クラウドとは場所のことではない
いまだに誤解される「クラウドコンピューティング」、忘れがちな真の意味とは?
「クラウドコンピューティング」という用語の誤用が原因で、この技術に関する誤解が生じている。クラウドとは場所ではなく、ITサービスをもっとアジャイルに設計する手段を指すことを忘れてはいけない。
ほぼどんな企業でも、IT部門のノートPCの少なくとも1台に、こんなステッカーが張ってあるのを見かけることがある。「クラウドなど存在しない。それは単なる他人のコンピュータにすぎない」。これは人を笑わせるにはうまい言葉かもしれない。だがそれは別として、これほど真実と懸け離れた言葉もない。
米国立標準技術研究所(NIST)が定めるクラウドコンピューティングの定義にこだわるとすれば、クラウドにはオンデマンドのセルフサービス、広範なネットワークアクセス、リソースの集積、迅速な弾力性、測定されたサービスという5つの特性がある。以上の項目では場所について言及していないことにお気付きだろうか。
NISTによるクラウドの定義
クラウドコンピューティングは、あらゆる導入モデルにおいて、コンピューティングの仕組みを根本から変化させた。これは場所ではなく、どちらかというとITリソースの管理方法を指す。クラウドコンピューティングに関するNISTの定義をさらに深く調べると、一般的なサービスモデルとして、以下の3種類が挙げられている。
Software as a Service
アプリケーションがインターネットを介して配信されるソフトウェア導入モデル。
Platform as a Service
アプリケーションを導入するためのプラットフォーム。基盤となるインフラは完全に抽象化される。
Infrastructure as a Service
任意のワークロード運用のため、サーバやストレージといった一般的なインフラの導入を可能にするモデル。
ここでもリソースの場所についての言及はない。それはクラウドが場所ではないからだ。
クラウドとは、ITサービスを考え直し、設計し直すこと
平均的なコンシューマーについて考えると、この技術にまつわる混乱を理解する助けになる。非IT系の一般的なユーザーにとって、クラウドとは文書や写真やファイルのバックアップを保存する場所であり、「iCloud」や「Dropbox」といったコンシューマー向けのサービスを指すこともある。クラウドという単語が大衆向けの一般用語となった時期は、スマートフォンが台頭した時期と重なる。だがITプロフェッショナルにとって、クラウドコンピューティングの意味は全く異なる。クラウドは文書を保存してアクセスする場所から、ITサービスに関する新しい考え方へと進化してきた。
単純に言うと、クラウドコンピューティングとはITサービスを柔軟かつアジャイルに設計する手段であり、リソースの流動的、弾力的利用が実現される。場所はデータセンターのこともあれば、「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」のことも、地元のコロケーション施設のことも、複数の場所を組み合わせて使うこともある。クラウドは、ITの運用方法を表現した言葉であり、ITを運用する場所を示すものではない。インフラを拡張しやすい方法で構築し、APIを通じて予測可能な方法でアプリケーションに使用させることだ。クラウドとはまた、必要に応じて拡張でき、場所を問わずにあらゆるインフラで運用できるアプリケーションを構築することでもある。
クラウドが場所であるかのように人々が考え、行動する理由は簡単に理解できる。マーケティング部門がこの言葉をあまりに頻繁に使い間違える結果、混乱がはびこる。私はITエンジニアがクラウドを「単に他人のコンピュータ」と形容したステッカーを見るたびに、この人物は単純にクラウドコンピューティングの真の定義についても、その良さについても理解していないのか、あるいは理解していながら、あまりに重大な考え方のシフトだという理由で不信感を抱いているかのいずれかだと推定する。
クラウドとは、ITサービスを考え直し、設計し直すことだ。これが単にどこか別の場所で稼働しているコンピュータ群だという考え方を克服するために、ベンダーやインテグレーターやIT部門はこの単語の間違った使い方を改めなければならない。
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