BI製品紹介:マイクロソフト
「Microsoft SQL Server 2008 R2」+「Excel 2010」が目指すセルフサービスBI
マイクロソフトはSQL ServerとExcelの組み合わせでBI環境を提供してきた。そしてOffice 2010により、同社のBIはエンドユーザー自ら分析環境を構築できる「セルフサービスBI」へと進化した。
不確実な経済状況で注目されるBI
複雑に入り組んだシステムや日々の企業活動から生み出され、蓄積される膨大なデータ。それらを組織的あるいは系統的に取捨選択し、分類、分析した上で分かりやすく加工、表示し、ビジネスの実態把握や重要な経営戦略・営業方針の意思決定に役立てる情報活用手段がBI(Business Intelligence)である。
大手企業を中心にBIの普及が広まっている背景には、不確実な経済状況が続く中で、さまざまな分析軸から利益獲得へのヒントをリアルタイムに導き出したいという思惑が働いている。大手ITベンダーも、自社ポートフォリオの中でBIの存在感を前面に出し、BIの普及促進を一層高めようとしている。
だが、BI製品は分析機能の豊富さや大規模データへの対応などを重視することから、使いこなすには統計解析などの高度な分析力が求められるのが難点といえる。ベンダーがコンサルティングサービスやアセスメントサービスの利用、あるいはコンピテンシーセンターの構築を推奨しているのもそのためだ。
また、ビジネスの変化に合わせて分析軸を変更するにも、追加開発のコストが掛かってしまうというジレンマを抱えている。BIが「マネジメント層だけが使う高価なオモチャ」「基幹系並みの硬直化したシステム」とやゆされるのもそうした理由からだろう。
自分の問題解決のために活用するするセルフサービスBI
そんな状況に異を唱え、「BIは誰もが日常的に使いこなせるものでなければならない」と訴えるのがマイクロソフトである。マイクロソフトのBIというと印象が薄いように感じるかもしれないが、ほかの大手ソフトウェアベンダーが買収によってBI製品の強化を進める中、同社は誰もが使えるBIの実現とその在り方について、この10年間一貫して考え続けてきた。その結果、「ビジネスの正しい見通しやリアルなデータは、末端の現場に存在する」と結論付け、中長期の経営戦略から日々の活動まで、企業にはさまざまに異なる意思決定シーンがあると考えた。
そこで、意思決定に最適なBIの設計を次の3つのニーズで示す。
- 企業全体で組織戦略を最適化する「Organizational BI」
- 組織・部門内での知恵の共有を実現する「Team BI」
- 個人の意思決定力の向上を目指す「Personal BI」
中でもユニークなのは、現場の社員が自分自身の問題解決のために自ら作成、管理し、操作するPersonal BIを具体化する、「セルフサービスBI」という概念を提案している点だ。では、マイクロソフトがいうセルフサービスのBIとはどのようなものだろうか。
蓄積したデータを競争力に転化するのがセルフサービスBIの狙い
「企業がデータベース(以下、DB)に膨大な情報資産を抱えているにもかかわらず、それが個人レベルで有効活用されていない実態を、DBを開発する側の人間として非常にもったいないと感じていた」と語るのは、マイクロソフトのサーバープラットフォームビジネス本部 クラウド&アプリケーションプラットフォーム製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャ 斎藤泰行氏だ。
常に即断即決が求められる現代のビジネス環境では、「社員1人ひとりの判断力と瞬発力とが企業の競争力を左右する」という斎藤氏は、経営層から現場の社員までもがBIを駆使し、宝の山ともいえるDBから自らが必要とする情報を切り出して、適切な判断材料になるよう組み上げることが求められると説明する。
「蓄積したデータを負の遺産のままにせず、競争力の源泉に転化するのがセルフサービスBIの狙いです。しかも気負うことなく日々の業務の延長線上でBIを使えるようにしておくことが大切です」(斎藤氏)
マイクロソフトのBIソリューションは1つの独立した製品ではなく、既存の同社製品を組み合わせて構成される。セルフサービスBIの場合は、「Microsoft SQL Server 2008 R2」「Microsoft Office 2010」、そして「Microsoft SharePoint Server 2010」の組み合わせを推奨している。日常的に利用しているMicrosoft Excel(以下、Excel)やWebブラウザで使えるため、BI導入の障害となる心理的負担や追加投資を最小限にする可能性も高い。
ピボットテーブルやグラフ機能を強化して可視化するPowerPivot
2010年5月から全世界で販売を開始したMicrosoft SQL Server 2008 R2は、企業内に存在する多数のデータを統合・管理し、活用・分析する機能がオールインワンで備わるデータプラットフォームだ。データウェアハウス(DWH)、BI、サーバ統合、DBミラーリング、コンプライアンス(ポリシー管理、データ暗号化など)といった機能がすべて標準で盛り込まれている。そして最大の目玉が、Excel 2010をフロントエンドにBIを利用し、一般社員にも活用のすそ野を広げようとしていることだ。
今回、Excel 2010を指定した理由には、「Microsoft SQL Server PowerPivot for Excel 2010」(以下、PowerPivot)を無償でアドインする目的があった。PowerPivotは、Excel 2010を基点に、Microsoft SQL Serverやクラウド上のDB機能を提供する「SQL Azure」、Microsoft Accessをはじめ、Oracle DatabaseやIBM DB2などのさまざまなデータソースから取り込んだデータを、クライアントPCのメモリ上で関連付けして高速に多次元分析するとともに、強化したピボットテーブルやグラフ機能によって、結果を分かりやすく可視化するツールである。ODBC(RDBMSにアクセスするための共通インタフェース)準拠ならほぼすべてのソースを取り組むことができるという。
また、Microsoft SQL Server 2008 R2に標準搭載の「Analysis Services機能」でキューブ(多次元DBから多数の分析項目を組み合わせたデータ格納形態)を組んでおけば、それを基にした分析も可能になる。
| コンポーネント名 | 役割 | 概要 |
|---|---|---|
| Relational Database | データの蓄積・管理 | データの蓄積処理、ミラーリング、クラスタリング、暗号化などDBの安定稼働に必要な機能を備える |
| Integration Services | データの変換・統合 | CSVなどの各種ファイルやほかのDBのデータをMicrosoft SQL Serverに統合し、出力するためのデータ変換を行う |
| Analysis Services | 多次元データ分析 | Microsoft SQL ServerのDBからキューブ(多次元DB)を構築しデータマイニングなどの分析機能も提供する |
| Reporting Services | 多次元データの可視化 | Microsoft SQL Serverに蓄積されたデータをブラウザ経由でグラフや表などに配信し、リポート化する機能 |
| Management Studio | 管理ツール | Microsoft SQL Serverのコンポーネントを管理する GUIベースの管理ツール。複数のインスタンスや異なるバージョンなどすべてを単一の画面で管理することが可能 |
セルフサービスBIはコストを大幅に削減する
マイクロソフトのサーバープラットフォームビジネス本部 クラウド&アプリケーションプラットフォーム製品部 プロダクトマネージャ 松澤 純氏は、「Excelをインストールしたクライアント側のメモリ上にデータセットをロードし、キューブを自動生成するので、新規項目の追加やデータの更新・抽出を自由に反映できます」と強調する。
また、Excel 2010から追加された「スライサー」機能(下図参考)により、ピボットテーブルで集計した大量のデータの中から必要な情報を絞り込むことができるとともに、複数のスライサーを同時に使用することで、グラフ化やリポート作成も容易になったという。
「Web上にはさまざまなデータが公開されています。株価情報や世代別人口、平均降水量などをPowerPivotに取り込んでマスターにしてしまえば、売り上げデータと連携させた分析が可能になります。しかも、いちいちIT部門に依頼することなく、ユーザー自身が思い付きで自由に分析軸を作ることができるのです」(松澤氏)
これまでのBI開発は、いったん開発したものをエンドユーザーに使わせることでさらにニーズを洗練化していくスパイラルアプローチが常識だったため、ニーズが多くなるとIT部門では対応できずに、外部のベンダーやSIerの手を借りて再開発することも多かった。つまりコストが掛かっていたわけだ。PowerPivotを活用すればエンドユーザー自身が分析項目を自由にマージできるため、追加コストは掛からず、IT部門は本来の業務に専念できることになる。
SharePoint ServerでPowerPivotワークブックを共有
ただし、キューブを作った本人だけが使えるスタンドアロンのBIになっては意味がない。ほかの社員にも展開することで価値が生まれてくる。セルフサービスBIがMicrosoft SharePoint Server 2010の併用を推奨しているのは、そうした課題を解決するためでもある。
「Microsoft SQL Server PowerPivot for SharePoint 2010」により、作成した PowerPivotワークブックをMicrosoft SharePoint Server 2010にアップロードしてユーザー間で共有できるようになる。もちろん、Microsoft SharePoint Server 2010のアクセス権管理機能を使用して、ユーザーごとに参照のみ、もしくは編集可などの制限ができる。
松澤氏は、「Silverlightベースの『PowerPivot ギャラリー』というライブラリテンプレート機能の利用がお勧め」という。PowerPivotデータを含むExcelブックを対象に、プレビュー機能とドキュメント管理機能が使えるので、個人が作ったキューブに複数のユーザーがWebブラウザでアクセスできるようになる。
セルフサービスでもIT部門の役割は大きい
では、IT部門は何もすることはないのかというと、そうではない。「従来通り基本となるキューブはあらかじめ用意しなければならないし、どんな軸が最も必要とされているのか、最も見られているシートは何かを観察し、必要があればそれらを追加していくことも必要です」と斎藤氏は指摘する。
例えば、「PowerPivot管理ダッシュボード」を使えば、Microsoft SharePoint Server 2010で共有しているどのシートが最もよく見られているか、時間軸で何人の同時実行ユーザーが存在するかを可視化し、定型リポートとして提供したり、サーバの増強時期やキューブの再配置などの判断に活用したりと、最適なPowerPivot環境をユーザーに提供できるようになる。
定型リポートの作成には、「Reporting Services/レポートビルダー」が便利だ。複雑な帳票プログラムの知識やデータが保存されている場所を意識することなく、使用するデータの意味さえ理解していれば、Microsoft PowerPointのような感覚でグラフィカルなリポートを簡単に作成できる。
このように、マイクロソフトのセルフサービスBIは戦略的な分析は自分のデスクトップで導き出せるという意味で、「BIのコンシューマライゼーション」ともいうべき意識変化をもたらす可能性を持っている。BIが十分に活用されていない企業や、なかなか導入に踏み切れない企業などにとっても、これが1つの解決策になる可能性は十分にあるのではないだろうか。
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