クラウド時代の新しいネットワーク制御技術として注目を集める「OpenFlow」。本稿では、OpenFlowの仕組みと特徴を紹介する。
仮想化やクラウドコンピューティングの普及がデータセンターの巨大化を推し進める中、データセンターのネットワークも変わりつつある。その取り組みで注目を集めているのが次世代ネットワーク技術「OpenFlow」だ。
オープンクラウドキャンパス クラウドネットワーク研究会とクラウド利用促進機構(CUPA)は2011年8月2日、OpenFlowの勉強会を開催した。本稿では、講演者であるNECの岩田 淳氏とNTTデータ 樋口晋也氏の講演内容を基に、OpenFlowとは何かを紹介してみたい。
NECの岩田氏によると、「多くのデータセンターでは、企業、部門、システム単位で縦割りになったネットワーク機器がサイロ型に構成され、膨大なネットワーク機器コストと運用コストが掛かっている」という。ファイアウォールやロードバランサーといったアプライアンス装置がサイロごとに置かれているため、ネットワーク機器の数が増えるに従い、これらアプライアンスの数も増加していく。運用コストは上がり、障害時の復旧作業も複雑化する。
また、サーバ仮想化がネットワークに与える影響も考える必要がある。サーバ仮想化によってサーバ間のトラフィックが増えればその分ネットワークに負荷が掛かり、システムのパフォーマンスは下がる。さらに、仮想マシン(VM)を止めずに複数の物理サーバ間を移動させるライブマイグレーションを実行すると、移動先のスイッチでVLANやQoS(Quality of Service)の設定、蓄積された統計情報の付け替えなどが手作業で生じる。データセンター内でネットワーク全体が同じVLANに所属していれば問題ないが、当然ながら各社で異なるVLANを使用するため、移動先の物理サーバ内の仮想スイッチや、その物理サーバまでのL2スイッチのVLAN設定をライブマイグレーションのたびに変更する必要がある。
つまり、ネットワークにおいても、サーバ仮想化と連動してサービスの拡張や変更、負荷状況に応じた柔軟な対応が求められているのだ。そのため、物理構成に寄らない仮想的なネットワークでは、スケールアウトやプロビジョニング、障害や負荷に応じた経路制御、効率的なメンテナンスなどが期待されている。
こうした課題を解決する手段としてOpenFlowが注目されている。OpenFlowは、パケットの転送をさまざまな通信プロトコルの制約から解放し、最適なネットワークをプログラミングで構築できるネットワーク制御技術だ。物理サーバと通信するスイッチ間で直接転送経路を設定できるので、最小限のネットワーク機器を経由し、効率的にトラフィックを処理できる点が魅力だ。
OpenFlowの詳細なメリットを紹介する前に、従来のネットワークと比較しながらOpenFlowの仕組みについて触れておきたい。
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