CRM導入事例:Oracle CRM On Demand
SaaS型CRMで実現した組織型営業への転換
組織統合に伴う人員増。そして既に確定している大規模な組織拡大に向け、営業案件を全社的にどう管理するか。日立コンサルティングが選んだのはオラクルのSaaS型CRMだった。
急速な組織拡大に伴って浮上した案件管理共有の必要性
日立コンサルティングは、日立製作所および日立グループのコンサルティング事業を担う戦略会社だ。ミッションは、日立グループが築いてきた実業のノウハウとITソリューションを融合し、日本企業特有の経営課題に対して最適なソリューションを提案、クライアントとともに構築することである。
同社は、2006年4月に日立製作所の子会社であるエクサージュ(当時)と日立製作所のビジネスコンサルティング部門という2つのコンサルティング組織が1つになって現在の形となった。それまで数十人程度だった社員数が一挙に400人規模に拡大し、「日々進めている案件情報を組織内でいかに迅速かつ正確に共有するか」が大きなテーマとなった。それまでは経営トップが営業担当者の活動を直接掌握できていたが、数百人規模となるとそうはいかない。しかも、同社は2007年、2008年と引き続き規模の拡大を組織運営の前提としていたため、何か強力な情報共有インフラが必要なことは当然予測できた。
また、日立コンサルティングの経営トップは陣容拡大を好機として、営業ステータスの定義を抜本的に見直したいという意向があった。それまでは同社に限らず日本企業の営業管理はどちらかというと個人型営業で、ステータスの見極めも営業担当者個人が行っていることが多かったが、それではどうしても受注予測の精度にぶれが生じる。顧客との関係が生まれてから、提案を行い、契約を獲得するまでのプロセスの標準化および統一を図るという意味からも、明確な指針となるものが強く求められていた。それならば、自らが組織型営業を実現する案件管理システム構築の成功事例第1号となって、その経験を武器に組織型営業システムのよさを顧客企業へ提案していこうと考えたのである。
SaaS型であること、CRM分野での実績を評価
営業部門向け情報共有インフラとして同社が検討したのは、CRM(顧客関係管理)システムの導入だった。それは、既に2年先までの組織拡大の見通しが立っていた2006年5月から始まった。同社がシステム選定に挙げた要件は大きく2つある。
まずは、これからの急速な組織拡大に即応できる柔軟性だ。ユーザー数が飛躍的に拡大すれば、その利用ニーズも時々刻々と変わっていく。その度に時間をかけて改修しなければならないシステムでは、同社にとっては利用価値の低いものになってしまう。具体的には、自社でシステムを持つという選択を避けたかったという。自社でシステムを保有すると、それを管理し運用し続ける専門組織が必要になる。何かニーズに変化がある度に、その組織による対応を待っていたのではタイムラグが生じる。そうではなく、システムを利用するユーザーが自ら設定に手を加えて、使い勝手を向上していけるものが理想だった。
もう1つは、グローバルな観点でCRMのベストプラクティスを包含しており、自社で適用できるのみならず、日本の顧客企業に自信を持って勧めることができる製品、というものだった。例えば、社内で営業ステータスの定義を一から議論するとなると、10人いれば10通りの意見が出てきて落としどころを見つけるのが難しい。しかし、既に多くの導入実績を持ち、改良されてきたCRMシステムならば安心して採用できるとともに、その利用経験とメリットを顧客企業に伝えることが可能だと考えたのだ。
そうした観点から同社が選択した製品が、日本オラクルのSaaS(Software as a Service)型CRMアプリケーション「Oracle CRM On Demand」だった。
評価したのは、まずSaaS型であることである。ハードウェアやソフトウェアを保有することなく、利用者数に応じたシステム規模の拡大が容易に行える。しかも、データベースに項目を追加したり、画面の表示項目を変えたりといった変更をユーザー側で行える高い操作性を持っていた。また、オンプレミス型である「Siebel CRM」がグローバルで知られているブランドネームであったことも大きな選定要因だったという。世界を舞台に活躍する日本企業にも安心して推薦できる点が好都合だったのだ。選定に携わった日立コンサルティングの山尾理紗氏は、実際に製品に触れて感じた点を次のように語る。
「Oracle CRM On Demandは、SFA(営業支援)の機能と分析機能を同じライセンス体系で利用できるのですが、『プレビューレポート』といわれるテンプレートで用意されたリポートメニューが豊富で、“こういうデータを見たい”というユーザーの要望に応えやすいだけでなく、特に細かい設定をしなくてもそれをすぐに見られるようになっているのがいいなと思いました」(山尾氏)。
リポートに落とし込む項目も、たくさんあるデータの中から「これは欲しい」「これはいらない」とWebブラウザ上でドラッグ&ドロップで取捨選択すればいい。JavaやSQLを知らなくても設定が可能なため、ユーザーが自分の利用スタイルに合わせて使い込んでいけると感じたという。
折しも当時は、日立コンサルティングと日本オラクルは両社のパートナーシップ強化を進めていたところだった。日本オラクルがOracle CRM On Demandの日本での販売に本腰を入れ始めたこともあって、この製品の採用は極めてすんなりと決まった。
同時並行で動く数百件もの案件情報をマクロでつかむ
案件管理システムが本稼働し始めたのは、2006年10月。要件定義から基本設計を経て、構築、テストに至るプロセスすべてで要した時間は6週間だったという。そこには山尾氏らプロジェクトチームの短期導入のための戦略もあった。Oracle CRM On Demandは、営業担当者のためのSFA機能だけでなく、マーケティング機能やコールセンター機能なども有している。しかし、今回は対象ユーザーを営業部門に絞り込むことでシンプルに作り上げることを目指した。それとともに、ユーザーの主観が入りやすい自由記述などを避け、項目をピックアップするだけで入力が完了するような画面作りに注力したという。その結果、特に集合研修を行うこともなく、マニュアル配布のみで本番移行が可能だったそうだ。
導入から1年半が経過した現在、システムは経営陣、営業部門およびコンサルタントを統括する管理職、合わせて約40人が、日々動く案件情報の管理に利用している。その1人である同社 管理本部 営業管理部 シニアマネージャー 琴田雅彦氏はOracle CRM On Demandの利用状況を次のように語る。
「コンサルティングファームは人がリソースです。今現在、どのようなステータスの案件がいくらぐらい動いているか、経営幹部は常にそれを監視していなければ正しい意思決定ができません。しかし、数百件の案件が同時並行的に動きますから、1件1件を細かくは追えない。その点、Oracle CRM On Demandは、案件情報全体をマクロに見られるリポートが充実しているのがいいですね」(琴田氏)。特に、見込み案件の概要をつかめる「パイプラインアウトルックレポート」などは、経営幹部や琴田氏のような管理職ともに有効に活用しており、これを見れば受注に注力すべきなのか、来るべき受注に備えて新規の要員を確保すべきなのかを見極める大きな判断材料になるという。
山尾氏は琴田氏の言葉をこう補足する。
「経営を変革しようと本気で考えている顧客企業は意思決定が早いので、わたしたちもタイミングを逃さずスピーディーに動く必要があります。日立コンサルティング自身、スピード感を常に重視しているので、Oracle CRM On Demandは強力な経営支援ツールになっています」(山尾氏)
同社では、有効なソリューションを業界・業種を超えて、幅広い顧客企業に提案していく「クロスドメインソリューション(事業部連携)」の展開を進めており、どの部門がどの顧客にどういうソリューションを提案しているかを把握するのにもOracle CRM On Demandは役立っているという。また、現場のリーダーである大倉正男氏は、ユーザーからの要望を受けてコンテンツやリポート構成の変更を担当しているが、「ニーズは毎月といっていいほど変わります。先日も、日立グループが関連する案件を別立てで見たいという要望があったので対応しました。私はエンジニアではなくプログラミングの知識も特にあるわけではありませんが、マウス操作だけで自在に変更できるので助かります」(大倉氏)と、Oracle CRM On Demandの使い勝手の良さを話してくれた。
こうしてOracle CRM On Demandが持つ機能の有効活用は、「結果的に営業効率を向上させ、売り上げの拡大に直結している」と琴田氏は語る。
今後は会計システムとCRMの連携を
その後、同社は会計システムとして「Oracle E-Business Suite」(以下、EBS)を導入した。そして、2008年秋をめどにOracle CRM On Demandとのシステム統合を本稼働させる予定だ。EBSはクライアント/サーバ型のため、CRMとはハイブリッド型での連携となるが、日本オラクルの用意するアプリケーション統合基盤「Application Integration Architecture」をハブとして使うことで、統合は比較的容易に行え、ユーザーの利用においても違和感はないようだ。
これにより、EBS上のプロジェクト管理情報をOracle CRM On Demandに反映させたり、その逆にOracle CRM On Demandの案件情報を正式受注の段階でEBSに投入したりといった、情報の自在なやりとりが可能になる。山尾氏も「まだ受注確度が低い案件から既にプロジェクトとして進行しているものまで一気通貫に見通せるようになり、さらに精度の高い経営管理が可能になるでしょう」と意気込んでいる。
日立コンサルティングが目指しているのは、CRMシステムと基幹システムとの有機的連携で生み出す、新たな次元の企業価値創造だ。
【導入企業紹介】株式会社日立コンサルティング
日立グループにおけるコンサルティングの中核会社として日立グループと連携し、日本企業のグローバルなビジネス展開を支援している。企業の経営課題に対し、経営戦略やマネジメント、業務を対象としたコンサルティング、および実行に不可欠なITサービスを提供し、欧米の既存拠点は元より、中国やインドなどアジアにも積極的に展開していく。
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