ほぼ決着が付いたSSD vs. HDD 比較で分かったオールフラッシュの明白な優位694人のIT担当者に調査

フラッシュストレージ市場は、コストダウンやSSDの密度と容量の上昇によって、企業向けデータセンターで急上昇の兆しを見せている。

2015年10月22日 08時00分 公開
[Mike MatchettTechTarget]
Taneja Groupの実施した調査概要(参照:Storage Acceleration and Performance Technologies Survey)《クリックで拡大》

 米Taneja Groupは2015年7月、694人の企業IT担当者に対してある調査を行った。その内容は、ストレージの高速化とパフォーマンスニーズや、それらのイメージや計画についてだ。対象となったIT担当者の半分は管理系、残りはアーキテクチャ/制御系を担当していた。同社が実施したフラッシュストレージ市場の分析の最大の目的が、フラッシュストレージの役割と将来を究明することであるのは言うまでもない。

 この調査には、ある重要な質問が1つ含まれていた。それは、「2017年末までの2年未満という期間の間に、データセンターでは、オールフラッシュアレイがあらゆるTier 1のワークロードで使われるようになるか」というものだ。回答者の18%は無条件で同意している。だが、35%の回答者は同意しつつも、ストレージの自然な更新サイクルに対応するためにはもっと時間がかかるかもしれないと答えている。つまり、過半数の53%がオールフラッシュ推進派といえる。一方、将来オールフラッシュがストレージプラットフォームとして優位に立つことを断固認めなかった回答者は10%程度にとどまった。

 “Tier 1”の意味は、回答者が担当している任務によって異なるだろう。だが、一般的に、Tier 1は基幹業務のプロセスを進める最重要アプリケーションストレージとして認識されている。Taneja Groupが複数のベンダーに対してオールフラッシュの利用に関する将来的な展望について追跡調査を実施したところ、ほぼ予想通り、より漠然とした幅広い回答が返ってきた。通常、全てのTier 1とTier 2のデータセンターストレージはオールフラッシュで賄えるとオールフラッシュアレイベンダーは考えている。だが、従来型のストレージやハイブリッドストレージなど、より広範な製品を抱えるベンダーは、フラッシュストレージ市場を選択肢の1つとすることで、ニーズに最適なストレージを顧客が選べるようにしている。

 興味深いことに、オールフラッシュの未来に異を唱えた回答者は、その理由として次のようなことを挙げている。

  • 18%――容量当たりのコストがハイブリッドのソリューションより高くなり得る
  • 12%――オールフラッシュソリューションは、複雑なワークロードをコスト効率良くサポートできない
  • 7%――オールフラッシュソリューションが提供するサービス(階層化など)の品質の幅があまり広くない

 だが、これらの意見は、フラッシュストレージ市場の未来を予測しているというよりも、回答者の過去の経験が映し出されている可能性が高い。オールフラッシュベンダーの中には、特にTier 1のワークロードについて、オールフラッシュとハイブリッド間の総所有コストの差をかなり縮めることに成功している企業もある。さらに言うなら、高いIOPS、選択的な重複排除と圧縮、高密度なSSD、複数層のフラッシュ、耐用寿命(特に現在のHDDと比較した場合)の向上や保証など、フラッシュの方が簡単に優位に立つことができる。

 パフォーマンスのために容量を犠牲にしながらHDDのスピンドルを追加する方策が時代遅れなのは言うまでもない。電力消費の増加と大きなHDDラックを維持する管理オーバーヘッドによる継続的なコストを考えれば、フラッシュの方が優れているように見えるだろう。また、容量のコストに関しても、HDDの高容量化や価格ダウンのペースが維持されない限り、あらゆる種類のフラッシュ製品に軍配が上がる可能性はある。この競争は決着が付いていないものの、フラッシュストレージ市場はHDD市場に肉薄しているといえるだろう。

 SSDとHDDは時間の経過と共に大幅に密度が高まり、価格も大幅に下がっている。さらに、高性能なハイブリッドストレージアレイには自動階層化機能が備わっており、アクセス頻度が低いデータの容量をさらに安く抑えられるようになっている。だが、現在、Tier 1データセンターストレージで、アクセス頻度が低いと考えられるデータはどれほど存在するだろうか。また、どの程度スマート、効率的、高速、細かな階層化が実現できるのだろうか。多くの既存のフラッシュ優先製品や一部のオールフラッシュ製品は、より少数のストレージメディアやクラウドのインテリジェント階層化をネイティブにサポートしている。

 最近では、どんな種類のストレージシステムにも、運用に必要な各種エンタープライズ機能(スナップショット、レプリケーション、暗号化など)が備わっており、きめ細かいサービス品質(QoS)の制御が組み込まれている。オールフラッシュシステムにもQoS管理をインテリジェントに適用して、不要なワークロードを切り離したり、上司からのメールの優先度を必ず高く設定できるなら、これはオールフラッシュ製品に反対する根拠にはならないだろう。やはり、この反論の原因も回答者の過去の経験から来ているのかもしれない。初期のオールフラッシュ製品の多くにはQoSの機能が採用されておらず、上述のエンタープライズレベルの機能の多くも不足していた。

 さらに、オールフラッシュアレイは、意外なアプリケーションのパフォーマンス向上にも一役買っている。例えば、あるグローバル企業はオールフラッシュストレージを利用し、年中無休でグローバルに運用しているアプリケーションのバックアップ作業による影響を軽減することに成功した。この企業は潤沢にある余剰IOPSが利用できたことで、運用環境で行われている作業に何の影響も与えずに毎日のバックアップを実行することができた。さらに、バックアップチームは通常勤務時間に作業を行い、全体の20%で重要な業務を完了することが可能になっている。また、普及作業も同様に高速化されるだろう。

 次に導入するストレージアレイに目を向けるときには、他の運用コストやソフトウェアの費用対効果を考慮するのは当然のことである。現時点では、「オールフラッシュアレイ」(今でも高額な設備投資を伴う可能性がある)、「ハイブリッドアレイ」「その他もろもろ」の中から選ぶときには、費用が大きな決定要因になると思われる。

 つまり、これらの条件付きの反対意見をうのみにせず、学習、露出、革新によってオールフラッシュに対するイメージが変わると考えれば、フラッシュストレージ市場は大きな波のようにあらゆるデータセンターになだれ込むことになるだろう。

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