイバー攻撃が見られるという。Ciscoやセキュリティベンダーは、こうした攻撃を「サービス破壊」(DeOS:Destruction of service)型攻撃と呼ぶ。
2017年に世界中のシステムを襲った「WannaCry」「NotPetya」といったマルウェアによる攻撃は、事実上DeOS型攻撃だった。ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)のWannaCryの場合、被害者は身代金を支払うのが非常に難しく、ほとんどの企業がデータを回復できないままになった。ランサムウェアともワイパー(データ破壊型マルウェア)とも呼ばれるNotPetyaの場合は、被害者が身代金を払ってもデータの暗号化を解くことはできなかった。
CiscoはさらなるDeOS型攻撃の発生を予測しており、既に攻撃増加の報告も寄せられている。例えば2018年3月には、バックアップファイルを意図的に削除する「Zenis」というランサムウェアが登場した。DeOS型攻撃流行の兆しに合わせて、防御を強固にするため、分厚い防御層を準備する必要がある。
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データ破壊やビジネス停止を狙う攻撃者
高まるバックアップ保護の重要性
DeOS型攻撃に合わせたサイバーセキュリティの適応
DeOS型攻撃の重要な対策は、あらゆる手段でバックアップを保護することだ。データを本番環境から離れたオフサイトにバックアップし、そのバックアップを本番環境のネットワークから切り離す。そうしておかないと、DeOS型攻撃の被害が本番環境からバックアップへ拡大する恐れがある。
Microsoft公式ブログの最近のエントリによると、オフサイトのバックアップ保護に使える手段は幾つかあるという。以下はその例だ。
- パスフレーズの変更やバックアップの削除には多要素認証と強力なパスワードを必須とする
- バックアップ場所に移動中のデータと、保管したバックアップデータに強力な暗号化を使用する
- パスワードは本番環境のデータとは別の場所に安全に保管する
- セキュリティチーム内でバックアップの職務を切り分ける。メンバーには、自身の職務遂行に必要なレベル以上のアクセス権を与えない
- バックアップデータの存在や可用性に影響する重要な操作がなされた場合には、リアルタイムのアラートを表示するように設定する
- 適切なクレデンシャル(IDやパスワードなどの認証情報)を持つエンドユーザーが削除を要求した場合でも、特定の時点のバックアップは保持しておく
攻撃者はDeOS型攻撃にランサムウェアを使用する傾向がある。クライアントPCのデータを急速に暗号化するなど、ランサムウェアに特有の動作をリアルタイムで検出するマルウェア対策ツールを利用するのがお勧めだ。マルウェア対策ツールを選ぶ際は、アラートの表示に加え、マルウェアに対するネットワーク接続の制限やファイル変換の停止、暗号化ファイルの復号阻止といった機能を備えているかどうかを確認する。
DeOS型攻撃を仕掛ける攻撃者は、メモリから管理者のクレデンシャルを取得し、それを使ってマルウェアを拡散させることもある。必要がない限り管理者権限は使用せず、各デバイスや各ユーザーの役割に必要な最小限の権限だけを付与する。
特定のDeOS型攻撃が流行している場合、被害を軽減するために適切なソフトウェアパッチを探して適用する。DeOS型攻撃はソフトウェアの脆弱(ぜいじゃく)性を利用してまん延する場合がある。こうした脅威の先を行けるよう、ソフトウェアの自動更新も検討すべきだ。
DeOS型攻撃では、人をだますフィッシングの手口で、さらに攻撃を広げることもある。セキュリティ人材育成サービスを手掛けるInfoSec Instituteが用意するポータルには、フィッシングを説明するセクションに加え、さまざまなフィッシング対策ツールを紹介するセクションがある。
フィッシングに関する教育やトレーニングをすることで、従業員がフィッシングの可能性のあるメールやメッセージに気付いたり、フィッシングが発生した場合の報告方法を理解したりしやすくなる。意図的に社内の個人をフィッシングの対象に設定して、メールの怪しいリンクや添付ファイルをクリックするかどうかを監視し、必要に応じてトレーニングを補強するトレーニングツールもある。
Ciscoによると攻撃者は、インターネット接続デバイス(IoTデバイス)によるbotネットを使った、分散型サービス拒否(DDoS)攻撃を導入している。DDoS攻撃はLANに障害を発生させて、企業の回復能力にダメージを与える可能性がある。
DDoS攻撃対策として、攻撃につながる不審なトラフィックを除去する「スクラビングサービス」がある。ユーザー企業のLANでDDoS攻撃と思われるトラフィックを検出したら、そのトラフィックをスクラビングセンターに再ルーティングし、サニタイズ(無害化)したパケットをLANに戻すサービスだ。
Ciscoのレポートは、攻撃者がIoTデバイスや、その「悪用しやすいセキュリティ上の弱点」を突き、企業環境へのアクセス権を取得して、企業をDeOS型攻撃にさらすとも報告している。
セキュリティベンダー側では、IoTデバイスをテストし、セキュリティを確保して、botネットの形成や潜在的なDeOS型攻撃の脅威を緩和する必要がある。ユーザー企業側でIoTデバイスの脆弱性に対処するには、セキュリティ規制や標準の順守、強力なパスワードの強制、パッチの適用、侵入テスト(ペネトレーションテスト)の実施などが求められる。IoTデバイスベンダー側は、安全なIoTデバイスとソフトウェアを作成する必要がある。
幾つかの企業やベンダー中立のセキュリティ組織が、IoTセキュリティのフレームワーク(考え方の基準)の作成に取り組んでいる。契約しているセキュリティベンダーが提供している「セキュリティインテリジェンス」(脅威情報)や、インターネットの定評のある情報源を利用して、新しいDeOS型攻撃について常に最新の情報を得るようにしたい。
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