2012年10月29日 08時00分 UPDATE
特集/連載

国内初のオフィスLANにおけるOpenFlow導入【事例】金沢大学附属病院が前例のないOpenFlowを選んだ理由

金沢大学附属病院が、OpenFlowをベースとするNECのネットワーク製品を導入した。OpenFlowをデータセンターで使った例はあったが、組織内ネットワークで利用するのは恐らく国内初。なぜ同院は新技術の導入に踏み切ったのか。

[渡邉利和]

 2012年6月、NECは金沢大学附属病院の新ネットワークに同社の「UNIVERGE PFシリーズ(プログラマブルフロー)」が採用されたことを発表した。プログラマブルフローは、OpenFlowをベースとした同社の次世代ネットワーク製品で、ユーザー端末が直接接続されているLANへの適用は、これが初の事例となる。いわば“前例のないシステム”の導入となったわけだ。この導入経緯について、金沢大学附属病院の経営管理担当の副病院長兼経営企画部長である長瀬啓介教授と、同じく経営企画部 特任助教の山岡紳介氏に聞いた。

建物の建て替えとタイミングが合致

im_tt_kanazawa01.jpg 金沢大学附属病院の正面玄関

 金沢大学附属病院と、隣接する医学系研究科では現在再開発が進行中で、古い建物を段階的に建て替えている。付属病院正門からはまず古い外来診療棟に入ることになるが、ここを通り抜けるとその奥にある真新しい中央診療棟、新外来診療棟、さらに附属病院に隣接する医学系研究科の建物である新総合研究棟に出ることができる。1Fロビーにはカフェなども入っており、昔ながらの大学病院のイメージからは意外に思えるほどの明るく開放的な空間が確保されている。ネットワーク基盤の再構築とOpenFlowの採用は、この建物の建て替えとタイミングが合致したことで実現したのだという。

 病院ではさまざまな部門システムが使われているが、今回OpenFlowが採用されたのは「電子カルテシステム」「医事システム」「生理検査放射線画像システム」「麻酔患者管理システム」、そして「眼科診療システム」。「電子カルテシステム」と料金計算などのための「医事システム」で1つの仮想ネットワークを構成し、他に「生理検査放射線画像システム」「麻酔患者管理システム」「眼科診療システム」でそれぞれ仮想ネットワークを構成。合計4つの仮想ネットワークをOpenFlowネットワーク上に構築している。

im_tt_kanazawa02.jpg 金沢大学附属病院におけるプログラマブルフローの導入構成

 導入規模は、OpenFlowコントローラー「UNIVERGE PF6800」が冗長構成で2台と、OpenFlowスイッチ「UNIVERGE PF5240」が16台。スイッチはフルメッシュ構成となっている。

これまでの院内システムやネットワークの課題

 OpenFlow導入以前のシステムでは、ネットワーク構成を正確に把握することすらできない状況だったという。これは、病院ならではの事情に加え、同院がネットワーク技術の発展初期段階から情報化に取り組んできたことも影響している。

 長瀬教授は、今回のネットワーク基盤の再構築に際して、「病院には専門性の高い人たちが集まっており、それぞれ独自のネットワークを構築してきた歴史がある。これらを統合したいということと、長い時間が経過する間にネットワークをきちんと管理できない状態に陥ってしまったため、これを再構築する必要に迫られたことの2点が主要な動機となった」と話す。

 病院全体で部門システム/ネットワークが幾つあるのかも正確には把握できないそうだ。この理由は、ネットワークが医療機器の付属品扱いになっている点にもあるという。例えば、「電子カルテシステム」と「医事システム」は1つのネットワークに統合されているが、「放射線システム」「検体検査システム」「生理検査システム」「眼科システム」「調剤システム」「内視鏡システム」などは並列して存在する。医療機器は現在、ネットワーク化が進行しているが、基本的には医療機器メーカーがそれぞれ独自のノウハウに基づいてネットワーク機能を機器に組み込んできた。

im_tt_kanazawa03.jpg 金沢大学附属病院 副病院長兼経営企画部長 長瀬啓介教授

 こうしたシステムを使う人はそれぞれの分野の専門家であり、これら専門家と機器メーカーが協力して練り上げてきた結果がそれぞれの部門システムとなっているという事情もある。「病院全体のネットワーク基盤を変更するから、それに合わせて部門システムを改修するように」などという一方的な手法は到底取れない。また、従来はこうした手法による導入に合理性があったのも確かだ。例えば、放射線システムでは大量の画像データをネットワークでやりとりするため、大量のトラフィックが発生する。現在のCTやMRIといった機器では巨大サイズの画像データを出力することになる。一方、電子カルテシステムは文字情報が主体であり、トラフィックとしてはさほど多くはない。こうしたトラフィックの性質の違うシステムを混在させるのは、特にネットワークの帯域幅が今ほど広くなかった時代には困難で、それぞれを分離して専用のネットワークを構築する方が技術的にも理にかなっていたのである。

 とはいえ、長年の間にはシステムの改修や移設といった作業が繰り返し起こり、結果として「何がどうなっているのか誰も正確に把握していない」。状況把握ができていないことは、潜在的に重大トラブルを抱え込んでいる状況だともいえるだろう。

 また、部屋の移動や端末の移設などによって毎回ネットワークの構成変更や物理的なケーブリング作業が発生し、そのためのコストが膨らんでしまうという問題もあった。

OpenFlowを選択した理由とは

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