次世代データセンターネットワークを実現、OpenFlowとは何か?従来のネットワークと比較

クラウド時代の新しいネットワーク制御技術として注目を集める「OpenFlow」。本稿では、OpenFlowの仕組みと特徴を紹介する。

2011年08月26日 09時00分 公開
[荒井亜子,TechTargetジャパン]

 仮想化やクラウドコンピューティングの普及がデータセンターの巨大化を推し進める中、データセンターのネットワークも変わりつつある。その取り組みで注目を集めているのが次世代ネットワーク技術「OpenFlow」だ。

 オープンクラウドキャンパス クラウドネットワーク研究会とクラウド利用促進機構(CUPA)は2011年8月2日、OpenFlowの勉強会を開催した。本稿では、講演者であるNECの岩田 淳氏とNTTデータ 樋口晋也氏の講演内容を基に、OpenFlowとは何かを紹介してみたい。

データセンターネットワークの課題

 NECの岩田氏によると、「多くのデータセンターでは、企業、部門、システム単位で縦割りになったネットワーク機器がサイロ型に構成され、膨大なネットワーク機器コストと運用コストが掛かっている」という。ファイアウォールやロードバランサーといったアプライアンス装置がサイロごとに置かれているため、ネットワーク機器の数が増えるに従い、これらアプライアンスの数も増加していく。運用コストは上がり、障害時の復旧作業も複雑化する。

 また、サーバ仮想化がネットワークに与える影響も考える必要がある。サーバ仮想化によってサーバ間のトラフィックが増えればその分ネットワークに負荷が掛かり、システムのパフォーマンスは下がる。さらに、仮想マシン(VM)を止めずに複数の物理サーバ間を移動させるライブマイグレーションを実行すると、移動先のスイッチでVLANやQoS(Quality of Service)の設定、蓄積された統計情報の付け替えなどが手作業で生じる。データセンター内でネットワーク全体が同じVLANに所属していれば問題ないが、当然ながら各社で異なるVLANを使用するため、移動先の物理サーバ内の仮想スイッチや、その物理サーバまでのL2スイッチのVLAN設定をライブマイグレーションのたびに変更する必要がある。

 つまり、ネットワークにおいても、サーバ仮想化と連動してサービスの拡張や変更、負荷状況に応じた柔軟な対応が求められているのだ。そのため、物理構成に寄らない仮想的なネットワークでは、スケールアウトやプロビジョニング、障害や負荷に応じた経路制御、効率的なメンテナンスなどが期待されている。

 こうした課題を解決する手段としてOpenFlowが注目されている。OpenFlowは、パケットの転送をさまざまな通信プロトコルの制約から解放し、最適なネットワークをプログラミングで構築できるネットワーク制御技術だ。物理サーバと通信するスイッチ間で直接転送経路を設定できるので、最小限のネットワーク機器を経由し、効率的にトラフィックを処理できる点が魅力だ。

OpenFlowの仕組み

 OpenFlowの詳細なメリットを紹介する前に、従来のネットワークと比較しながらOpenFlowの仕組みについて触れておきたい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news078.jpg

生成AIへの期待値の変化 DeepSeek台頭がマーケターに突きつける課題とは?
AI 生成の広告に対する反発が続いた1年を経て、マーケターはパフォーマンス結果重視で非...

news128.png

2024年に視聴者が検索したテレビCM 2位は中国のあのEVメーカー、1位は?
2024年にテレビCMを通して視聴者が気になりWeb検索したものは何だったのか。ノバセルが発...

news078.jpg

Googleの広告収益成長が鈍化、中国のアレが原因?
YouTubeなどのプラットフォームの成長率は、米国の選挙関連支出の急増にもかかわらず低迷...