ハイパーコンバージドインフラ比較【後編】
有名製品がベストとは限らない、「身の丈にあう」ハイパーコンバージドの選び方
大規模なハイパーコンバージドインフラだけに購入時のモデル選択は失敗できない。そうなると安全策になりがちだが、定番の「大手ベンダー」モデルが自分たちの組織に最適とは限らない。
HCI(ハイパーコンバージドインフラ)のベンダー製品の選択肢は非常に多く、新製品も続々と市場に登場している。自社に最適な製品の選定は気が遠くなるような難題だろう。
そこで、この記事ではHCIベンダーが提供する製品を評価する。評価において重要なのは、HCIの目的を把握しておくことだ。既に前編として「ベンダーに言い負かされないためのハイパーコンバージド選びのコツ」を紹介しているが、今回はその後編として、購入価格に関するチェックやサポートする仮想マシンの違い、サポートのカバー範囲の検討などを紹介する。
構成要素とコスト
HCIの中には少数のモデルで構成して価格設定が明快なモデルがある一方で、コンピューティングとストレージの選択肢を含めて相当数のオプションを提供しているモデルも存在する。また、ベンダーが提供する見積もりシステムを使わなければ購入価格を確認できない場合もある。
多くのベンダーは、モデルを構成するための具体的なワークロードが分からないと価格交渉には応じない。また価格交渉を行う場合でも、それはそのユーザー企業に限定した話になる。ユーザー企業が購入する構成を決めた段階で価格の話をするのが一般的だ。
最適なシステムを構築するためにユーザーが組み合わせる構成要素について、明快で簡単な説明と購入価格を提供しているという点で、Scale Computingは高く評価できる。Scale Computingのエントリーレベルの製品は、約2万5000ドルと、他の主な競合製品に比べて安価に設定している。次点はSimpliVityとPivot3で、それぞれのベンダーが提供するエントリーレベルシステムの概算見積もりは5~6万ドルになる。その他のHCIアプライアンスベンダーが提供しているエントリーレベルの製品の価格は6万~10万ドルの範囲に収まる。
HPEの顧客は大量のオプションを調査しなければならない。VMwareの「VMware Virtual SAN」も多くの選択肢を用意している。購入するならソフトウェアをプリインストールした既成の多様な構成から選ぶか、互換性のある製品や推奨製品を一覧にしたSKUリストからハードウェアパーツを選択しなければならない。その他のベンダーは、この領域では中間に位置する。SimpliVity、Pivot3、Maxtaはローエンド寄りで、小規模で扱いやすい構成要素を提供している。Nutanix、HyperGrid、Stratoscaleは、それぞれハイエンドからローエンドにまたがる製品を提供している。大規模で複雑な構成要素があるためだ。
オーバーヘッドと効率
一部のHCIは、特定のハードウェアとワークロードで最大のパフォーマンスを発揮するように設計している。また、多様なハードウェアをサポートするように設計したモデルもある。どちらを選んでもトレードオフを避けることはできない。そのため、予想しているワークロードをモデル化した概念実証の実装が重要だ。購入または導入する製品を理解する方法は、これ以外にない。
一部のベンダーは、オープンソースの「Kernel-based Virtual Machine」(KVM)をベースにした独自のハイパーバイザーの提供を重視している。KVMを搭載すればユーザーはVMwareのハイパーバイザーライセンスを購入する必要がない。2011年からVMwareのパートナーになったNutanixも、今ではKVMベースの「Acropolis Hypervisor」を提供している。とはいえ、Nutanixユーザーの大半は相変わらずVMwareのハイパーバイザーを使用しているのが実情だ。
HCIストレージベンダーはいずれも、任意の仮想ファイルシステムではなくハイパーバイザーを介したブロックレベルのI/Oを好む。このようなベンダーとしては、Scale Computing、Stratoscale、Pivot3があり、SimpliVityが一部に実装している。各ベンダーによれば、VMwareまたはMicrosoftの「Hyper-V」をベースにしたシステムを性能で凌いでいるという。場合によっては大差で上回るとも主張している。
HPE、Stratoscale、Maxta、HyperGridなどの製品は、ハイパーバイザーに依存していない。これらのベンダーは、専用のVMwareドライバやHyper-Vドライバを独自に開発してI/Oを最適化している。また、VMwareはHCIソフトウェアスタックにおける全ての要素(ハイパーバイザー、ストレージアクセス、OS、アプリケーション)で最適化を実現したと明言する。
VMwareは、ハイパーバイザー市場で70%を超えるシェアを占有しているほか、ストレージサービス市場でも大きなシェアを獲得している。そのVMwareに対して競合ベンダーが自らをどのように位置付けているかを把握することは、他の企業のパフォーマンスを調べる上で重要な指標になる。ベンダーによってはデータシートやベンチマークでパフォーマンスを明示している。明示していないベンダーに対しても同様の情報を求めることが可能だ。
HCI製品にとってVMwareは最適なプロバイダーになるのだろうか。それを把握しようとする企業にとって、パフォーマンスは重大な価値を持つ。VMwareの製品を既に導入していたり、VMwareに大きく投資している企業では、VMwareのHCI製品を自社のテクノロジーツールとして追加することが多いだろう。ただし、VMwareハイパーバイザーを避けているHCIベンダーは、VMwareのライセンスに含む「ハイパーバイザーライセンス料」を排除するよう訴えている。
ハイパーコンバージドベンダーの情報とサポート
HCI製品のサポートでは、ハードウェアサプライヤー、ハイパーバイザーメーカー、ゲストOSメーカーについて考える必要がある。さらに、アプリケーションベンダーまたはサービスベンダーも最低1社は検討しておくべきだ。具体的には、一般的なVDIやサーバを統合する取り組み、またはデータベース管理システム(DBMS)、ビッグデータプラットフォーム、Webおよびアプリケーションサーバなどのサポートなどに対応するベンダーだ。HCI製品によって提供しているサポートの条件や種類もさまざまだ。こうした要素のいずれか、または全てを考慮した製品の選択が不可欠になる。
なお、今回取り上げているHCIベンダーは、第三者に頼らなくても完全なサポートを提供して問題を解決できると主張している。Scale Computing、Pivot3、HPEは、あらゆる要素がサポート対象であることを実証するユーザーの推薦状や事例を提供しており、そういう意味では最も信用できそうだ。
製品を選ぶ過程で残った最終候補の検討では、各ベンダーのサポートサービスと条件をしっかり把握したい。時間がたつにつれて、サポートコストがハードウェアのコストを上回る可能性がある。さまざまなベンダーからハードウェアとソフトウェアの有償サポートを受けざるを得ない場合は特にそのような状況に陥りやすい。
特別な特徴と機能
HCIには、細かい差や新機軸の機能、その他のオプションが数多く存在する。ビッグデータや特定のデータベースエンジンなど、特定のワークロードを対象にカスタム構成を提供するベンダーもある。ベンダーによっては、ハードウェアの互換性に関する検証制度を用意している。この制度では、ハードウェアベンダーが提出したコンポーネントとシステムに対して適合性を検査する。提出したコンポーネントでは、特定のHCIソフトウェアの実行テストも行いその可否を調べる。すぐに使える構成でシステムを提供するベンダーもある。このようなシステムでは、ソフトウェアをプリインストールして基本レベルの構成も完了している。そのため、ローカルパラメーターやIPアドレスなどを設定するだけで運用できる。なお、この記事で紹介した全てのベンダーはコンピューティング機能やストレージ機能も追加できる。
一部のベンダーは、特定のワークロードや用途向けの環境を提供している。このサービスで先行しているのがHPEだ。ビッグデータや各種データベース管理システムなど、特定のワークロードを対象にした特別な製品を多種多様にそろえている。ただし、適切なHCIアプライアンスを提供するにはワークロードへの理解が重要だ。そのため、どのベンダーもユーザー企業と購入に関する交渉では、同様の取り組みが必要のはずだ。
2016年10月において、大規模な実装に対応しているのはHPEとVMware、そしてStratoscaleだ。この3社の製品を採用すれば、大規模なデータセンターであっても導入に当たって問題ないだろう。なお、Scale Computingは、この領域ではローエンドに位置する。特定のVDIシナリオを除けば、8アプライアンスが最大クラスタサイズになるためだ。
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