物理、仮想の並行管理のポイントは
OpenFlowの生みの親が語る――ネットワーク仮想化のパラダイムシフト
ネットワーク仮想化で課題となる物理ネットワークとの並行管理や、トラブル発生時にトラブルシューティングについて、OpenFlowの生みの親と呼ばれるマーティン・カサド氏に聞いた。
OpenFlowの生みの親で、米VMwareのネットワーク担当チーフアーキテクトを務めるマーティン・カサド氏に、「仮想環境と物理環境の並行管理の考え方」「オーバーレイから見たアンダーレイの重要性」「問題が発生した場合のトラブルシューティングの方法」について話を聞いた。
――どのように物理ネットワークと仮想ネットワークを並行して管理するのですか?
マーティン・カサド氏(以下、カサド氏) 仮想環境と物理環境の並行管理は、コンピュータサイエンスにおける標準的なパラダイムだ。すなわち、これは物理リソースを持ち、その上で仮想リソースを多重化するというものだ。一般的に、こうしたシステムを管理するには、仮想状態と物理状態の両方を点検し、その結果を集約できるツールを使う必要がある。
では、仮想ネットワークソリューションをどう管理するのか。VLAN(仮想LAN)やACL(アクセスコントロールリスト)などの構成状態のせいで分かりにくい1つの複雑極まりないネットワークではなく、多数のずっとシンプルなネットワークを管理することになる。
この場合、物理ネットワークは、接続を提供するだけの単純なネットワークと考えていただきたい。仮想ネットワークは物理ネットワークそっくりに見えるが、動的かつ柔軟に構成が変更される。これらを可視化するには、診断ツールで仮想ネットワークや物理ネットワークを調べればよい。
例えば、仮想マシンAと仮想マシンBが通信できない場合、どう対処するか。最初に、仮想ネットワークを管理ツールで調べてみる。仮想ネットワーク内の何かが通信を妨げているかもしれない。しかし、そうでなかった場合は、物理ネットワークを調査して、物理的な問題かどうかを確認することになる。これが大まかな考え方だ。まず、抽象化された仮想ネットワークをチェックし、必要があれば、物理ネットワークをチェックするわけだ。これをシームレスなプロセスにするために業界標準の管理ツールの改良が進められている。
――アンダーレイはオーバーレイにとってどのように重要なのですか?
カサド氏 それを理解するには、大規模なWeb 2.0データセンターやネットワークシャーシスイッチの構造が参考になる。世界最大級のデータセンターの多くは、オーバーレイソリューションによく似ている。そのアンダーレイはシンプルなレイヤー3ファブリックであり、オーバーレイは通常、アプリケーション固有のものになる。Yahoo!やGoogle、Facebookのようなサービスは、HTTPオーバーレイになるだろう。しかし、このレベルではどの技術も実質的に同じに見える。すなわち、仮想オーバーレイソリューションとほとんどそっくりなのだ。これらにおいては、エッジ上のソフトウェアがさまざまなことを行い、非常にシンプルな物理ネットワークはあまり多くのことをしない。
マクロの観点から見ても何ら変わらない。このような構造の場合、物理ネットワークが行うことは少ない。パケットの複製、統一された接続の提供、一定水準のQoS(サービス品質)の強制くらいだろう。
幸い、このアンダーレイ、つまり物理ネットワークは構築するのが非常に簡単だ。レイヤー3およびECMP(Equal-Cost Multi-Path)ルーティングを使うだけで構築できる。こうした新しいデータセンターは、ここ10年で進んできた流れの象徴の1つだ。
もう1つの象徴がネットワークシャーシスイッチだ。1台のシャーシスイッチ(複数のラインカードを搭載するマシン)を見ると、一般的にラインカードが全てのインテリジェンスを持ち、バックプレーンは素の帯域(最大データ伝送速度)を提供する。これを仮想ネットワークソリューションに例えると、バックプレーンは素の帯域を提供するアンダーレイで、ラインカードはオーバーレイを提供するエンドポイントだ。
数十年来の動向を体現しているこの2つの象徴は、「アンダーレイは重要だが、その機能は限られている」ことを示している。そのおかげで世界の大企業が、標準的なレイヤー3機器を使って、極めて効果的なネットワークファブリックを構築することに成功している。
レイヤー3は非常に重要だ。これがなければ、エンドポイントは通信できないからだ。しかし、レイヤー3の機能は主にトランスポートの提供、QoS、強制、可視化とデバッグの支援にかかわっている。
――オーバーレイの問題に直面したら、オーバーレイとそのベースにある物理インフラに対してどのようにトラブルシューティングを行うのですか?
カサド氏 デバッグプロセスは、既存ツールを使って仮想ネットワークと物理ネットワークを調査することから始まる。だが現在、このプロセスには1つのステップが欠けている。それは、仮想ビューと物理ビューを関連付けることだ。これと全く同じことがコンピュータの仮想化でも起こった。それはアドレス空間の仮想化に伴って生じた問題だった。
現在のネットワークでは、仮想ネットワークと物理ネットワークを関連付けるツールチェーンがない。しかし、仮想ネットワークおよび物理ネットワークのビューの提供と、両者のマッピングができるように手直しが行われているツールが既にある。
実のところ、ネットワークの仮想化はネットワークの可視性を従来よりも格段に向上させることが分かっている。この仮想化ではエッジ全体を制御する必要があるからだ。将来的に、パラダイムを一変させ、もっとシンプルなものにする新しいツールと管理技術が登場することを、私は確信している。
それらがどのようなものになるかの一例を紹介しよう。われわれが取り組んでいる製品では、ネットワークのエッジからネットワーク全体のヒートマップを作成し、ボトルネックやホットスポットを特定することが可能になる。われわれはエッジを高度に制御する必要があり、そのための取り組みが進めば、おのずと可視性とデバッグ性も大幅に向上する。
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